琉夏の好きな人と嫌いな人は黒と白のようにはっきり分かれていました。
好きな人の所へは床をチョコチョコ歩いていくか飛んでいくことが大半でした。
嫌いな人が自宅へ遊びに来るとそっぽを向いて窓の外を眺めていました。
決して近寄ることはありませんでした。
琉夏の基準は正直な人でした。
思いやりのある人。
優しい人。
インコたちは人間たちよりもずっと言葉に乗らない感情に繊細です。だから見透かされてしまうのが心です。
私が「心ここにあらず」で琉夏へ優しく話しかけても寂しそうなとき、自分だけを向いて欲しいときは嘴で、肘をつっいていたり、足の爪を噛んだりしたこともありました。
さらには名前を呼び捨てにして、ムカついていると教えてくれたこともあります。(嬉しいときはチャン付けで呼ぶからです)
私の友人のなかで最高に情熱的で正義感が強くて姉御肌で、賢く、いつもリーダー的な存在の人がいます。
琉夏と彼女は仲良しでした。
初対面の日でした。
彼女の声や姿をリビングの隅から玄関を観察していました。そして、彼女がリビングに足を踏み入れた瞬間でした。
彼女の肩へ一目散に飛んで行きました。
「はじめまして」
「琉夏くんだよね」そんなやりとりをしたようでした。彼女と琉夏はすぐ仲良しになりました。
彼女は、吉田松陰の末裔さんです。
吉田松陰は江戸末期に長州藩で松下村塾を開いた方です。塾生には久坂玄瑞、高杉晋作、伊藤博文、山県有朋、吉田稔麿、入江九一、前原一誠など、明治維新で活躍した偉人たちがいました。
大河ドラマの「花燃ゆ」が懐かしいですね。
彼女の旧姓は小田村さんなのです。
琉夏の友達の旧姓小田村さんは、吉田松蔭が思想家で教育者だった遺伝子をそっくり引き継いで教育者になりました。そして海外大好き人間です。
彼女は私の闘病中にそばで、よく食事を作ってくれた人です。慢性膵炎は料理が難しいです。簡単な料理ならなんでもありでした。
それではつまらないし味気ないと、バラエティ豊かなご飯を作ってくれた人です。
夜中に鈍痛が酷いときは駆けつけて背中をさすってくれました。どんなに夜中でも朝方でも来てくれた人でした。
琉夏が大好きな人たちの共通点は愛情に豊かな人で富んだ人たちでした。
愛っていろんな形があります。
親子の愛
友達の愛
恋人の愛
同僚の愛
愛の形と数だけ愛も色も香りも味もあります。
どんな形の愛であれ鳥たちの心にも通じてしまうものです。
無垢なインコたちだから見透かしますよね。
小田村さんの口癖で「考え事は歩きながらしなさい」という言葉があります。
座って考えても前向きな答えは自分の潜在意識からは飛び出してきません。ヒラメキも的確な答えも確かに歩きながら現れてきます。
琉夏の愛した人たちの基準は真っ直ぐで眩しくていちばん大切なこと。
小田村さんは、世界中の山を制覇する登山家でもあります。世界三大名峰のマッターホルンやネパール の山などを登ったり、世界の国をほぼ制覇しています。