願望実現と背腹運動(後編) | Yokoi Hideaki

Yokoi Hideaki

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さて前回の続き、後編です。まだ前編を読んでいない方は下の前編から読んでください。ここに背腹運動のやり方も書いています。

 

 

後編も前回掲載の「今日の結論」から始めます。

 

今日の結論

① 背腹運動が西式健康法の眼目である理由は「心身一者」にある。「心身一者」は存在論、実践論の両面で説明できるが、実践論では思いの習慣と行動の習慣を正しいものとし、これを維持することを説いたものと考えれば良い。

 

② この思いの習慣と行動の習慣を煩瑣な日常生活にあって正しく整えるために行うのが「背腹運動」である。背腹運動中は交感神経と副交感神経の働きを調和させる効果があり、これによって自律神経が完全調和状態になり、正しく働く。

 

③ 自律神経は一種の自動操縦装置でこれが完全に働けば、体の健康だけでなく、願の実現にも大きな働きを為す。よって背腹運動を「良くなる、善くなる、能くなる」と念じ(唱え)ながら行えば、心身一者の原理から、治病、健康回復に大きな効果を表すことができる。

 

④ 更に背腹運動中に自らの願望、目標を心に鮮明に描きながら、同時にそれを唱えながら行えば、シンクロニシティ―(共時性)やセレンディピティ―(素敵な偶然)の原理が働き、必要なモノ、ヒト、情報が集められ、夢のような願望の実現も可能になる

 

⑤ しかし、「自分にはそんな大それた『夢』や『願い』はありません、ただ幸せに、健康に暮らしたいだけです」、という人もいるだろう。そんな人は五井先生の「世界平和の祈り」を行いながら背腹運動を行うことを薦めたい。

 

⑥ 「世界、人類が、平和でありますように!」と声を出しながら、リズミカルに背腹運動を行うことには絶大な効果がある。

と言っても唱えるだけなら、雑念が出てきて、なかなか集中できないということもあるだろう。そんな人には心に身近な人、まず家族、同僚、上司、友人など、縁ある人たちの顔を思い浮かべながら、それらの人たちの幸福と健康を祈りながら行うのが良い。

 

⑦  また例えばプーチンさんやゼレンスキーさんの顔を思い浮かべながら「ウクライナ、ロシアの平和」を祈るのもよい。さらに日々世界の平和、日本の平和を祈り続けていらっしゃる天皇陛下の衣冠束帯のお姿を思い浮かべ、陛下の御心に合わせるようにこれを念ずることも薦めたい。

 

⑧  ぼんやり祈るのにも効果があるが、意識を集中した「祈り」は、その力を一層強力にし、自分だけでなく、思い浮かべた人たちにも素晴らしい光と波を届けることができるからである。

 

⑨  縁ある人たちへの祈りには、それらの人たちを浄める働きがある。さらにそれを喜ばれた縁ある人の守護霊、守護神が感謝の光をこちら側に送ってくださるので、祈った人の福徳となり、その光も心の宿便を消去せしめる助けとなる。

 

⑩ 西勝造先生は西式健康法の本当の目的は「霊肉の浄化」「霊性心の開発」にあるとおっしゃった。甲田先生が度々口にされた観普賢菩薩行法経の一節「一切の業障海は、皆妄想より生ず。若し懺悔せんと欲せば、端坐して実相を思え。衆罪は霜露の如し、慧日能く消除す。」とはこの祈りによって「心の宿便」が消除されることを指している。背腹運動と「世界平和の祈り」を同時に行うことの意味を知り、是非これを実行されたい。

 

前編の最後に滝泰三さんの著作「甲田医院探訪記『治るよ!頑張るか』」から甲田先生がある日の朝礼で黒板に書かれた図を掲載しました。今日はその説明をしますが、図も再掲します。

 

これを書かれながら、甲田先生がお話になったことを私なり解釈し紹介したいと思います。先生をご存じの方は先生の口調、話し方を想像されながらお読みください。

 

皆さん、人生の目標、持ってますか?、ここに入院しているのは病気を治すためですが、それは目標のためのいわば手段です。皆さんが生まれてきた理由は目標のためで、退院して健康になってからが大事なんですな。

 

「そんな目標ありません」という人は持つようにしないとあきません。それから、目標を日々、折々に強く思う、これを習慣にすることが大事ですな。

しっかりした目標を持たないと、欲望に振り回されて、食べすぎの習慣、飲みすぎの習慣が身に付いてしまう。それが体質になり、慢性病の元になりますな。

 

これは行動の習慣ですけど、その元には思いの習慣があります。「まぁ、ええやろ、一回くらい」、これが重なって思いの習慣ができてしまう。この習慣がその人の性格になるんですな。性格というのはいわば心の癖です。

 

心の癖というのは想いの方向がどっちを向いているかですな。いわゆる思いの方向性です。「コップを割った」ということにしてもですな。「誰や、こんなとこ置いたんわ!」と人のせいにする人がいますな。逆に「こりゃ、自分の不注意やったな」と反省する人もいる。

 

試験に失敗しても、「おかあちゃんが早(はよ)起こしてくれんかったからや」という人がいる。「しまった。不注意やった。次からは失敗せんようにしよ。」という人もおりますな。これが心の癖ですな。

 

病気直しも根本は心の癖直しが大事なんですよ。心身一者ですからね。結局思いの癖を治さないと体の癖も治せません。それが「運命」になっていくからです。行動の癖と思い方の癖が運命になるんです。

 

だから思いが変わらないと慢性病も本当に直せません。要は癖直しです。

病気はその癖を直すために起こるんですな。「症状即療法」です。五井先生は「不幸も病気も、そのため(直すため)に起こるんだ」とおっしゃっています。五井先生はそれを「消えてゆく姿」とおっしゃいました。

 

症状として現れている痛み、熱それらはすべて療法として現れた「その思い、その行動の習慣は改めなさい」という天からの警告や、ということです。

 

五井先生は聖者です。私、甲田は五井先生に救われた。五井先生の教義をここで読んでみます。皆さん目を閉じて聞いていてください。

 

人間は本来神の分け霊(わけみたま)であって、業生ではなく常に守護霊、守護神によってまもられているものである。

この世のなかのすべての苦悩は、人間の過去世(かこせ)から現在にいたる誤てる想念が、その運命と現われて消えてゆく時に起る姿である。

 

いかなる苦悩といえど現われれば必ず消えるものであるから、消え去るのであるという強い信念と、今からよくなるのであるという善念を起し、どんな困難のなかにあっても、自分を赦(ゆる)し人を赦し、自分を愛し人を愛す、愛と真(まこと)と赦しの言行をなしつづけてゆくとともに、守護霊、守護神への感謝の心をつねに想い、世界平和の祈りを祈りつづけてゆけば、個人も人類も真(しん)の救いを体得出来るものである。

 

どうです。症状即療法、心身一者とはこのことですな。つらい症状や様々な悩み、不幸もそれを消すために起こってるということです。消えてゆくときに「反省」し、繰り返さんことですな。皆さんも今日から体の癖、心の癖直しを西式健康法でやるんや、ホンモノの病気直しをやるんや、運命を変えるんや、と心に決めてください。

 

とお話になったと思います。

さて、ここでお話の「体の癖」、「心の癖」直しの大眼目となるのが背腹運動です。

背腹運動に運命を修正し、手相も変えてしまう効果があることを初めて明かされたのは、私が知る限り下の「背骨のゆがみは万病のもと」という1996年初版の甲田先生のご著書です。

 

 

 

この本の中には背腹運動のやり方と効果について、祖父と孫の「マーちゃん」の対話形式で分かり易く説明されています。以下その部分を転載します。

 

背腹運動のやり方と効果

祖父:脊柱の運動は一往復を一回と数えて、一分間に50~55回の速さで、およそ10分間、合計500回くらいを標準として行う。 ただ、一分間に50回の速度になるまでには、少なくとも3ヶ月くらいはかかる。初めの間は、もっとゆっくりと揺すりながらおなかの出し入れが正確にできるように練習を重ねていけばいい。だから一分間に30回とか25回のゆっくりしたベースでもかまわない。

 

よく練習して、慣れてくるにつれて揺するスピードを上げていくこと。おなかの出し入れは呼吸とは関係がない。だから何か言いながらでも、歌を歌いながらでもできる。

 

左右に倒す角度は、中心線(垂直) から四十度が標準で、肩が中心に来るくらいに倒す。腰から上の方で、たとえば背中の方で曲げてしまうと、 脊柱が一本の棒のようにならない。

こんなときは腎臓を圧迫して、かえって悪くすることがあるから注意しよう。 鏡に自分の姿を写して、それを見ながら練習すればこういう失敗を防ぐことができる。

 

こうして練習を続けていると、脊柱の曲がりは矯正され、背骨の狂い(副脱臼)も治り、全身の健康状態がだんだん良くなり、いろいろな病気も良くなってくる。それに皮膚も丈夫になるから、寒い季節でも裸でこの運動ができるようになってくる。だからぜひこの運動を毎日実行して、それが習慣になるように努力してほしい。

 

以上が背腹運動のおおまかな説明だ。 どうや、マーちゃん、わかったかな。 少し難しいかな? 一度やってみるといい。 初めはゆっくりやることだよ。おじいちゃんは若い時、 この背運動で本当に脊柱の狂いが矯正できるかどうかを、竹の筒を使って実験してみたことがあるのや。竹の筒の中へおもちゃの積み木のコマを積み重ねておく。 正しく積み重ねるのではなくて、でたらめにな。

 

そうして竹筒を左右に振って、背運動の速さで倒してみる。そうすると、しばらくやっているうちにでたらめに積み重ねてあった積み木が正しく積み重なってきた。これで背運動の効果が本当によくわかったよ。

 

マーちゃん:「一本の棒のようにして倒す」というのが難しいな。それにおなかの出し入れも一緒にやるのだから。 おじいちゃん、ぼくは脊柱の運動だけやって、おなかの出し入れは止めておくよ。

 

祖父:それはあかん。おなかの出し入れも一緒にやるのや。

 

マーちゃん:どうして脊柱の運動とおなかの出し入れを一緒にやらないといけないの?

 

交感神経と副交感神経の調和を図るのが目的

祖父:それには、たいへん重要な意味があるのや。 脊柱だけ左右に長い間振っていたらよくないや。脊柱左右には交感神経が走っているから、脊柱を左右に揺するとこの神経が刺激されて働きが強くなる。すると、血液がアチドージスと言って酸性の方に傾いてしまう。血液はいつでも弱アルカリ性になっているように、身体の中でいろいろと調節する機能が働いているのや。

 

ところが交感神経が緊張して血液が酸性に傾くと、たとえば血液の水素イオン濃度が7.38から7.35へと動き始めると、おしっこのPHが下がってくる。今までPH7であったものが脊柱の左右運動を30分も続けているとPH6からPH5というように酸性になってくるのや。

 

マーちゃん:難しい話やな、マーちゃんにはよくわからんわ。

 

祖父:そうか、まあわからなくてもいい。人間の身体は、交感神経と副交感神経の働きがうまい具合に調和していたらいいのや。健康なときはだいたいそうなっているのや。

それが交感神経だけ緊張したり、あるいはまた反対に副交感神経だけが緊張したりすると、両者の調和がこわれてしまう。そのためにいろいろと不都合なことが起こって、ついには病気になってしまうのや。

それで、交感神経だけが緊張して血液がアチドージスになってくると、身体は尿の中へ酸を逃がしてそれを防ごうとするわけや。だから、交感神経と副交感神経と両方の働きが調和するように考えないといけない。

 

そのため、おなかの出し入れも同時にやるようなことを考えたのや。これが西式健康法の創始者、西勝造先生の偉いところやな。西先生は 「西式健康法の中で、この背腹運動が一番重要だ」と教えておられるのや。健康法というものは、あまり片寄ったことをしてはいけない。やっぱり中庸(バランス)をとるといことが大切やな。

 

マーちゃん:おなかの出し入れをやったら、どうしてバランスをとることになるの?

 

祖父:おなかの出し入れをすると、今度は副交感神経 (迷走神経)が緊張してくるのや。おヘソの左上3センチくらいのところに太陽神経叢という、神経の固まりのようなものがある。腹式呼吸をすると、そこが緊張するのや。すると副交感神経の働きが強くなってくる。マーちゃんも一度、腹式呼吸をしっかりやってみたらいい。

 

目の中に黒い玉があるだろ。その黒い玉の中にまた一つ、丸いひとみがある。このひとみが副交感神経の緊張で小さくなってくる。腹式呼吸をやる前とそのあとで、ひとみの大きさがどう変わるか、鏡を見て確かめてごらん。

 

だから、腹式呼吸だけをやり過ぎるのもあまりよくないのやで。 副交感神経が緊張し続けるから、たとえばぜんそくの患者さんなどは発作が起こりやすくなってくるのや。健康法もよく考えて、中庸からはずれないようにしないとあかんのや.

 

マーちゃん:なかなか難しいのやな。それじゃ、やっぱり脊柱とおなかの出し入れの運動を一緒にやることにするよ。 おじいちゃん見ていてね、こうやっておヘソを出してやってみるから。

 

祖父:よしよし、まあそれでいい。ぼちぼち練習していったらいいのや。この運動が上手にできるようになって毎日ずっと続けたら、マーちゃんはきっと健康になるよ。もちろん背中くにゃとか、胸郭の異常などにもならないよ。おまけに、さっきも言ったように頭がよくなる。

 

背腹運動は潜在意識に暗示をかけるチャンス

ここでもう一つ注意しておきたいことがあるのや。背腹運動を10分間くらい行うと、交感神経と副交感神経とが調和した状態になる。その時は、暗示がよくかかるのや。自分でその暗示をかけるのもいい。大きな声を出して暗示をかけるとよい。たとえば「よくなる、よくなる、よくなる(良くなる、能くなる、善くなる)」と何回も同じことを繰り返して言ってみたらどうかな。

 

こんなふうに背腹運動は人間の性格を改善するのに役立つのや。だから、背腹運動をやっているときには、あまり、よからぬことを思うてはならんよ。今晩のおかずは何だろうとか、大福モチが食べたいなとか。マーちゃんもおじいちゃんに似て、甘いものが好きやからな。

 

マーちゃん:ようわかった。マーちゃんはな、世界人類が平和でありますように、というお祈りをしながら、背腹運動をやることにするよ。

 

祖父:それはえらいな。お母ちゃんに教えてもろうたな。世界平和のお祈りを唱えながらやれば一番いいよ。最後にはお釈迦さんのように悟れるかもしれないね。 西式健康法はこの悟りも可能にするような、ホンモノの健康法なのや。わかったかな?

 

少し脱線しますが、ここで「世界平和のお祈り」という言葉が出てきます。これは五井昌久先生という方が提唱された平和運動の祈りで、甲田先生は後に「五井先生によって救われた」とおっしゃり、このお祈りを患者さんたちにも薦められていました。

さらに祖父と孫の対話は続きます。

 

背腹運動、金魚運動で脊柱の狂いを修正する

祖父:金魚運動と背腹運動を毎日根気よく続けていると、椎骨が変形していた人も、だんだん正しい形に変わってくる。おもしろいことやな。つまり、骨と骨とが毎日細かく擦り合わされているうちに、出っ張ったところは削られる。反対に、足りないところは骨ができてくる。その結果、正常な形の椎骨に生まれ変わってくるということになるのや。

 

手術をするのもいいけれど、金魚運動や背腹運動で毎日少しずつ削っていく方が安全で確実だと思うな。問題は、それだけ日数がかかることや。最初から覚悟しておかないとな。治るまでにはずいぶん長くかかるけれど、その代わり、その間に金魚運動や背腹運動をするとどんなに気持ちがいいかということもよくわかるようになって、一生続くような習慣にもなっていく。

仏教の言葉で『煩悩即菩提」と言うのだが、病気のおかげで健康長寿への道が開かれるということになるのや。もう一つ、興味深いのは、背腹運動を毎日熱心に行っていると手相がよくなってくることや。

 

 

マーちゃん:手相って、何?

 

祖父:よく駅前に、手相を見るおじさんが座っているだろう? ほら、おじいちゃんの手のひらを見てごらん。これが生命線で、これが知能線や。 この生命線が短い人や、途中で切れている人は寿命が短いとか、急死するとか、よく世間では言われている。

 

背腹運動は手相も変える

握力が強い人はこの生命線も深くて強い上、途中で切れることがなくて、手首のところまで長く続くのや。握力が強くなるためには、手や腕の筋肉を鍛えることも大事やが、手の神経がマヒしないでよく働いていることも大事なのや。 手にやって来る神経がちゃんと働いていない人は指が少ししびれたり、動きが鈍くなったりするものだが、そういう人の手相は線が乱れたり、切れたり短くなったりしているものや。

 

手相でその人の運命を占うというのも、決してデタラメではないはずや。見る者が見れば、ほんとうにその人の健康状態や性格までも当たるものやとおじいちゃんは思うな。

自分の手相が悪くとも決してあきらめる必要はないよ。自分で手相を変えればいいのや。

 

マーちゃん:どうすれば手相を変えることができるの?

 

祖父:一番効果があるのは背腹運動やと思うな。 木枕を使ったり金魚運動をするのもいいけれど、何といっても背腹運動やな。この背腹運動を毎日熱心にやっていると、頸椎骨が正しい位置に修復されて、そこから出る脊髄神経の機能が完全になる。その結果、手の神経が正常に働いて、筋肉の動きもスムーズになる。

 

このことは、手相の研究では超一流と言われる門脇尚平先生も断言しておられるよ。手相もだんだんよくなってくるのや。マーちゃんも自分の今の手相を手形でまずちゃんと取って、残しておきなさい。それから背腹運動をしっかりやって、一年か二年くらい経ってから、もう一度手形をとってごらん。手相がどう変わったかがよくわかるよ。

 

 

パチンコは生命線を強くする?

その間に親指の力をつける運動をしっかりやっておくと、いい結果が出るのや。たとえば指ずもうなんかがいいな。マーちゃんもお父さんと一緒にやってごらん。 パチンコもいいな。

 

マーちゃん:パチンコはお父さんがときどき行ってるよ。

 

祖父:そうか。 『パチンコをやると、親指の力がついて生命線が強くなる』と思って行っているのではないだろうけれどな。 パチンコ屋へ行かないでも、古いパチンコ台を一つ買ってもらって家でやればいいよ。

 

おじいちゃんも若い頃は、右手の生命線が特に短くなっていたのや。首が右に傾いていたことと関係があるのだろうと思うよ。首が右に傾いているから頸椎骨の六番、七番から出る脊髄神経が右側だけ少圧迫されて、機能が弱まっていたのではないかな。そのために、右手の握力が左手より少し弱かった。そのせいで右手の生命線も短くなっていたのだろうよ。

 

ところが健康法をせっせと実行し始めてから、とりわけ背腹運動を熱心にやるようになってから、こんなふうに右手の生命線が長く伸びてきたのや。こんな具合に、手相も背腹運動や金魚運動のような健康法をしっかり実行していると、だんだん変わってくるものなのや。 中には「運命線でも、自由に変えることができる」と言う人もいるよ。断食をしても手相は変わる。その理由はまたいつか話をしてあげよう。  (転載おわり)

 

以上が1996年のご著書よりの引用ですが、さらに背腹運動の効果について甲田先生のご遺作となった下の「少食の実行で世界は救われる」でお話になっていらっしゃいます。

 

 

 

この本は「甲田メソッドの決定総集篇」との肩書がありますが、その通り、甲田先生のご遺言と言って良い名著です。以下にその部分も転載します。

 

それでは西式健康法とはいったいどんなものなのか、ここでそれを簡潔に申しあげると、「自分の想いを実現させるもっとも科学的な方法である」ということです。

私たちにはそれぞれ、人生の目標とか夢を持っています。「これだけはぜひ、死ぬまでになし遂げたい」とか、「将来はこのような人間になって生涯を終えたい」といった目標をもって、それを実現するべく努力しているわけです。このような目標を実現させるのに「もっとも科学的で素晴らしいものがある」、これがすなわち、西式健康法であるのです。

 

したがって、すこやかに老いてゆきたい、いろいろな老人病にもかからなくて元気に老齢期を過ごしたいという夢はもちろんのこと、そのほかに「聖人君子になって、悩める衆生をすべて救いたい」といったような崇高な夢も、この西式健康法を実行すれば可能になると言われているのですよ。

 

世の中には、ずいぶんとたくさんの健康法が普及していますが、これほど深遠で壮大な健康法はまず見当たりません。では、そのような夢を実現するための具体的な方法は?、それは西式健康法の六大法則を毎日規則正しく実行することです。その中でも特に背腹運動に全力を注ぐこと。

 

背腹運動の偉大な効果

背腹運動は脊柱を中心にして左右に振ると、脊柱の両側で縦に走っている交感神経幹が刺激され、機能が活発になりますから、交感神経の緊張状態になります。一方、腹の出し入れを行なうことにより、ヘソの左上にある太陽神経叢が刺激されるため、副交感神経の機能が活発になります。

したがって背と腹の両方、運動することで、交感神経と副交感神経が相拮抗し、両者がピッタっと揃うのです。このとき、自律神経の完全な調和状態がもたらされたということになるわけです。 このような調和状態で本当の健康が得られるのです。

 

いろいろな病気、たとえば自律神経失調症とか交感神経緊張型による高血圧、あるいは反対に副交感神経緊張型による気管支喘息なども、この背腹運動を熱心に行なうことにより治ってくるのです。そして自律神経が完全に調和状態にあるとき、自分の想いが実現する絶好のチャンスなのです。

 

(1) 念願している想いを実現できる

常日頃から「これだけはぜひ実現させたい」との想いをインプットすれば、それが潜在意識の中へすっと入ってゆき、本当に実現してくることになるのです。このチャンスを絶対に逃さぬこと!、いつもよくなる、よくなる、よくなると念じながら、背腹運動を続けてゆけばよいのです。まことに念ずれば花開く」とはこのことです。

 

西式健康法の創始者である西造先生が詠まれた歌です。

「背と腹をともに動かし水飲みて よくなると思う人はすこやか」

そこで筆者も次のように詠んでおきました。

「背と腹をともに動かし念ずれば 業想念も消えてゆくかな」

 

以上の説明で背腹運動で自分の念願とするものを成就させることができるということがよくわかったと思います。背腹運動はしたがって単なる健康法ではなく、自分の運命をも変えるという偉大な効果が期待できるのです。それを証明するものとして、背腹運動で手相まで変わってしまうのです。

 

(2) 背腹運動で手相も変わる

手相まで変わるといっても、「本当かな?」と疑う人もいるでしょうが、これが本当なのです。読者の皆さんの中でも、一度、手相を見てもらったという人もいるでしょう。そのとき、「あなたの手相はあまりよくないですな。 特に生命線が短くて、また途中で切れていますよ」とか、「運命線があまり立派でないのが残念ですな」と言われたりして、少し落ち込んでしまった経験もあるかと思います。

 

手相というのは、 手掌(てのひら)の筋肉とそれを支配する神経の働きによってだいたいできあがるものです。手指には、腕のほうから三本の神経が延びてきています。 拇指の側に橈骨神経、中央には正中神経、 そして小指側に尺骨神経が走っています。これらの三本の神経の元は鎖骨下枝神経で、この神経が上腕から降りてきて三本の神経に分かれるのです。

 

この鎖骨下枝神経は上搏神経叢から出てきたものです。上搏神経叢から鎖骨上枝神経と鎖骨下枝神経とに別れ、鎖骨上枝神経は鎖骨の上を通って胸や背中の筋肉及び、横隔膜に入ってゆきます。そして、鎖骨下枝神経が腕のほうに延びて、さきほど説明した三本の神経に分かれ、手指や十掌の中へ入っているのです。ところで、上腰神経叢へは脊髄神経が入ってきているのですが、 この脊髄神経は一本だけではないのです。

 

したがって、もし頸椎骨や胸椎骨に狂いがあると、そのため脊髄神経は圧迫されて機能を完全に果たすことができなくなってしまうわけです。そのため手掌、手指に行く三本の神経も機能が不完全となり、手相が悪くなってくるのです。そこで背腹運動をしっかり行なって背骨の狂いを治すと、腕から手のほうへゆく三本の神経も完全に働き、その結果手相がよくなってくる。これは本当に科学的に説明できることですから、だれでも納得がゆくはずです。

 

そこでまずは実行して、その手相の変化を実際確かめることです。ノートに現在の自分の手相を正しく写しておき、背腹運動をみっちり五年実行する。そしてもう一度手相をよくみてください。そうすれば手相がどのように変わったかをはっきり知ることができます。このように背腹運動で手相まで変わるとすれば、やはり運命も変わると言えるではありませんか。 これで背腹運動でいかに偉大な効果が現れるかわかるでしょう。

 

背腹運動中に行なう世界平和のお祈り

さあ、それでは次に背腹運動を行なう際に世界平和のお祈りをするという問題について説明したいと思います。

さきに、私たちは本来、「神の子」とか「神の分けみたま」 であるといわれているのに、一方ではまた「罪根深重の凡夫」ともいわれているのはなぜか?、と述べておきました。いったいどちらが本当なのかわからない。そのとおりですが、 これはどちらも本当なのです。「そんな馬鹿な」と思われるでしょうが、どちらも本当なのです。

 

私たちは本来、やはり 「神の子、 神の分けみたま」であることは間違いございません。大宇宙の親神様の分身です。だから元来は光っているはずです。

 

ところが、この本体にべっとりと厚く業想念が取り巻いているので、光るどころか曇ってしまい、いろいろな苦悩が現れ、それが不幸の原因となっているわけです。少食を実行しても、それがなかなかうまくゆかず食べすぎて失敗してしまうのも、貪欲という想念に振りまわされてしまうからです。

 

この業想念を浄化し、消え去るようにすれば、本来の 「神の子」としての光明が現れ、本当に幸せな人生となってくるのです。そこで、どうすればこの業想念を浄化し消し去ることができるか。それは、お祈りの力によって可能になるのです。法華経の中にある観普賢菩薩行法経で、次のように説かれております。すなわち、

 

一切の業障はみな妄想(誤っている想念)から起こるものだ、もし懺悔せんと欲せば端座して実相を思え。 衆罪(業想念からくるいろいろな苦悩)は霜露のごとし。慧日(太陽の光、つまり神様の光明が入ってくれば) よく消除す (溶けて消え去ってしまう)と。

 

このように、私たちが罪根深重の凡夫といわれていますが、そのもとになっている業想念は霜や露のようなもので、神の光を受ければたちまち溶けて消え去ってしまうものだ、ということです。

そこで筆者は背腹運動を行なって、自律神経が完全に調和したときに、神様の御心の中へ入ってゆくお祈りをすることによって、神様から無限のエネルギーが流れてきて、さしもの頑固な業想念浄められるに違いないとの確信を得ることができるようになりました。

 

そのため神様の御心と一体になるお祈り、 それは世界平和のお祈りであると神人であり聖者であられる五井昌久先生から教わったわけです。なるほどこのお祈りならだれでもがどこでも簡単にできる。信仰心がある人でもまたない人でも世界の平和をお祈りすることに異論はないはずです。

 

この世界平和の祈りを説かれた神人であり、また聖者でもあられる五井昌久先生によって筆者は開眼させられたのであります。それまでどうしても壁にぶち当って、それを乗り越えることができず悩んでおりました。筆者もまた業の深い人間ですから、その業がどうしても浄まらず消えてゆかないため、絶望に陥っていたわけです。

 

それでは親鸞上人の教えに従って、この罪深いままで阿弥陀如来の慈悲によって救いとっていただくよりほかに道はないのかと思っていたのです。それが五井先生によって、ここに道があるよと教えていただいたのですから、これほどありがたく、幸せなことはない。本当に感謝の気持ちでいっぱいになってしまうではありませんか。

 

よし、この世界平和のお祈りを西式健康法の背腹運動を行なうときに一緒にやれば、その効果は一層高まるに違いないのです。背腹運動を行なうことによって交感神経と副交感神経とが完全に調和し、潜在意識への受け入れ態勢が充分できているところへ世界平和を心の底から念ずるお祈りをし、お願いするのですから、 念ずれば花開くで、その念願は力強く潜在意識にインプットされるでしょう。

 

そこで、お祈りをする準備をまず始めるのですが、それは次のように行ないます。

まず第一に、西先生がすすめておられますように、背腹運動をしながら、「よくなる、よくなる、よくなる・・・・・・」との自己暗示を五分間くらいしっかり行ないます。その次に五井先生から教わった世界平和のお祈りに移るわけですが、背腹運動中ですからお祈りの全文を唱えることは少し無理です。

 

それで、背腹運動中は簡単に、世界が平和に、世界が平和に、世界が平和に......とお祈りしながら後半の約五分間行ないます。(注:、と先生は仰せですが、世界人類が☓1.5往復/一呼吸☓0.5/平和でありますように☓2往復」と区切ってリズミカルに唱えることもお薦めです。)

 

それから、本番のお祈りに移ります。背腹運動は約10分間で終わりますが、その結果、自律神経の交感神経と副交感神経とが完全に調和するでしょう。このとき潜在意識の受け入れ態勢ができておりますから、世界平和のお祈りがその潜在意識にインプットされるのに絶好のチャンスなのです。 このお祈りで神様の御心の中に入ってゆくことができるわけです。その結果、神我一体の境地が実現しますと、大宇宙の神様から無限のエネルギー(光)が私たちに流れ込んできます。

 

この偉大な光の力によって、私たちの本体を取り巻いていた頑固な業想念も霜か露のように溶け、消え去ってしまうのです。そして、「神の子」としての光がその本体から出て輝くのです。これが、つまり五井先生の光明思想です。こうして、罪根深重の凡夫も業想念が浄まって、内側から光り出すわけです。

 

さらにこの業想念のためにどうしても守れなかった少食も、正しく実行できるようになるでしょう。これで、いかなる難病も見事に克服できるというものです。ありがたいではありませんか。だから筆者は、甲田医院で少食の指導を受けて実行される患者さんたちに、ぜひこのお祈りをされるようおすすめすることにしました。

まだまだ日が浅く、どのような結果が出るかわかりませんが、筆者は死ぬまでこのお祈りを一人でも多くの人にお伝えしたいと決意を固めている次第です。 (転載おわり)

 

長い引用でしたが、甲田先生が最後のご著作の中でこのように教えて下さっていました。

 

JAL再建の土台となった天風師の言葉

昨年8月にお亡くなりになった稲盛和夫さんは経営破綻したJALの再建に尽力されましたが、その折、従業員、幹部の意識改革こそ重要と考え、社内各所に師と仰ぐ中村天風師の言葉を掲示されました。それが「新しき計画の成就は、ただ不屈不撓(ふくつふとう)の一心にあり、 さらばひたむきにただ想え、気高く、強く、一筋に。」でした。稲盛さんは遺作となった「経営12か条」の中でもこの言葉を紹介されています。その第3条は「強烈な願望を強く心に描く」ですが、その中で「どのくらい強く持てるかが成功のカギ」としてこう語られています。

 

 

 

私は、心に描いたとおりに物事は成就すると思っています。言い換えれば、「何としても達成したい」という願望をどれくらい強く持つことができるか、それが成功のカギになってくると考えています。こうしたことから「強烈な願望を心に抱く」を3番目の要諦とし、「潜在意識に透徹するほどの強く持続した願望を持つこと」を副題として掲げているわけです。潜在意識を駆使すれば、経営をさらに大きく伸ばすことができます。

 

 

ここで稲盛さんがおっしゃっている「潜在意識に透徹するほどの強く持続した願望を持つ」方法が、背腹運動であることはここまで読まれた皆さんにはお分かりと思います。先の天風師の言葉のように「ひたむき、強い、一筋」の想念、願いが願望実現には不可欠ですが、ここで、注目して欲しいのはここに「気高く」の一言が添えられていることです。気高くとは純粋、ピュア、崇高な願いということで、エゴで汚れていないことを意味しているのでないでしょうか。

 

甲田先生は「個人の願いもよい、しかし、それは得てしてエゴ、業想念によるものであることが多い。であるからそれも持ったまま、『世界平和の祈り』に投げ込んでしまえば、神様の光がそれを浄め、よりよい人生へと導かれる。」ということをおっしゃりたかったんだと思います。

 

さて、最後にここまで読んでいただいた皆さんにお願いがあります。今日から是非、世界平和の祈りと背腹運動を是非毎日の習慣としてくださることをお願いします。それが、皆さんの願望実現、本当の自分探しに役立つことを信じるからです。

今日の一文がそのお役に立てば幸いです。

 

世界人類が平和でありますように