前回までのあらすじ:
藤堂物産で働く本田承太郎はこの会社で10年働くサラリーマン。
会議のやり方に問題を感じた本田は進行方法を改善していきました。
そして、次の課題へと取り組もうとしていました。
そこへ部下の前田が発見したあるものに注目し調べる事にしたのでした。
第49話:お客様は3日でお店を忘れる
会議終わりで前田から本田に資料が提出されました。
「前田、これは何だ?」
そう言って本田が手にしたのはあるチラシでした。
「頼まれた資料集めの時に紛れたお店のチラシですね・・。」
本田承太郎が注目したのはそのチラシの「内容」でした。
よく見るとそのチラシはセールチラシではなく、
いわゆる「会報」のようなものでした。
「これは一体何だろう・・」
本田承太郎は妙に引っかかるそのお店の会報について
調べていくことにしました。
調べるうちに判明したのは、
その「会報」は「ニュースレター」と呼ばれる
お店の情報を配信する手紙で内容的には
社長やスタッフの人柄、
お店の中で起こる話題などが中心でした。
「なんでこんな物を送っているんだろう?」
そう思った本田は直接このお店に聞いてみることにしました。
社長にはすぐにはアポが取れませんでしたが
その「ニュースレター」を配っている柿谷店長には
連絡が取れて教えてもらました。
柿谷店長に詳しく話を聞くと、
「お客様は3日で自分のお店を忘れてしまう」
と言います。
確かに、お店に行っても3日も経てば
「忘れるのは当たり前なんじゃ・・」と思いますが
ここで柿谷店長が話す「忘れる」という言葉の意味は
食べた料理やサービスを忘れたわけではありません。
次に食事に行く時の選択肢から「忘れられる」
という事なのです。
どんなに良いサービスや美味しい料理を提供しても
お店に行く時にもう一度思い出してもらえなければ繁盛しません。
果たしてそんな感動的な他店と違うサービスを
毎回出来ているでしょうか?
お客様も時代と共に賢くなり、舌も肥えてきています。
お客の立場なら「おもてなし」されることが
当たり前の時代にそうそう差別化が出来る訳ではありません。
柿谷店長はいろいろな本を読んだり、
社長と学ぶうちにこの方法にたどり着いたそうで
同じような手法を取り入れるお店も実は良くあるそうです。
「ニュースレター」をお店に取り入れる事で
売上が年間平均で前年比102%UPしたそうです。
「たった2%?」と思うかもしれませんが
飲食店で2%を確実に増やすというのは
難しい事なので効果のある手法だと言えます。
例えば、
大衆の低価格居酒屋で席が50席あったとして
1回の食事が3000円くらいのお店だと考えると
1日1回転半の集客で約75人~80人のお客さんです。
すると売上は1日23万円位になります。
そうすると1ヶ月の収益は700万円前後ということになりますよね。
この、「700万」が2%増えると1ヶ月で14万円のプラスとなります。
これが年間で計算すると168万円も増えているわけです。
1年間で168万円のボーナスと考えると嬉しくないですか?
「それは是非詳しく聞きたいので教えてもらえますか?」
本田が思わずそう言うと柿谷店長は、
「お店に食べに来てくれたら教えても良いですよ」と
快くOKしてくれました。
こうして本田承太郎は部下の前田を連れて
柿谷店長のお店へと話を聞きに行く事になったのでした。
つづく