「ウェーブランは抜けたな」
「壁外に出てからは、あっという間だったな」
「皆さん、もう安心ですよ」

 はぁはぁ、死ぬかと思った。
 転移先が戦場だなんて……もう二度とごめんだ。
 ようやく緊張から解き放たれた俺達は、思い思いに腰を落ち着け始めた。

「改めて自己紹介させてくれ。あたしはラブィア。鈴蘭の剣という傭兵団の団長をしている。宜しくな!そしてこっちが、同じ傭兵団の……」
「マイサです」
「ファカールだ」



「俺は見習いマイスール。この度は命を助けて頂いてありがとうございます」
「見習い?なんの見習いだい?」
「あ、そういう名前なんです」
「?」
「名字が見習い。名がマイスールです」
「ふーん?……宜しくな!見習い!」
「宜しくお願いします!マイスールさん!」
「変な名前だな」

 ぬこに言ってくれ。

ーーーーー

 風吹き抜ける丘の上。

「あそこに見えるのが鈴蘭の町さ。あたし達傭兵団の拠点がある。まぁ家みたいなものかな」
「ふふふ。とっても素敵な町なんですよ」
「やっと帰ってきたな」


 丘から眺める町並みは美しく。優しい太陽の光に照らされ、神の祝福を受けた様にキラキラと輝いている。

「見習い達は、行く宛あるのかい?」

 俺は首を横に振る。
 宛はない。金もない。力もない。
 ウェーブランの暴動で実感した。俺にはなにもない。マッチョな背中フェチ男10人だけだ。

 途方に暮れる俺を見て、ラブィアは察した。そして一つの提案を持ちかける。

「うちの傭兵団に入らないか?」

 その提案に、俺の口は驚くべき速さで反応した。脳を通さず反射的にだ。

「入る!」