湿熱の問題 ~どこを目安に判断するべきか~ | 大阪弁天町の漢方薬局「廣田漢方堂薬局」のブログ

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アトピー性皮膚炎でこちらに相談に来られる方には、湿熱+気滞血瘀型の方がしばしばいます。

 

ただ困ったことに湿熱の兆候は、全身症状として反映されていないことが多く、本当に湿熱がアトピー性皮膚炎に関与しているかどうかは、方剤を使ってテストしなければならない現実があります。

 

全身症状としての湿熱とは、例えば舌苔が黄膩苔、体臭がきつい、黄色い小便が出る、黄ばむ汗が出る、脈滑数などになりますが、これらの所見が揃うことは、僕の中ではまぁ~少ないです。夏に症状が悪化すると言っても、実際に相談時期が夏でなかったら、どういう症状が悪化するのかわからないので、それを一概に湿熱の仕業とするのは少々乱暴ですし。。。

 

唯一確認できることは、皮膚という局所において、黄色く、ベタベタした肌汁が出るというくらいです。

 

ただ一言に湿熱と言っても、脾胃湿熱・肝経湿熱・膀胱湿熱・三焦湿熱などなど、各臓腑に湿熱邪は停滞します。

 

皮膚に湿熱現象が出ているからと言って、脾胃湿熱と片づけてしまうのも乱暴な話です。

 

実際、アトピー性皮膚炎では肝経湿熱の竜胆瀉肝湯や膀胱湿熱の五淋散などがフィットすることもあります。

 

この肌汁が湿熱の仕業だということがほぼ確実な場合には、その湿熱の出どころと存在位置をどう見極めるかが課題になります。

 

僕の場合は、鍼灸の勉強をしていることもあり、十二経絡の走行が頭の中に入っているため、ある時にはその走行部位によって湿熱の存在する臓腑を特定したりすることもあります。また肌汁が皮毛レベル(肺・膀胱)で出ているのか、肌肉レベル(脾胃)で出ているのかという具合に組織の深さで判断したりします。

 

湿熱の場合、フィットする方剤が見つかり、肌汁が出なくなると同時に、痒みが落ち着いた状態を作れたときに、それらの方剤を減量、もしくは中止する時期の判断に非常に苦労します。

 

とくに最初から全身的な症状がみられない場合もあるため、判断を一歩間違えると再び肌汁が出たり、痒みが出たりして症状が逆戻りすることが考えられます。

 

つい先日も、前頭部付近からの肌汁が出る男性のアトピーに対し、五淋散を2/3量で用いてうまくコントロールできていた症例に対し、冬になって湿熱が暴れるような時期でなくなったこと、肌汁が落ち着いているのに清熱剤を長期間にわたって使う必要はないことから、徐々に減量して様子を見ることにしました。

 

そして五淋散を1/3量に減量すると、なんとまぁ、肌汁が復活したのです・・・。

 

その連絡を受け、すぐに五淋散を2/3量に戻して2,3日様子を見るように伝えたところ、肌汁が落ち着いて皮膚は改善したという報告を受けました。

 

この男性の場合には、皮膚の肌汁以外に湿熱を思わせるような症状は一切なく、五淋散は肌汁の出現部位と肌汁の性状からフィットすることを確信してお渡ししたものです、したがって汁が止まっている状況では、それらがまだ必要かどうかの判断を的確にすることが難しく、今回のような状況が起こってしまいました。。。

 

この男性の場合には、体質的に膀胱~三焦の水(津液)が濁りやすく、熱を帯びやすい体質を持っていると思います。

 

そしてそれの排出経路が前頭部となり、肌汁になって排出されているものと推測できます。

 

それを五淋散は経絡治療を通じて小便や大便から排出してくれているのだと思います。

 

そう考えると、五淋散はこのまま2/.量を維持し続け、症状が出ないようにコントロールしておく必要があると思います。減量・中止については、現時点では考えるべきではなく、清熱燥湿によって乾燥症状やその他の症状が出たときに、改めて考察すべきだと感じました。

 

アトピー性皮膚炎において、湿熱の関与が続いているかどうかの判断は非常に難しいものがありますが、こういう経験を経て、徐々に理解が深まると思いますので、1つ1つ経験するしかないですね・・・