ひとつ前の当ブログで、朝ドラ『ブギウギ』で実在の人物をモデルにした登場人物の役名について書きました。多くは実際の名前を「もじって」つけていますが、「李香蘭」(戦後の山口淑子さん)だけ実際の名前をそのまま使っているので、その「線引き」はどこにあるのだろう?という話です。

ドラマも戦後に入って、笠置シヅ子さんと因縁のある「美空ひばり」さんが登場するのかどうかが興味深いです。笠置シヅ子さんの歌を唄い注目され、「ブギの女王」と呼ばれた笠置シヅ子さんにちなんで?「ブギの豆女王」とか「ベビー笠置シヅ子」と売り出された美空ひばりさんは、戦後の歌謡界を描くには外せませんが、出てくるとしたら、どんなネーミングで出てくるのでしょう。

よく、昔、地方に「偽物」が公演に来て「美空ひぱり」とか「美空びばり」とか、一字だけ変えていたなんてセコイ話も聞かれますが、美空ひばりさんが「美空びばり」を演じた映画があります。『歌え!青春はりきり娘』(1955 杉江敏男監督)です。

この映画で、ひばりさんが演じるのは新米のバス車掌(昔はワンマン・バスではなかったですね)の「野溝トミ子」で、慣れなくてドジばかりで、「次の停留所は”数寄屋橋”です」と言うところを、ちょうど「日劇」にかかっている「美空ひばりショー」の看板に気をとられて「次は日劇・美空ひばりショーでございます」と言ってしまうので、先輩社員たちに笑われます。

そこに上司が来て「それにしても、君は美空ひばりに似ているなあ」と言われます。「でも、ほくろがあるから”美空びばり”だ」と仇名をつけられます。そう、この映画でひばりさんは大きな「ほくろ」を付けているのです。

さらに、「顔がそっくり」だからと、歌を唄えと言われますが、トミ子は「母親ゆずりの音痴」という設定です。なので美空ひばりさんがド下手に歌う「リンゴ追分」が聴けるのです。これはレアです。母親(清川虹子さん)もヒドイ音痴で、アパートで内職しながら歌っていると、トミ子の弟が「勉強できないから止めてくれよ!」と怒るのが笑えます。

それにしても、上司が「美空びばり」と仇名をつけたり、いくら似ているからと言って「歌う」のを強要するのは、今だと「パワハラ」とかコンプライアンス違反ということになってしまうのかな。(ジャッピー!編集長)