3日程歩いただろうか。
俺達は、マグナスおじの力でなんとか狭間世界を踏破した。
そしていよいよ、現世へ足を踏み入れることとなる。

「これを踏んだら転移するのか?」
「そうにゃ。おい、吾輩を掴むなにゃ。ここまで来たら吾輩も付いていくにゃ」

召喚の件があるからな。このぬこは信用出来ない。俺は死ぬまでこいつを道連れにし続ける。

目の前には光り輝く踏み板が、横一直線に広がっている。

さぁいよいよ始まるぞ。
俺は決めた。新しい世界でテンプレハーレムを実現させてやる。
沢山の女性達と一緒に旅をするんだ。そして口では言えない、あーんなことや、こーんなことも、グフフフ。

「お前の顔は本当に気持ち悪いにゃ。こんなんだから女にモテないんだにゃ」
「うるさい!別にモテないわけじゃねーし!ってか俺の事何も知らねーだろ!」

転移したら黒魔術について勉強しよう。
男どもを生贄に捧げて、女性を召喚するんだ。

決意を新たに。俺達は互いに頷き合い、新しい一歩を踏み出した。

ーーーーー

むせ返る程に熱された空気。
肌はヒリ付き、街全体が熱気に包まれている。

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何なんだこの光景は。空が赤く染まってる……

「本当に運が悪いにゃ。まさか暴動の真っ只中に出くわすにゃんて」
「暴動……?」

よく見たらそこかしこに死体が転がっている。
遠くから聞こえる群衆の声が、地面を揺らし、空気を揺らす。

こ、怖い。何この状況。どっかに逃げなくては。

俺はパニックに陥り、正常な判断ができなくなっていた。

「ここにも民衆が居たぞ!急げ!逃げられるぞ!」

声の方を振り向くと、剣を持った一人の兵士が俺達に指差して叫んでいる。

クソっ!
軍隊に正面から立ち向かうほど、アホではない。だが、土地勘もない俺達が走り回って逃げられるとは到底思えない。

他のメンバーも感じ取ったのだろう。

一人、また一人と剣を鞘から抜き構える。
自分の運命を悟ったのだ。

噛み締めた奥歯がギリギリと音を鳴らす。
死んでたまるか。
こんなところで死んでたまるか!まだ何も成し得ていない。まだ死ねない!

「こっちよ!早く来て!」

突然女性の声が耳に届いた。
声の先……剣と盾を持った、一人の年若い女性が手招きしていた。

俺は即座に判断下す。

「皆!こっちだ!」
「急いで!」
「クソっ!逃がしてたまるか!」

俺達の存在に気付いた兵士が、最後尾の仲間に斬りかかる。

「ファカール!」

ヒュン!
と小気味よい風を切る音が耳元を通り抜ける。同時に兵士の頭に弓矢が刺さり絶命した。

「まだ姉御も見つかってねーのによ。何にでも首突っ込むなよな!」
「えへへ。見捨てられなくてさ。ありがと。助かったよ」

なんとか、俺達は全員事なきを得た。
地下水路に案内され、暗くジメジメした空間を突き進む。

道すがら、俺達を助けてくれた美少女と、好青年は自己紹介してくれた。

美少女がマイカ。好青年がファカールだ。

世の中の俺以外の男は全員死んでほしいと思っているが、ファカールに関しては命の恩人だ。流石に無下に扱うことは出来ない。

「つまり君達も巻き込まれたわけか」
「うん、姉さん……もう一人の仲間と合流したら直ぐに町を離れるつもりだよ」
「しっ!静かに!クソっ!こんなところにまで兵がいやがるぜ」

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地上にも敵。地下にも敵。
ハードモード過ぎるだろ……

マグナスの叔父貴以外、皆憔悴しきっている。なんで叔父貴はそんなに元気なの?

陰湿な場所も相まって、皆の士気は低い。
マイカとファカールも元気を装っているが、実際のところかなり顔色は悪い。
このままでの戦闘は分が悪すぎる。叔父貴だけでこの人数の相手は無理だ。

とにかくバレてはいけない。
俺達は息を潜めて。その場をやり過ごす。

しかし、ここで仲間がやらかした。

壁に立て掛けてた盾が倒れてしまったのだ。
反響音が凄まじく、ガラアンッッ!!という音が、一瞬にして地下水路に駆け巡った。

「誰だ!!」
「そこに居るぞ!!」

前からも後ろからも、兵士がぞろぞろとやってくる。

終わった……もう助からん。
だが集まったのは兵士だけでは無かった。

近くにあったぼろぼろのドアが蹴破られ、一人の女が姿を現す。

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マイカとファカールは安堵し、まるで全てが解決したかのような表情を見せている。

そしてそれは俺も同じだった。
この女からはマグナスの叔父貴と同じ雰囲気を感じる。

彼女から目が離せない。完璧なもののふである。

身の丈サイズの大剣を軽々しく振り回し。その一振りで敵三人を同時に吹き飛ばす。
そして、どこからか取り出した一杯の酒を呷る。

「あー美味い!さぁボサッとしてないで。皆で生きて突破するよ!」

満面の笑顔で、周囲の不安を吹き飛ばした。