傭兵団「鈴蘭の剣」団長ラヴィア活動録

 ウェーブランから帰還した後。
 見習いマイスール率いる、十人の戦士が加入した。それぞれの戦士は力を示し、戦闘においては即戦力の実力を持っていた。
 中でも、老戦士マグナスの強さは秀でており、あたしと同格、もしくはそれ以上の実力を有していた。

 これ程の手練れ達が付き従う相手、見習いマイスールとは一体どんな人物なのか。
 あたしは団長として、見習いマイスールの人となりを見極める必要があった。

 加入して直ぐ。
 見習いマイスールは十人の戦士を遠方へ派遣した。行動が早すぎる。
 独自に裁量権を持たしたのは失敗だったか?そんな思いが頭をよぎったが、派遣先を聞いてハッとなった。
 場所は遥か東北。
 ウィルダ族の領土であるウィルター山脈を越え、そこから北の先にある秘境の地。
 “永久凍結のモルリッサ”と呼ばれる地である。

 ウィルダ族ですら立ち入らない禁断の地。
 モルリッサとは竜の名前だ。かの竜から加護を授かろうと、多くの先人達が散っていった。

 今となってはお伽噺の様な話だ。現在は足を踏み入れる者など皆無。自殺行為に等しい程、過酷な場所なのだ。

 イリヤ情勢の悪化、周辺諸国の介入、新興勢力の横行、今後我々の町はより困難な状況に立たされるだろう。

 傭兵団の未来はどうなる?町の未来は?
 マイサとファカールはまだ未熟だ。まだ未来を背負えない。誰が二人を守る?

 確固たる意志を持ち、確固たる強さを持つ者こそ、苦難に立ち向かうことが出来るだろう。

 見習いマイスールが見ている未来……
 英雄が一人や二人では足りないと言いたいのか。

 せめてあたしが三ツ星覚醒まで辿り着けば……

 強く噛みしめた唇から一筋の血が流れ落ちる。

 出来ることは少ないがやるしかない。
 あたしにしか出来ないことを。