本日は、歴史についての記述を紹介します。
奥州藤原氏が豊かな財を持っていたことは、授業でも説明されるのでなんとなくわかると思います。しかし、どうして豊かと言えたのか、これは奥州藤原氏が建立した華麗なつくりの中尊寺金色堂から推し測ることになります。
では、具体的にどのように中尊寺金色堂が豪華といえるのか、ふんだんに用いられた金箔だけでは、じつは説明には十分といえません。なにせ、問題文にあるヤコウガイだけでなく、アフリカゾウの象牙まで使われているのですから、けた外れのものといえます。
その点を説きたく、出題された問題なのかもしれません。
問題
1123年に完成した中尊寺金色堂には、南西諸島(多くは奄美群島以南)でとれる貴重なヤコウガイ(夜光貝)が大量に装飾に用いられました。これからどのようなことがわかりますか。「奥州藤原氏は」に続けて、「遠方」と「財力」という言葉を使って説明しなさい。
解説
ある意味、定番の問題で、語句指定からも、解答像が浮かび上がる問題です。
しかし、この問題を解くためには、ある常識が備わっている必要があります。
それは、古代において一定の製品を大量に生産すること、そして大量に購入することの難しさ、物資運送の困難さです。
生産
近世の産業の発達まで、物品を大量に生産することは非常に難しいことでした。同様に、採取したものを大量に集積し、加工することも、技術的に困難なことでした。
中尊寺金色堂の細工に使うためには、おそらく少なからぬヤコウガイの貝殻を必要としたのだと思いますが、そうしたものを必要に見合うだけ採取するのはたやすくはなかったろうと思われます。
購買
当時、貴重な商品を大量に取り扱うことができるような商いの仕組みは整っておらず、こと広域で商いを行い、珍しい物品を一手に引き受けることができる商人は貴重、ないしいなかったものと考えられます。そのような時代ですから、物品の調達は、各地域の有力者に指図ができるくらいの権力の持ち主か、そうした不利の中でもなお、買い付けができるくらいの財産の持ち主でなければ困難であったと考えられます。
運送
こちらも近世以降と違って、確たる運送ルートがあるわけではありません。ですので、奄美群島以南(ほぼ沖縄にあたります)から、東北北部の平泉まで輸送を手配するにはかなりの財力を要することであったでしょう。
こうした事情をふまえれば、この時代、莫大な財力がなければ、遠くの物産をふんだんに用いた装飾はかなわないことが理解できるかと思います。
解答例
奥州藤原氏は、遠方からヤコウガイを取り寄せることができるほどの財力を持っていたことがわかる。