琉夏が天井のあたりを見上げるときがありました。
たいていの場合は人には見えないものを見ていた見えていた私と同じように体感していたときでした。
彼は同志という繋がりのなかでも見えない世界を共感する部分では一番の理解者でした。
わたしを守ってきた守護神がどんな顔をして身なりをして大きさはどれくらいでいつどんな表情に変わるのか翼があるのか鰭があるのかわたしは見たことがありません。
けれど琉夏は間違いなくその存在を目視していました。
冠羽が鋭く威嚇体制に変化したり、くねくね穏やかに眠そうなくつろぎときの冠羽になったり、目視をしたときに雄叫びを上げそうな体制をしたこともありました。
わたしは、ずいぶん前でした。
自分の能力に慣れないとき能力が自分の暮らしを脅かすほど強くて手に負えないときしんどくて疲れ切りました。
琉夏もその時は、疲労したのか意思疎通が可能なインコの能力から把握していました。
わたしが修行をしたアボリジニの原住民はテレパシーを術とします。
絶対に部外者は入れません。
しかしわたしは素晴らしい経験を積む機会に恵まれました。
テレパシーとは、ある人の心の内内容が感覚的手段によらず直接他の人に伝わることです。物理的な時間・空間の制約を超えた能力です。
アボリジニという原住民は、第七感を持つと言い伝えられています。
普通の人間は第五感を持ちます。
視覚、味覚、聴覚、臭覚、接触覚です。
五感で外からの情報を得て生活しています。
第六感は直感や霊を掴む感覚のこと。
第七感がテレパシーです。
道具を使わずに仲間同士で交信したり、翌日の集合場所や集合時間を交信しだだけで可能にする能力です。
インコには心があると言われています。
人の心は鳥たちに通じています。
本来ならインコたちは「視覚情報」と「聴覚情報」を通じて飼い主さんの心と通じ合います。
何を言ってるかより、表情や姿勢や動きを見て、しゃべり方やトーンを見て相手の感情を理解します。
-横浜小鳥の病院院長先生の記事よりー
琉夏の場合は、その理解+ノンバーバルコミュニケーションを大特技としていました。
相手が第七感を持つ飼い主だからです。
彼は見えない世界においても見える世界と同様に完璧な相棒まで成長してくれていました。
いつの間にか、赤ちゃんから、お兄ちゃんになって、いい男に成長していました。
卵2個分くらいの重さしかない掌サイズの命が魅せた奇跡でした。
世の中には奇跡が必要です。
奇妙で美しい奇跡が。
奇跡は人を歓喜させ、輝く瞬間をギフトします。
私はふたりの世界に起きたいくつもの奇跡が宝物です。