桂枝には少し気を配る方がいい。 | 大阪弁天町の漢方薬局「廣田漢方堂薬局」のブログ

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寒熱をキチンと弁証したうえで、方剤を選択するように心がけているが、たまに思わぬ反応を出してしまうこともあります。

とくにこのところ桂枝によるトラブルがちょこちょこと見受けられます。

桂枝は、葉天士解本草では、帰経が肝と肺で気上衝に対して使う生薬であり、肉桂は大熱大辛ですが、桂枝は辛温なので、そこまで温める働きは強くありません。

桂枝は肝から血脈を通って心に巡り、そこから脈外へ出て肺へと流れ、三焦を通って衛気の循環をよくする生薬という風に僕は考えています。

つまり、気血津液すべてに影響を与え、気を走らせることによって津液・血液も流す外向きベクトルの強い生薬です。

気上衝については・・・

本来であれば、肝の疏泄・脾の運化によって上昇してきた気は、肺の宣発粛降によって全身へ下るのだが、肺気の宣発粛降が「冷え」によって伸びることができず、気の運行ベクトルが上>下になったことによって起こる現象である。上衝とはのぼせ・突き上げることで、気の異常な病態では最も上衝しやすく、気単独のこともあり、時には水と絡み合って上衝することもあり、また血を伴うこともある。上衝という病態は指すところがかなり広く、奔豚・頭痛・頭冒・悸・心痛・精神異常までをも含み、また上衝する結果、小便は概して不利の傾向となる。⇒桂枝の配合されている方剤は総じて「冷えのぼせ」の傾向がある。



で、肺気の粛降が冷えによって障害され、行き場を失って上昇するしかなくなった状態に対して用いるので、外向きベクトルの生薬であっても気が付き上げる症状に対応できるのです。


これに対して内向きベクトルの生薬となるのが「芍薬」として考えており、桂枝・芍薬の薬対で内外の循環が整い、これが営衛調和の1つの考え方になるのかなと自分勝手に想像しています。


しかし、この状況に応じて桂枝が配合された桂枝茯苓丸や桂枝加黄耆湯などを使った時に、この桂枝が思わぬ作用を引き起こし、のぼせが出たり、火照りが出たりすることがあります。


当然、営衛の調和を図るために、芍薬などがキチンと配合されたものを使うのですが、それでもこの桂枝が悪さをします。


気上衝でのぼせなどにも使うのに、使ったら逆にのぼせが強くなるという何とも矛盾したことが起こるのですが、これが漢方のむずかしさなのでしょう。。。


すぐに他の方剤・・・たとえば桂枝茯苓丸→冠心Ⅱ号方や桂枝加黄耆湯⇒玉屏風散など、軽視が含有されていない類似方剤に変えると、のぼせなどの症状が治まるケースが多いです。


こう考えると、他の生薬においても、きちんと病態に応じたものを選ばないと、思わぬしっぺ返しを食らうことになりかねません。


こういうことも1つずつ経験していくしかないですね。。。


漢方、ホント難しいっす・・・