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消えた人 止まる時間

新聞記事より

消えた人 止まる時間

取材の経緯
現在福島第1原発から20㌔圏内は住民に対する退避指示が出されている。ただ国は立ち入り禁止の法的措置は取っておらず、避難後、一時的に家に荷物を取りに帰る住民も少なくない。

今回、共同通信は一時帰宅する双葉町民に同行。検問所などで警察官の指示にも従った。

事前に取材予定地域の放射線量や道路状況、風向きなどの情報を分析、記者らの被ばく防止についても線量計の携行、防護服着用など可能な限りの措置を取った。


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福島原発3㌔の双葉町
飢えた犬さまよう

無人の町の桜は満開だった。飢えた年や犬が、餌を求めて追いすがるように車に寄ってくる。福島第1原発から約3㌔の「原発の地元町」双葉町に14日入り、すべての住民が避難してから1カ月余の光景を見た。(共同通信編集委員 石山永一郎)

原発から40㌔ほど離れた福島県田村市の中心部で、「家の様子を一目見たい」と言う双葉町民の男性を車に乗せて出発。県道を北上、葛尾村から浪江町に入リ、国道114号を南東へと下った。途中、家に一時引き返す双葉町民とみられる一般車両を時折見かけた。


原発から20㌔ほどの地点で、後ろから来たパトカーが「この先の道は非常に危険、注意してください」とマイクで警告していった。その後も警察車両とは何度もすれ違う。

確かに20㌔圏内に入ると、至る所で道路が陥没している。右へ左へ陥没を避けながら進んだ。

双葉町に入ると、石熊地区で、飼い主が牛舎から逃がしたとみられる牛と出会う。こげ茶色の毛並みのやせた牛が20頭ほど畑の上を歩いていた。

街にはなおひっそりととどまっている人がいるとの情報もあるが、人が暮らしている気配はない。何匹もの犬の姿は見た。驚いたのは黒い毛並みの大型の犬が車に走り寄り、ドアを開けると同時に飛び込んできたときだった。見知らぬ犬に車中に飛び込まれたことなど初めてだ。

よほど腹をすかせているのだろう。弁当を与えると、がつがつとむさぼるように食べた。


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予測上回る放射線量

民家の庭の赤い風車がくるくると回っていた。「交通安全」と書かれた旗が南からのやや強い風を受けてはためく。風上は明らかに原発の方角だった。

ここまで計測を続けてきた放射線量は原発から約3.5㌔の双葉町山田付近の車内で毎時80マイクロシーベルトと最高値を記録した。車外なら少なくとも100マイクロシーベルト以上だったろう。事前調査で予測していた数値よりかなり高かった。

これまでに双葉町人りしたフリージャーナリストらからは、3月13日に双葉厚生病院前で毎時干マイクロシーベルト以上を記録した後、双葉町内の放射線量は低下傾向にあり、3月27日には毎時100マイクロシーベルトを超える地点は無かったと聞いていた。放射線量は風など気候条件に大きく左石される。

晴天のこの日、双葉町の最高気温は20度以上あったはずだ。放射線防護のため、ヘルメット、ゴーグル、マスク、厚手のレインコーナなどで全身を覆っていると、たまらなく暑い。全身汗だくになる。これから夏に向け、福島第1原発で必死の作業を続ける人々は、この暑さとも戦うことになることを知った。

「汗ば強くぬぐうんじゃないよ。放射性物質を肌に染み込ませちゃうから。そっとタオルでふくんだ」。原発で数十年働いていたことを車中で打ち明けた同乗の地元男性に教えられた。

町中心部も道路はあちこちが陥没しており、何度か通行不能で引き返した。完全に倒壊した家もあった。海水浴湯がある双葉海浜公園周辺には、津波によるがれきが残っていた。付近の住民に行方不明者がいるため、遺体が埋まっている可能性もあるという。「原子力明るい未来のエネルギー」と書かれたアーケード下の路上には大の死骸があった。

それでも、ほとんどすべてが破壊された三陸地方の風景と比べれば、地震や津波の被害はまだ小さい万だ。だが、ここには、人の姿が全くない。時が止まったような町の姿だった。



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