ひとつ前の当ブログで、『歌え!青春はりきり娘』(1955 杉江敏男監督)を取り上げました。話題を続けます。

美空ひばりさんが演じる「野溝トミ子」は新米のバス車掌(当時は「バスガール」なんて言われていましたね)。「美空ひばり」にソックリだけど、鼻の横に大きな「ほくろ」があるので「美空びばり」という仇名をつけられます。おまけに母親(清川虹子さん)ゆずりのとんでもなく「音痴」。ひばりさんの「リンゴ追分」下手くそヴァージョンが聴けます。

ある日の勤務中のバス内で、父親(藤原釜足さん)に再会します。清川さんと離婚して家を出たものの、女に逃げられた模様です。藤原さんは娘にせめてものと思い、トミ子のポケットにそっと千円札を入れます。ところが、乗務後のの持ち物検査で見つけられ会社に「ネコババ」を疑われてしまいます。父親を会社に連れていき疑いは晴れますが、当時の千円はどのくらいの価値だったのでしょう。

トミ子に乗車券と間違え「映画の半券」を渡す学生(久保明さん)が出てきますが、この「映画の学生料金」が百円。これがきっかけでトミ子と親しくなる久保さんの一日のバイト料が250円。ひとりで暮す藤原さんの家に来るお手伝いさんは一日300円。藤原さんがトミ子にこっそりあげようとした千円はけっこうな金額だったのです。会社に弁明に行った帰り、藤原さんはトミ子に「すき焼き」をご馳走してくれますから、仕事はちゃんとして羽振りはいいようです。

一方、清川さんと子ども二人はオンボロアパートに住んでいます。すぐ横を電車が通るたびに大揺れで会話もできないような部屋です。トミ子は父親と会って帰宅すると、美空びばりのレコードをかけて踊ります。たしか、「いちばん好きな歌」というジャズ・ナンバーだったと思います。浮かれている娘に、清川さんは「お前、あんな父ちゃんの方がいいのかい!」と怒ります。

トミ子と弟は、何とか父母をまた一緒にしようと考え、いろいろ画策します。このとき弟が「社会党だって、あんなにケンカしていたのに合同したしね!」というのが面白いです。この映画が公開されたのは1955年、社会党「左派」と「右派」が合同し、一方「自由党」と「日本民主党」が合同して「自由民主党」となり、いわゆる「55年体制」が確立した年なのでした。

それから70年近く経って、「自由民主党」はすっかり腐りきっていますね。「政治刷新会議」なんて茶番劇をいつまで見せられるのでしょうか。(ジャッピー!編集長)

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