それでも、助けたかった
新聞記事より
それでも、助けたかった
東日本大震災
東日本大震災で、一人の男性が母子3人を救った後、息を引き取った。
宮城県石巻市の梶原勝推さん(67)。津波の濁流の中、屋根の上に取り残された3人を助けるため飛び込んだ。子どもたちに「強く生きて」と願う妻貞子さん(60)。生きたくて、助けたくて、あの日はみんな必死だった。
母子救出した後 命落とした男性
宮城 迷わず濁流飛び込む
3月11日。「助けて!お願い、助けて!」。流されてきたアパートの屋根の上で、母親と幼い子ども2人が泣きじゃくっていた。
高橋茜さん(翌と長女芽生さん(8)、長男蓮君(4)の3人。自宅2階の窓から屋根に上がったまま200㍍流された。目の前の家に、すがる思いで叫んだ。
距離5㍍。自宅1階が水没し2階に避難していた勝推さんは、物干しざおを手に隣の電柱に上った。さおを伸ばし「これをつたって来い」。
芽生さんがぶら下がったが、すぐに落下。勝推さんは水に飛び込んでつかまえ、貞子さんが引き上げた。
「ここまで泳げ」。電柱にしがみつき叫ぶ勝推さん。茜さんは蓮君を抱いて飛び込んだ。
もがいていた2人を勝推さんがつかむ。蓮君を受け取り「おまえは先に行け」。茜さんはといをつかみ家に入った。
勝雄さんは意識を失いそうだった。だが蓮君のことは強く脇に抱えていた。「お父さん、頑張って」。叫ぶ貞子さん。もうろうとしながら進んできた勝推さんから、茜さんが蓮君をもぎ取る。貞子さんも勝雄さんを家に引きずり込んだ。だが、息はしていなかった。
「無我夢中だったけれど、とても長く感じた」と貞子さん。寒くて眠れず、家にぶつかる華やがれきの音におびえて過ごした夜。翌朝、消防に助けられてから初めて茜さんと自己紹介し合った。
4月10日。4人はがれきだらけの同じ場所で再会した。震災までは顔も名前も知らなかった二つの家族。「助けてくれたおばちゃん」と芽生さん。「おじちゃん、どこ?」。蓮君の無邪気な声。「土の中で眠ってるんだよ」と貞子さんが優しく答えた。
元気に走り回る2人を見つめながら「うちは孫がいないから」と貞子さんが言うと、茜さんは「孫だと思ってください」と笑った。
「どうしてここに流されてきちゃったんだろう」。貞子さんはそう思ったこともある。溶接工として30年以上働き、寡黙でお人よし。因っている人がいたら、見て見ぬふりはできない人だった。そんな天が命を懸けて救った親子。「どうか強くたくましく生きてほしい」と願っている。

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それでも、助けたかった
東日本大震災
東日本大震災で、一人の男性が母子3人を救った後、息を引き取った。
宮城県石巻市の梶原勝推さん(67)。津波の濁流の中、屋根の上に取り残された3人を助けるため飛び込んだ。子どもたちに「強く生きて」と願う妻貞子さん(60)。生きたくて、助けたくて、あの日はみんな必死だった。
母子救出した後 命落とした男性
宮城 迷わず濁流飛び込む
3月11日。「助けて!お願い、助けて!」。流されてきたアパートの屋根の上で、母親と幼い子ども2人が泣きじゃくっていた。
高橋茜さん(翌と長女芽生さん(8)、長男蓮君(4)の3人。自宅2階の窓から屋根に上がったまま200㍍流された。目の前の家に、すがる思いで叫んだ。
距離5㍍。自宅1階が水没し2階に避難していた勝推さんは、物干しざおを手に隣の電柱に上った。さおを伸ばし「これをつたって来い」。
芽生さんがぶら下がったが、すぐに落下。勝推さんは水に飛び込んでつかまえ、貞子さんが引き上げた。
「ここまで泳げ」。電柱にしがみつき叫ぶ勝推さん。茜さんは蓮君を抱いて飛び込んだ。
もがいていた2人を勝推さんがつかむ。蓮君を受け取り「おまえは先に行け」。茜さんはといをつかみ家に入った。
勝雄さんは意識を失いそうだった。だが蓮君のことは強く脇に抱えていた。「お父さん、頑張って」。叫ぶ貞子さん。もうろうとしながら進んできた勝推さんから、茜さんが蓮君をもぎ取る。貞子さんも勝雄さんを家に引きずり込んだ。だが、息はしていなかった。
「無我夢中だったけれど、とても長く感じた」と貞子さん。寒くて眠れず、家にぶつかる華やがれきの音におびえて過ごした夜。翌朝、消防に助けられてから初めて茜さんと自己紹介し合った。
4月10日。4人はがれきだらけの同じ場所で再会した。震災までは顔も名前も知らなかった二つの家族。「助けてくれたおばちゃん」と芽生さん。「おじちゃん、どこ?」。蓮君の無邪気な声。「土の中で眠ってるんだよ」と貞子さんが優しく答えた。
元気に走り回る2人を見つめながら「うちは孫がいないから」と貞子さんが言うと、茜さんは「孫だと思ってください」と笑った。
「どうしてここに流されてきちゃったんだろう」。貞子さんはそう思ったこともある。溶接工として30年以上働き、寡黙でお人よし。因っている人がいたら、見て見ぬふりはできない人だった。そんな天が命を懸けて救った親子。「どうか強くたくましく生きてほしい」と願っている。

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