本田承太郎 -30ページ目

本田承太郎

飲食店開業を目指す為に学ぶべき知識。
スキルと資金・経験を積んで
自分の城を持つ為にやるべき10の事。

前回までのあらすじ:
本田承太郎は藤堂物産で働くサラリーマン。
研修から戻った承太郎と部下の前田は
人事部の倉持の所へ講義を受けに
やってきました。


第154話:人件費の適正値

倉持部長の講義では予算作成の
ポイントとして人件費の説明を行って
いました。

人件費は変動する費用として
大きな割合で負担になってきます。

人件費のコントロールは
「シフト作成能力」「調整力」
鍛えなければ毎日の営業で

どんどん経費が垂れ流しに
なってしまいます。


あるお店の事例で、
こんな事がありました。



お店はフランチャイズチェーン店で
店長異動になり次の新しい店長が
お店にやってきた時の事です。


お店のシフトを見て明らかに
人件費の無駄がありました。


人件費の適正値は企業やお店の
業態によっても違うので
その店ごとに決められているもの
なのですが

お店が流行っていたり
極端に暇だったりすると実際の
営業で必要な人材とは誤差が
あるものなのです。


このお店も、

お店の売上に余裕があって
人件費の目標数値である売上の
30%以内に合わせてはいましたが
所々で無駄に人員を配置して
予算ギリギリまで人件費を
使っていました。


これを見た新しい店長が
人件費を適正に判断してシフトを
絞って作成し直す訳ですが

これを急にやると
問題が色々発生します。


①売上に余裕があるので人員が多い
②人を減らすと1人の負担が増える
③スタッフの不満が発生
④シフトを減らすと給料も減る
⑤スタッフの不満が発生


と言う様に常にスタッフの
不満の対象となります。


スタッフは学生やパートなど
色々な人材がいるのですが
皆お金を稼ぐ為に働いているので
お店の都合はちゃんと
話し合わないと理解してくれません。


問題点は前任の店長の管理が
不十分だった事が原因
ですが

スタッフからは前任の店長の方が
自分たちにとっては良かったと
敵対心を持つようにさえなります。


エリアマネージャーなどの能力が
低いとこういう問題は
度々起こる
ので気をつけたい
ポイントとなります。


倉持
「話しは人件費の適正値に
戻りますが、

皆さんは人件費がいくらなら
適正値なのか解るでしょうか?」



ある学生がこう答えました。

学生
「PLに25%と記入されていたので
大体そのあたりなのでしょうか」



「会社が決めた人件費が25%なら、
それに合わせれば良いのですが
実際にお店を営業して

毎日売上が違うのに人件費が
予定通りに行くと思いますか?」


「思いません」


「ではどうすれば
いいのでしょうか?」

「さっきの話みたいに問題が
起きるかもしれないですけど
人件費を絞って調整しないと
お店が無くなります」


「そうですね。

では具体的にはどうやって
コントロールすれば良いでしょう」



「毎日売上をチェックして
売上が低ければ次の日のバイトを
早く帰らせたりして調整します」


倉持はこの様に全員に質問し
色々な意見が出ました。


「皆さんの考えた事は
間違いでは有りません。

皆さんが行った、

先に起こる問題や売上げを
確認して費用を調整する事
こそ
一番大事な事なのです」


倉持は先ほどの事例を
この様に解説します。


会社の人件費設定が30%で
人件費を絞っていく予定を立てる
場合なら、

調整し易いようにシフトを隔週で
設定します。

勤務が1カ月単位でシフト設定
されるお店などは

必然的に人件費のブレも大きく
バイトを早く帰らせたり
急に休ませたりさせなければ
ならなくなります。


アルバイトはお金を稼ぐ脳に
なっている為お金の計算が早く
頭も良いので

お店が流行っている時に
シフトを削られると不満に
思います。

逆に

お店が流行っていなくて
やり繰りに苦労している様子を
店長などから感じると

「仕方ないので協力しよう」
という姿勢を見せます。


シフトを作成する立場にある人は
こういう心理も理解して
シフト作成とケアを行わなければ
問題が頻発する事でしょう。


シフトの隔週作成ではシフトの
人材を集めたり作成時間を取られ
店長の負担は増えますし

なにより
人が集まりにくくなります。

こういったデメリットを回避する
準備をしっかりと出来ていると
数値の調整もスムーズにいきます。


シフトを月に2回15日単位で
設定すると2週分のシフトを
作成する形になります。

負担は少し減りますが、
予算の誤差を修正するチャンスは
中間の1度しかありません。

飲食店と言うのは
「人材が良く入れ替わる」
と言う傾向があるので

シフトの作り方や調整方法
準備とケアの方法を見直して
行く必要があるかもしれないのです。


つまり

人件費の適正値と言うのは
数値のパーセンテージをクリアする
と言う事だけでなく

人の意識やお店の健全性も含めて
考慮していくと

適正値の目標数値自体を変える事に
なるかもしれません。


スタッフが元気に明るく
仕事が出来てお客様も喜んで
再来店してくれるお店作りができる

と言うのであれば
それに掛る人件費の方が
適正なのかもしれないと言う事です。


フランチャイズチェーン店などでは
勝手な事は出来ないかもしれませんが

利益が増えるのであれば
目標数値の変更は通る意見だと
思います。

倉持はシフト作成の難しさを
説明した所で全員に

実際のお店のシフトを予算に合わせて
作成してみるように指示しました。


つづく
前回までのあらすじ:
本田承太郎は藤堂物産で働くサラリーマン。
研修から戻った承太郎と部下の前田は
人事部の倉持の所へ講義を受けに
やってきました。


第153話:人件費を削れば良い訳ではない

倉持部長は新規採用社員に
お店の管理職に費用な数値管理の
方法を講義で話していました。

その中に今回新規プロジェクトで
新たに飲食店に関わる事になった
本田承太郎と部下の前田も
参加していました。

ここまでは損益計算書に触れ
予算がどんなものかを
話してきました。

倉持
「ここまでは予算と言う
予測の話でしたが

ここからはお店の営業で
現実的な話になってきます」


前田
「現実的な話?」

「予算と損益計算を毎日確認して
誤差をチェックする事が
管理者としての最低限の仕事である
と言う事は話したと思います。

そこで実際に誤差があった時は
どうすれば良いのでしょうか?」


本田
「コストコントロールですね」

「そうですね。
実際に予定人件費を超過してたり
食材費や修繕費で予定を超える
という場合もあるかもしれません

その時にはチェックして
気付いた時から誤差の修正を
行っていかなければなりません」


「早めに気付ける方が良いと言う
事なんですよね」

「そうですね。

では前田さん、一番大きく関わる
費用で変動が大きくズレ易い費用は
何か解るでしょうか?」


「やっぱり人件費でしょうか?」

「そうです。

飲食店では利益に大きく影響を
与えるのが人件費と原価です。

PLの予算作成で話したように
コストをコントロールする為に
人件費の話からしていきましょう」


人件費とは、

お店や会社、事業に関わる人材に
掛る費用の事ですが

飲食店などのサービス業で
人件費のコントロールと言うのは
営業形態において非常に難しい物の
一つとして良く話に挙がります。

何故難しいのか?


その理由の一つとして
「人件費を削れば良い訳ではない」

と言う事があります。


どういう事かと言うと、

予算に合わない事から人件費を
削って経費削減を目指した事で
サービス力が低下する
事がある

というのが一つの理由です。


人件費を削り過ぎてお客様に
迷惑を掛ける様な営業していては
利益が取れても

いずれ来客が無くなりお店は
衰退していく事になります。

かといって存分に対応できるだけの
人材を用意しておいてお客様が
来なかったら損失は計り知れなく
大きくなっていきます。


お店の営業経験が無い人は
解りにくいかもしれませんが

お店には繁盛する時と、
全くお客様が来ない時があります。


理由は色々で大小ありますが、
これはどんな流行っているお店でも
多少はある現実的な話です。


その集客の増減を読んで
適正な人材を配置していく事が
人件費のコストコントロール

なります。


ただし、人件費というものは
「売上に対する比率」を示すので
一度マイナスになると、

次の日にマイナスを取り返すか
月末までの残り日数でマイナスを
取り戻さないといけないので

マイナスになった次の日の営業から
今まで決めていた人材配置を
絞らないといけなくなります。


そうすると当然サービス力は下がり
後半の営業がしんどくなるのです。


この、

マイナスを取り戻す作業は
かなりの労力で厳しいものなので
出来れば避けたい事態なのですが
経営を余り知らない人は安易に
考えてしまう危ない
ポイントなのです。


よく素人が
「美味しい料理作っていれば
いつかお客さんが来てくれる」


などと話す事を聞きますが、
お客さんが来てくれるまでの
マイナス分はそれ以降の営業で
全て取り返さないと

その日は繁盛でも結局は
トータルで赤字になると言う事を
理解していない訳です。


だからこそ、

マイナスになる前の
繁盛している日や余裕がある日に
削減できる余裕のある部分は
積極的に貯金を作っておく事

必要になってきます。

いくらお客様が全く来なくても
一人も従業員がいないと言う
営業は出来ませんし危険です。

つまり

最低限1日に掛る人件費の
最低ラインはそのお店によって
決まっているはずなので

その分余裕がない営業が
いかに怖い事なのかは想像すれば
解る事だと思います。

飲食店が開店しても一気に
潰れて閉店に追い込まれる理由に
「人件費」というネックがある
と言う事なのです。


普通の飲食店でもお店の形態や
業体力・システムや機材
オペレーションで

その店の人件費の設定値は
変わってきます。


先日放送された
「世界の果てまでイッてQ!」という
TV番組での事ですが

海外のレストランで店員を
1人に絞り必要最低限の仕事しか
させない営業形態にして

限界まで食材費用を落として
集客しているお店がありました。

このお店はカフェですが
価格がめちゃくちゃ安く
1分6円という単価で食べ放題に
しているのです。

時間で滞在なので何を食べても
良いしセルフサービスで
食事を用意して皿も自分で洗う事を
ルールにしているので営業中は

人件費も監視や清算くらいの
最低人員しか掛らない
という仕組みなのです。

良く考えると10分で60円、
20分で120円、30分で180円…

30分いれば腹いっぱい食べれるので
どう考えても安いですね。

日本では考えられない形態ですが
お店の発想によっても掛ける
人員の割合が変わると言う例です。


倉持
「どうやって利益を効果的に取るか
試行錯誤して考えた結果費用の
割合をズラしたという例ですね」



そう言うと倉持は人件費の
適性値について話を始めて
行きました。

つづく
前回までのあらすじ:
本田承太郎は藤堂物産で働くサラリーマン。
研修から戻った承太郎と部下の前田は
人事部の倉持の所へ講義を受けに
やってきました。


第152話:損益計算書の理解

倉持はモデル予算の1月売上を使って
PL表で予算を実際に組んでみる様に
全員に指示しました。

そして完成したPL表予算の数値を
代表で一つのグループから選び
説明を始めました。

まずは、予算ですが
季節指数で算出した1月の
モデル売上を入力します。

次に前月・前年売上は
あらかじめ決められた数値を
入力します。

PL1


その下の欄で期首棚卸額を入力
(今回は予め決められています)


PL2

社員給与は35万設定で人件費率を
売上の25%以内に抑える計画を
立てます。

PL3

つまり社員の固定給与以外で
アルバイト人件費や社員の
残業費などを調節し25%以内に
抑えなければなりません。

PL3

次に変動する主な経費を
それぞれ入力します。

実際の営業でもこの部分
「変動する経費」で利益を
どれだけ取れるか調整できます。


PL5

家賃やリース料は決められた額で
固定費や変動費の差し引きで
利益がいくらになるか計算します。


PL6

最後に人時売上高から
アルバイト労働時間を算出し
客単価を売上から割り出します。


倉持
「今回の損益計算書では利益が
66万7230円となりました。

お店によって違いもありますが
利益が取れる事が前提で
営業しなくてはいけません」

前田
「66万の利益って結構多く
無いんでしょうか?」

「いくらの利益が適正なのかは
後で検証するとして、

問題は予算で決められた
設定数値通りに営業できるか?
と言う事です。」

「その会社の適性人件費や
在庫を抱える金額が決まっている
と言う事なんですよね」

「予算を決めても
数値通りに人件費が抑えられず
利益が減ったり、

食材を無駄遣いしすぎて
原価率がオーバーしたりと
設定した適正数値を守る事が
お店を健全に運営している事に
なってくるのです」

「つまり、
適正数値を守れていないと
お店の管理者は
適正にお店を管理出来ていないと
判断されるんですよね?」

「そうです。
オーナーや上司が数値で見る
ポイントはこういう部分で
判断基準になってきますよね」

「まだこの時点ではなんとなくの
確認で構いません」

倉持は損益計算書というものが
どんなものか全員に教える為に
実際に触れさせてみました。

そしてこれから、
飲食店やお店を経営する準備、
従業員として働いている中で
自分でモデル数値を入力しながら
練習していくように指導されました。

最近のレジや専用でソフトを
作っているフランチャイズの
チェーン店などでは

こういった簡易的なものより
専門的なデータが見られるものが
多くありますが

実際の計算方法や理論が
解っていないと宝の持ち腐れ
だと
倉持は言います。

一般の個人経営のお店でも
簡単な帳票を理解してより
使いこなす事で成功したお店も
あるそうです。

そう言ってひとまず普段から
損益計算の理解深める事を
課題として与えられたのでした。

つづく