
今朝、出勤時にふと5年生の靴箱を見ますと、とても美しく整えられていることに気付きました。
9月11日の記事で紹介したように、もともと6年生の靴箱は、毎日整然となっていたのですが、それが5年生にも広がってきたのかなと感心しました。
では、ほかの学年はどうだろうと4年生を見ますと、これまたきれいに並んでいます。
1年生はどうだろうと見てみると、やはり1年生もきれいに上履きが並んでいます。
素晴らしいことです。
本校の表玄関で、見事に靴箱が整えられているのです。
私は常々、教員には次のようなことを伝えています。
日本の著名な教育哲学者である森信三先生という方がおります。
この森先生は学校をはじめとする教育組織を再生させる三原則として、次の言葉を残し、実践を促しました。
「時を守り 場を浄め 礼を正す」
この3つを実践することで、どれだけ廃れた教育組織であっても再生するのだという教えです。
かなり多くの学校で、この言葉は使われています。
額縁に入れて、正面玄関に掲示している学校があることもたくさん見てきました。
誤解があってはならないので書いておきますが、こうした掲示物のある学校が廃れているわけでもありませんし、矢口小学校が廃れているわけでは当然ありません。
それでもまだまだ上のステージに向けて前進できると私は感じるので、森信三先生の三原則のうちのひとつ、「場を浄める」をまずは実行に移したいと思います。
「場を浄める」という言葉を教育に使おうと教師が思った時、おそらく多くの教師は“子供たちに浄めさせる”ためにはどうしたらよいだろうと「やらせる」ことを考えます。
私の場合は、この逆を実践していきます。
別に子供たちが場を浄めなくてもいい。
まずは「場を浄める」と何が起こるのか、自分の心身をもって人体実験するところから教育実践を開始します。
まずは“Trial”ですね。
前任校の副校長時代は、一人静かに雑巾がけとホコリ払いを始めました。
私が単独で、学校の美化運動を起こしてから2週間が過ぎ、その間、子供たちからも、大人からも私にかかる言葉が変わってきました。
「先生、どうして掃除しているんですか?」
という、教員も子供たちも同じように、疑問から始まった言葉が、
「先生、ありがとうございます。」
に変わり、さらにはPTAの方から、
「私たちも掃除をしますから、掃除機を貸してください。」
という声があがるようになり、2週間たつと、とうとう4年生の子供たちから、
「先生、私たちがいる3階はピカピカにしたから見に来てください!!!」
と呼び止められるくらいになりました。
こうして2週間で、学校の何かが変わる手応えを得た、人体実験者・井上の実践を紹介しました。
『よいプレーヤーを育むための整理整頓指導(広島観音高校サッカー部 畑喜美夫先生の実践)』より
次に、「広島観音高校」の教育実践を紹介します。まずは写真をご覧ください。
この写真は広島観音高校の畑喜美夫先生が指導し、2006年インターハイで日本一なった広島観音高校サッカー部の荷物です。
「勝利の神は細部に宿る」という考え方からこうした荷物指導をされている。
それも「こうしなさい」とは決して言わない。
問いを投げかけ、子供たちに考えさせ、自ら行動できるように仕向けている。
心を整え、人間力を磨き、日常生活全てで強くなる。
良い習慣は良い結果をもたらす。このような考えから荷物指導が行われているそうです。
子供たちに整理整頓の課題があると感じる先生は、こんな教育実践をしてみてはいかがでしょうか。
まずは観音高校の荷物写真を見せる。そして子供たちに問いかける。
「この写真を見て、感じたことを発表しましょう。」
子供達たちからの予想される意見。
「荷物がきれいにならんでいて、すごいと思いました。」
「私たちの荷物はいつもきたないと思います。」
「こういう荷物の置き方をするチームの方が絶対強いと思います。」
写真を見せただけで、きっといろいろな気づきが生まれます。
先生から、
「どうしてこの写真を見せたのだと思う?」
子どもたちからこう返ってくるかな。
「荷物をきれいにするためです。」
「荷物をきれいにできれば、他のクラスもビックリすると思います。」
さらに先生はこう返す。
「では、5分間時間を取るから、今自分が感じたことを行動にしてみよう。」
子供たちは、「はいっ!」と返事をして行動開始。きっと、先生が何も指示しなくても、教室や下足箱がきれいになるでしょう。
時に小学生の真っ直ぐな心というのは高校生以上のレベルを示します。
広島観音高校のサッカー部の美しい荷物については、こんな笑い話もあります。
サッカーに興味もない通りすがりの街の主婦たちが、整然と並べられている荷物を見て感動し、パチパチと写メを撮ってSNSで拡散してくれた。
そのことを知り、生徒たちはさらに自信を深めたということです。
以下は畑先生の言葉を転記しておきます。
「企業のトップの方はまず机の上をキレイにすることだと言いますよね。
会社がつぶれる一番の原因は部署の汚さと聞いているんですが、自分たちが働く場所をキレイにすることで仕事の効率が上がっていく。
汚くてもできないことはないのだけど、能率を上げたり、高度化したりするためにはすごく大事なことなのかなという気がしますね。
だから心を整えることが大事なんですよね。挨拶だったり、返事だったり、身の回りを整理していくことで、心を整えてピッチに立つことが大事だし、リンクしているのかなと思いますね。
大事な仕事がある時は前日からいい準備をしていく、心構えをして心を整理していきましょうという話につなげていくとか、企業の方にはうまくサッカーの話を会社の中に取り入れるような形に持っていきながら話しますね。」