前回までのあらすじ:
本田承太郎は藤堂物産で働くサラリーマン。
本田たちは新たに販促課の横山を加え
倉持部長の講義を受けに人事部へ
やってきていました。
第209話:エリアマネージャーの過信
倉持部長はあるお店の販売促進での
失敗例を話していました。
行った施策の判断ミスが大きな
原因で更に他にも要因はあったと
倉持は言います。
まず店長は若く経験はまだ
浅い方でしたが努力してお店の店長に
上り詰めてきた行動的な店長です。
新店を任されるまで
自分の受け持ち店舗を繁盛させて
年間表彰される程の評価を
得ていました。
それなのに何故売上は低迷して
しまったのでしょうか。
原因の一つとして
エリアマネージャーの過信と
指導不足があります。
これまでに自分の受け持ちだった
お店が売上を伸ばして評価されると
全て自分の能力によるものだと
過信する人物がいます。
ましてまだ若く経験の浅い店長なら
当然かもしれません。
そこで上司が引き締めることなく
甘やかしてしまったので
変な自信を持ってしまった事も
後に引けない割引を続けた
引き金になっていたかも知れません。
店長のタイプとしては
自分で行動し動く事で周りの人間を
引っ張っていく人で
アルバイトからは好かれ
信頼されていました。
しかし
長所である行動力が店内の
オペレーションの部分では欠点として
現れました。
お店のオープン当初まだ能力の
足りないアルバイトが多い中
店長が全部動くのでスタッフの
実戦経験が甘く中々育たない現状が
あったのです。
アルバイトは店長が全部動くと
自分を信頼されていない気持ちと
仕事を覚えられないモヤモヤした
気持ちになります。
慣れないうちは誰でもありますが
このお店では3か月経っても
全員がまだ未熟なスタッフでした。
そうするとアルバイトの意識は
「店長がやってくれるから」
という意識に変わっていくのです。
当時この店長は仕事も真面目で
スタッフの足りない所をフォローして
いるつもりでしたが実は
スタッフの手抜きを助けている
というだけだったのです。
そして売上が伸び悩んできた時に
人員を削っていくと
当然1人が受け持つ仕事の種類が
増えていきます。
実際の作業量は減ったとしても
今まで固定ポジションで仕事を
行ってきた者が急に全般的な
仕事をこなす様になる訳です。
飲食店で言うなら、
キッチンで揚物を担当していた
調理スタッフが急に
サラダや魚料理、肉料理を
任されたり提供までを行ったり
させられる訳です。
人件費を絞るという事は
シフト時間を削られながら
仕事で覚える事は増えていくので
その精度は急激に低下しました。
店長の気持ちとしては
「お店が暇なんだから覚えられる」
と思っていました。
スタッフは、
シフト時間は削られバイト代も減り
急に増えた仕事の種類を覚える
ノルマがやタスクが増えて
モチベーションも低下していきます。
そこへ店長からは
「暇だから出来る」の一言で
かたずけられて不満も溜まって
いきました。
ある時
お店が急に忙しくなった日に
店長が絞ったシフトのせいで
スタッフ一人で対応しなくては
いけない状況になってしまいました。
そこでそのスタッフが取った行動は
作業を全部覚えきれなかった部分や
曖昧な部分は飛ばして
未完成でも早く対応する事を
目的に動いたのです。
その場は無事乗り切れて
店長も独りで対応できたスタッフを
評価しました。
その後
その経験に甘えた店長が度々
人件費を絞る為にそのスタッフに
同じ事をさせてクオリティの
低い商品を出す様になって
しまったというわけです。
前田
「どこで目的を間違えて
しまったんでしょうね」
倉持
「まずは店内の整備、
クオリティを下げない事が大事で
お店にお客様を呼んでも
満足させられる状態を
キープしないといけないという事ね」
結果的にこの例のお店は
1年で閉店しまったのですが
店長を始めエリアマネージャーや
スーパーバイザーのレベルの
管理職の能力が低い事が最大の
問題でした。
販売促進の状態やチェックを怠り
アドバイスも的外れでした。
その為その店長のキャリアを潰し
会社からはその店長の評価だけが
下がったのです。
そして倉持は次の事例を
紹介しました。
つづく