2025年1月6日 午前
ソウル・ノンヒョンドン 観察ログ。
対象:専業主婦・43歳、結婚7年目。男児5歳。
経歴:中堅企業マーケティングチーム主任まで勤務。退職3年。
「確認 #1」
この時間に路線バスに乗るのは、
結婚してから初めてだ。
前の方に一、二人。
一番後ろの席、そのすぐ前に座る。
外が一番よく見える。
安全だ。
窓の外から見る。
見慣れた景色、冬の街。
目を閉じると、
少しだけ昔に戻れる気がする。
江南から京畿道へ向かう広域バス。
高速道路に入るから、
二十分は停留所がない。
「ふう……」
もう一度、目を閉じる。
太ももが寄る。
コートを引き寄せる。
外から押されたときの、
この感覚。
結婚前には、よくあった。
コンコン。
コンコンコン。
はっとして、目を開ける。
コン。
外を見ると、夫が立っている。
思わず、目を覆いそうになる。
幸い、かなり時間が経っていた。
でも、なぜ隠そうとしたのだろう。
「こんな時間に、どうしてここに?」
「なんで車で寝てるの?」
「ずっと探してた。電話も出ないし」
携帯は、電源が切れている。
よかったのか。
これ以上、聞かれないのは。
無表情で先に歩き、
エレベーターのボタンを押す。
一緒に乗る。
何度も私を見る視線を、避ける。
ヒーターで火照っていた頬は、
もう元の色だ。
「……なんで、あそこにいたの?」
短く、口にしてしまった。
「え? 何?」
「ちょっと、おかしいよ」
届かなかったようだ。
母の家へ向かう間、
考えは一つにまとまっていく。
いっそ、
浮気したほうがいいんじゃないか。
軽くなれるかもしれない。
前の自分に、戻れるかもしれない。
ずっと待っていた感覚だ。
計算は、終わった。
母は、
あの頃、なぜ毎日遅かったのか。
確かめてみよう。
[観察メモ]
すべての観察は、
対話を前提にする。
先に渡し、
あとで観察の結果を返す。
思っているより、
日常はずっとドラマチックだ。
決断の瞬間は、続いていく。
記録されると、
見え始める。
※更新は基本的に1日1話ペースです(状況により前後する場合があります)。
続きも読んでいただけたら嬉しいです。
Ennd
by N≠N
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この記録は、連続した観察ログの一部です。
・何も起きていない、ただ観察が始まっただけ|観察ログ 1
・「重なり」何も起きていない、ただ観察が始まっただけ|観察ログ 2
・「目撃」何も起きていない、ただ観察が始まっただけ|観察ログ 3
・「計算」何も起きていない、ただ観察が始まっただけ|観察ログ 4
・「確認 #1」何も起きていない、ただ観察が始まっただけ|観察ログ 5(この記事)