前回までのあらすじ:
本田承太郎は藤堂物産で働くサラリーマン。
研修から戻った承太郎と部下の前田は
人事部の倉持の所へ講義を受けに
やってきました。
第162話:FLコストとは
倉持が話すのは二人の料理人が
お店を開業して利益に差が出たと
言う事でその理由を解説しています。
A君のお店の原価率33%という
数値はお店の売上が月間1000万
有るとすると
食材に使われた額が33%に当たる
330万円と言う事になります。
B君のお店は原価率が28%なので
食材費用は280万円になります。
そうすると同じ売り上げの
二つのお店の費用の間に50万円の
差が出来ていたのです。
この、
売上原価で50万円の差と言うのは
大きなもので、
原価の安いB君のお店が単純に
原価が安い事でA君のお店よりも
利益が取れる場合もあるでしょう。
同じ費用で同じ人件費なら
メニューの組み方やお店の
取り組み施策に工夫があったと
言う事になります。
そして50万円分はA君の
お店よりも余計に費用が
使えるので売上UPの為に
投資する事も出来ます。
原価率を理解する事で
これほど差が出るのには
有る理由がありました。
A君のお店の目玉メニューは
1匹2000以上する伊勢海老や
鯛等の豪華船盛りで原価率は
おおよそ理解していて
大体50%くらいで
販売していました。
B君のお店でも豪華船盛りを
目玉にしていましたが
価格と原価率を抑えて
売れ筋商品にしていました。
B君はメニューのレシピから
原価率を把握する事でお店の
売れ筋商品の原価を調整すると
利益を増やせる事や
損失の大きい原価率の目玉商品は
販売数を限定するやり方や
原価が安い利益率が高い
商品ラインナップを充実
させる事で
メニュー全体のバランスを
保っていたのです。
つまり、
A君のお店では傍目には
商品がバンバン売れて
お客様も多く繁盛しているように
見えますが、
メニュー構成や戦略を考えた
B君のお店には利益で
負けているのです。
大手ファーストフードでも
この様な手法が使われています。
某有名ハンバーガー店では
売れ筋の主力商品の
ダブルチーズバーガーが
一番コストが高く原価率を
圧迫していました。
人気があるので販売数も多く
この商品の品質を下げる訳には
いきません。
ここでポテトフライを
メニューに加えます。
ダブルチーズバーガー330円が
原価率45%だとしたら
148.5円となりますが
(※これはあくまで事例です)
ダブルチーズバーガーばかり
売れてしまうと原価率は
大きくなっていきます。
普通飲食店では原価率と
人件費のコストをFLコストと
呼びます。
FLコストとは
フードコスト(食材)=F
レイバーコスト(人材)=L
合わせてFLコスト。
このFLコストが売上の
55%位になるように設定される
企業が多いと言われます。
これが65%以上になると
赤字になるとも言われるので
原価率や人件費率を常に
合わせるように管理する事は
経営者として当たり前の
事になります。
では、ポテトフライを
メニューに加えると
どうなるのでしょうか?
ポテトの販売価格は250円
原価は19円です。
原価率は驚きの7.6%という
数値でほとんど利益です。
ハンバーガーショップでポテトは
人気商品ですが利益率が高く
全体の原価率も下げてくれる
メニューなのです。
ハンバーガーの例で言うと、
ダブルチーズバーガーが
100個売れたとして価格が
330円なので売上は33000円
となります。
このままだと原価率45%なので
そのままコストは45%となります。
つまり何千個売っても
売上の45%は費用として
消費する訳です。
これにポテトを加えると
単価250円で原価率7.6%
なので100個売ると売上は
25000円となります。
例えばダブルチーズバーガーだけで
200個売っても原価率は45%
なのですが、
ダブルチーズバーガーとポテトを
100個ずつ合わせて200個
販売すると、
ダブルチーズバーガー100個の原価
=14850円
ポテト100個の原価=1900円
合計16750円となり、
売上200個で58000円
になります。
原価率は28.9%になります。
比較すると、
ダブルチーズバーガーでは200個で
66000円の売上原価45%なので
29700円が費用になります。
これを差し引くと36300円
現金が残ります。
しかし、ポテトをプラスして
合計で200個売った場合は
合計の売上58000円と
少ないですが
合計費用は16750円となり
差し引くと41250円の現金が
残るのです。
つまり原価率の安い商品をメニューに
上手く組み込む事で
売上が低くても利益が大きくなると
言う事なのです。
当然売上が同じなら更に
利益は大きくなります。
倉持が説明したのは
メニューの原価率を理解する事で
戦略が一つ増えると言う事でした。
つづく