何かに無我夢中になるとき努力には勝てません。
無我夢中の境地を経験すると病みつきになります。
自分の魂までも振るわせる高みへ届くまで無我夢中の境地には至りません。マラソンのランナーズハイのように病みつきになります。
わたしの無我夢中の初めての体験が海でした。
海面から海中へ潜っていく。
深く深く潜ってそこで遭遇した海洋生物たちは私を無我夢中の境地へ招待をしてくれました。
人間は海へ潜るときはお客様です。
そこで息吹を放つ生命体のエネルギーの壮大な塊は机の上では何一つ体験できないものばかりでした。
海中で耳へ響く「音」は、唯一無二の音の世界が広がりました。
陸上では拾えない世界でした。
海洋生物たちはデカい奴やちっぽけで恐る恐る近寄って覗いてみた奴。
夜の月あかりに集まる宇宙人みたいな奴たちと、珍獣の集合体への情熱は湧き出る泉のように枯れることを知りませんでした。
しかし自分の年齢と体のつくりへ限界を感じたとき無我夢中に手を止めることをしなければならない時が来ました。
その頃でした。
たまたまでした。
基を構築したのが琉夏と紡いだ「インコの行動観察記録」でした。
しかし私の闘病中の後半の時間の空き時間を記録へ当てたことが功を奏しました。
不思議な行動をする琉夏
へんちくりんな鳴き声をときにする琉夏
理解不能な飛び交いをする琉夏
あほ―というと意味を理解していた琉夏
足音を見分ける賢い脳へ驚かせた琉夏
彼のすべての行動が私を無我夢中の境地への入り口へ招待をしてくれました。
動物カメラマンのデビットパーラー氏は40年近く生き物を撮影して世界を渡り歩きました。
しかしオウムはあまりに身近にいたためにカメラを向けることはなかったそうです。
ーWikipediaから抜粋していますー
彼の心に火を点けたのは「ヤシオウムの道具を使った求愛行動」でした。
撮影のために1日12時間もその巣の前で待ったそうです。そして求愛行動のその瞬間を待ちました。
撮影チャンスは訪れました。
その瞬間でした。
汗が吹き出して、血がたぎって心臓がどきどきして止まらない感動をしたそうです。
わたしもデビット氏と似た体験をイルカの撮影でしたことがありました。
イルカの自分の欲しいアングルと依頼とが合うアングルがとれるまでその場所に現れるまで何日も待ちました。
その時は3週間の待ちぼうけをしました。
イルカは来ました。
その瞬間の感覚は”正に汗が吹き出して血がたぎって心臓がどきどきして止まらない””感動をしました。
それは無我夢中の行動の果てに撮れた最高の一枚の写真でした。
この写真を境に海洋生物へすべての時間を注いでいきました。
幸せで幸せでどんなことをしている時より自分を好きになれたのです。
いまのわたし…
海洋生物から鳥へ移って「恋」をしています。
数日前でした。
鳥について手を動かし始めたのはお昼でした。
一息がつきたくて立ち上がると外は陽が落ちて時計の針は20時でした。ごはんを食べるのも何か飲むのも忘れてただ無我夢中になってめちゃくちゃ幸せでした。
インコの群れのエネルギーは途轍もなく壮大です。
飼う鳥からは受け取れないエネルギーの壮大さに溢れています。
飼い鳥のセキセイと野生のインコの群れは鳴き声は同じです。
インコたちのエネルギーの美しさに触れて幸せなこと。根源の無我夢中の始まりを貰えたこと。それによって無我夢中の境地を再び味わえるようになったことがプレゼントです。
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この一冊
「鳥を識る」鳥の叡智が刻まれています。
たまたま始まりは本屋さんで文学作品を探していて目の前の棚に「鳥を識る」が置かれていて、文学作品そっちのけでこの本をおととし手にしました。そして一冊目は、野付半島の友人が帰郷した折にどハマりして持ち帰って2冊目をまた買いました。