このNMFは主にアミノ酸からできていて、水を取込んで離さない性質があるため、
皮膚を乾燥から守る働きがあるのです。
このNMFとセラミドを含む細胞間脂質の2つによって、皮膚のバリア機能が保たれています。
それでは、このNMFは何からつくられるのでしょうか。
NMFの主成分はアミノ酸なので、タンパク質を分解すれば作ることができます。
肌の中でも実際にタンパク質が分解され、ペプチドを経由することでNMFが作られています。
このタンパク質を「フィラグリン」といいます。
ところが、最近の研究で、一部のアトピー患者にはフィラグリン遺伝子に変異があり、
フィラグリンを肌で作ることができないか、少ししか作られないことがわかりました。
フィラグリンが肌で作られなければ、それを原料とするNMFも作られません。
その結果、肌が乾燥し、バリア機能が低下してしまうのです。
フィラグリン遺伝子異常の治療薬はまだ開発されていませんが、研究は進んでいるようです。
そのような薬ができれば、アトピーの治療法もステロイドなどの対症療法から
根治療法に変わっていく可能性があります。
ただ、フィラグリン遺伝子異常は、アトピー患者全員にあてはまるわけではありません。
フィラグリンを持っていても、皮膚の炎症があれば、ターンオーバーが乱れ、
NMFや細胞間脂質がが作られなくなり、バリア機能が低下します。
いずれにせよ、現時点では、アミノ酸やセラミドの入った保湿化粧品や、
抗炎症力のある薬や保湿剤でスキンケアを行うことが、バリア機能低下を防ぎ、
アトピーの症状を抑えるために大切なことだと思います。