DUNE/デューン 砂の惑星 | inosan009のごくらく映画館Ⅲ SINCE2019

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 著名な原作でありながらその映画化にあたっては幾多の頓挫があり、唯一完成した1984年のデイヴィッド・リンチ作に至ってはいまだに「壮大なる失敗作」との評価が大勢を占めている。長大な物語ゆえの映画化の難関を示す顕著な事例であるが、今回その原作に挑んだのが『灼熱の魂』『プリズナーズ』『ボーダーライン』などの俊英ドゥニ・ヴィルヌーヴ。キネマ旬報誌が2016年に特集した「評論家100人が選ぶ期待の外国映画監督ベスト・テン」で1位のイーストウッドに次ぐ第2位に選出された気鋭の逸材である。

 さてそのヴィルヌーヴ、この難しい原作をどんな映画に仕上げて見せたか。コロナ禍のこの年最も期待された作品の一つであったが、正直なところ、期待が大きければ大きいほどその反動も大きい悪しき実例になってしまった感が強い。原作の世界観を映像化した壮大な映像は見事である。トンボ型ヘリや荒涼とした砂漠の惑星の絶景など、いかにも大掛かりな映画、潤沢な資金の下で作られたであろう映画の魅力に満ちている。映像作品としての力量は申し分ない。だが2時間半というこの長尺は、見るに堪えない辛苦の時間であった。その最大要因は、最初から最後までとにかく何をやっているんだか全くわからない滅茶苦茶な映画の展開にある。

 良く言えば原作のダイジェスト、悪く言えば原作の租借不足。この作者たちは、映画を見るまえに原作をよく読んでから来いと言っているような作風なのである。それとも、この映画を見る者はみな原作の熟読者だとでも思っているんだろうか。原作なんか知らなくても楽しめるのが映画の醍醐味だ。『ロードオブザリング』の三部作、『ゴッドファーザー』の連作を見よ。その点これはもうちんぷんかんぷん。原作に無知な観客にとってはまことに不親切な映画だとしか言いようがない。
 
 この映画は当初から連作を想定しての制作なのだという。それならそれで物語の整理のしようがもっとあったのではないかと思う。ドゥニ・ヴィルヌーヴ、才に溺れた失敗作、まさに「呪われた原作」と思わざるを得ない。少年の頃からSFが大好きだったというヴィルヌーブ、ならば『メッセージ』のような小品での再起に期待したいものである。