前回までのあらすじ:
本田承太郎は藤堂物産で働くサラリーマン。
飲食店のプロジェクトを進める為
部下の前田と共に人事部の倉持部長より
特別講義を受け終わった後に
ある本を手渡されていました。
第69話:ブラック企業は意外と多い
倉持部長が講義終わりに手渡したのは
この本でした。
前田
「・・・本田課長、これって
調理師免許取れって事なんでしょうか?」
「確か調理師免許は実務経験が必要だから
俺は事業が始まってからお店に入って
取得しようと思っていたが」
「じゃあどういう事でしょうか」
「次回のリスクマネジメントの講義までに
この本を読んで色んなリスクを
考えておけという事だよ」
「解りました・・」
本田はそう言った前田に
違和感があることに気付きました。
「前田、何か悩みでもあるのか?」
そう聞くと前田は友人のことで
相談したい事があると言ってきました。
「最近同じ部署の三浦君が退職しましたよね?
あの時にうちの会社がブラック企業だって
騒いでたからそのことが気になって・・」
前田が言ったのは以前に
前田と共に働いていた同僚の
三浦という社員で
問題行動が目立ちモンスター社員化して
退職した件の事を言っていました。
第15話:モンスター社員の弱点とは
それに対し本田は高質問します。
「?ウチの会社は部署によっては
厳しい現場もあるけど
ブラック企業という訳では無いと思うが
どうかしたのか?」
「違うんです。あの件でブラック企業で悩んでる
別の会社の友達の事が最近心配なんです。」
「というと?」
「友達の会社は大手アパレルなんですけど
基本的にお客さんは自分の接客で取っていく上に
カウントしててノルマがあるんです。」
「そこまでは普通だな」
「それで、労働条件がかなり過酷で
1日14時間以上も働かされてその上パワハラで
ウツになりかけてるようで心配だから
辞めるように勧めてるんです。」
「そうか、それは心配だな」
「でも、退職願いも受理されずどうしようか
悩んでいるそうなんです」
「それは訴えるか悩んでいるということか?」
「そうですね。辞められてうまく次の仕事に
転職できればそれで良いと思うんですけど
アパレルは引き抜きも多いし地域だと
繋がりがあって訴えると不利になるそうなんです」
「確かに縦社会とは聞くがパワハラとは?」
「モロに手を上げるらしいですよ。
私の友達は手は上げれれて無いらしいですけど
同僚で叩かれてる子を見たことがあるそうです。」
「なるほど、それも怖いのかもしれないな。
三浦の件の時に少し調べたが
ブラック企業でアパレルもわりと
名前に挙がっているみたいだな。
大手のクロスカンパニーとか死亡者も
出しているらしい。」
「私も噂でそういう事があるって聞いて心配なんです。」
「解った。では三浦の件の時に調べて連絡を取った
弁護士の先生の連絡先を教えよう。」
「ありがとうございます」
「この機会に飲食関係でもブラック企業は
結構あるようだし調べてみよう。
パワハラなどのリスクも含めて
そのあたりの事を中心に勉強してみると
課題の勉強と合わせて前田の友人に
アドバイスしやすいかもしれないな」
「解りました。よろしくお願いします」
そう言うと前田の表情も
少し晴れた気がしたのでした。
少し調べるうち本田は
ある驚きの記事を見つけます。
「ブラック企業大賞」
これは何だ?
と本田が気になって見てみると
労働組合や弁護士・大学教授などの
関係者が主催したブラック企業の実名と
実態を表彰する物でした。
もちろん、ホントに表彰しているわけではなく
世間の目に晒す意味があるのでしょうが
内容が衝撃的でした。
「8社のノミネートで7人の死亡」
いずれも過労欝・自殺等で労災認定されて
起訴されているのです。
死亡者が出なくてもノミネートされている
企業は当然のように超過勤務を強いていました。
本田承太郎が飲食店の社員採用募集を調べて
初任給を調べていた所、
ある全国展開している大手ラーメンチェーンの
募集の正社員賃金が高卒で
初任給11万と表記されていて
飲食業界の初任給は高卒だからか
こんなにも低いのかと
驚いた経験があります。
ブラック企業大賞は
やっぱり「ワタミ」だそうです。
色々悪い噂も多いのでやっぱりと
つい思ってしまいましたが
過労自殺したのは26歳の女性で
2008年の事だそうです。
それがやっと2013年の表彰で
公になったけど果たして
今後変わっていくのでしょうか。
他にノミネートされたのは
東北大学
クロスカンパニー
ベネッセ
サン・チャレンジ
東急ハンズ
餃子の王将
聞いた事ある大手企業ばかり・・
起訴されている以上
本当の事なのでしょうが
詳しくは本人達にしかその気持ちは
分かり得ません。
本田承太郎は調べれば調べるうちに
出てくる情報に
嫌な気持ちになっていくのでした。
つづく