![]() | 二十一世紀に生きる君たちへ (併載:洪庵のたいまつ) 司馬 遼太郎 (しば りょうたろう) 世界文化社 このアイテムの詳細を見る |
この授業は「アニマシオン」という手法を使ってやりました。
「アニマシオン」にはいろいろな方法があるのですが、その中で「質問をする」という方法を使い、読み聞かせを聴いている子どもたちの思考をフル回転させたのです。
司馬遼太郎先生が書かれた「二十一世紀に生きる君たちへ」は、一時代前には国語の教科書に載っていたくらい名文なのです。21世紀になって10年もたった今では、国語の教科書からは消えてしまいましたが、私は文学というものは、時代を超えて子どもたちの心に訴えるものがあると確信していますので、卒業を前にして「卒業記念授業」のひとつに取り上げてみました。
アニマシオンとしての質問は以下の通りです。
①歴史とは何?
②あなたの歴史上の友達は誰?
③21世紀はどんな世の中?
④今も昔も変わらないこととは何?
⑤20世紀、人間は自然に対して何をしたのか?
⑥あなたは今、どんな自分?
⑦君の心の中の一番美しいものは何?
このような質問の答えを考えてもらいながら、最終的に学びや本への興味に結び付けていく指導をしました。
何人かの感想を紹介します。
「ぼくは21世紀をふつうにすごしていました。でも、この授業をして、21世紀に来たくても来れなかった人もいるんだなと思いました。ぼくは21世紀をいっしょうけんめいいきたいです。」
「ぼくは、この質問を受けて、⑥、⑦を答えた時、家族にいろいろやってもらってるくせに、なんでおれはこんなにでかい態度をとっているんだろうと?思いました。この司馬遼太郎さんが書いた『二十一世紀に生きる君たちへ』を読んでよかったと思いました。」
「今まで考えたこともなかったような質問が出てきて、最初はなんて書いたら良いのか迷いました。けど、⑥、⑦の質問では、自分が自分に対して質問をしたら色々なことが書けた。世の中の事や地球の事もスラスラ書けて楽しかった。」
「私はいつもこんなこと(歴史とはとか、歴史上の友達など)を考えたことは一度もありませんでした。でも、今日考えてみたり、自分のことをふりかえってみると、分かっているようで分かっていませんでした。でも私は、この本で自分のことが全部分かったような気がします。なので司馬さんはすごいと思いました。」
「今までぜんぜん考えた事がなかった、自分に対する問いかけや、自分の事を考えてみると、自分の事が少し分かったから良かったし、おもしろかったです。二十一世紀はけっこうあぶないんだなぁと実感しました。これからも見たいに対する気持ちを大事にしたいと思います。」
子どもたちは授業の中で自分自身を見つめ、新しい発見をしてくれたようです。授業の中で自己変容をしているわけです。私たち教員はファシリテーターとして子どもたちに「新たな気づき」を導き出してあげる役目があります。学校で行う授業とはそういうものではないでしょうか。