川地塾XCキャンプ東日本 4日目 出た!初XCで66km | 見えない翼

見えない翼

私達は誰もが夢に向って翔る“見えない翼”を持っています。しかし、多くの人々が夢を追う事を諦め、翔る事をいつしか忘れて・・・。
そんな世の中にあって、パラグライダーの世界一へ挑戦し続ける父と重度の障害を持ちながらも懸命に生きようとする息子の奮闘日記です。

<お仕事> くもり 時々 晴れ のち くもり のち 雨

予定通り、朝は高層雲が張っていた。

川地の読みでは、日が昇るにつれて、高層雲が薄くなり、

南東方向から低層の雲が押し寄せてくる。

つまり、高層雲と低層雲が入れ替わる。

時間帯にスタートを切るのがベストである。


どうやら、予想よりも1時間程それが早まっている。

それを告げるかのようにダミーがソアリングを始めた。

塾生に出来るだけ早く、離陸して空の上で待つように指示した。


今日の雲底高度も前回同様、1000m前後。

川地もすばやく準備を済ませ、空中で待機をした。

読み通りの時間に雲底に付け、スタートタイミングを計った。



しかし、前日同様、上がってくる塾生は限られている。

それでも、7機~8機が上がってくるのが見えた。

川地は、一足先に燕山に移動し、様子を見ることにしたが、

これが大誤算!!


ドス黒い雲とは裏腹に、全く上昇成分が無い。

高度を上げる事は愚か、維持することも難しい状況だ。

一時撤退を余儀なくされる。


それを見ていた数機の塾生が足尾山で待機し、

上がってきたこの日最高のサーマルをゲット!!

標高1300m以上まで上昇して、燕山に向かった。




川地はセカンドグループを引き連れて、

後を追うために、再び上げ直しを開始した。

風向きは、南東から東、そして、時折北東が入ってきた。

この日の最終便が出る時刻が刻一刻と近づいている。


その後、川地は何度も雲底に付けるが、

上がってくる塾生は、まばらで纏まりが無い。

しかも、上げきったら西方向に走ってよいと伝えているのに、

何故か走ろうとしない。


どうやらもう少し上げてからと欲が出ているようだ。 (ーー;)

しかし、もうこの時点でそれ程上昇するはずが無い。

もう既に、機を逸してしまっているからだ。

後は時間が経つにつれて、XCのチャンスが減っていくだけなのに。




この時、塾生の一人が、意を決してXCに出た。

その高度は、たったの800mである。

しかし、結果は30kmをオーバーし、

宇都宮市のすぐ近くまでXCに成功している。


そして、このタイミングが最終列車であると、

川地は薄々感じていた。


まだ上げ切られずに、頑張っている塾生を待つために、

5分程空中待機をしたが、結局誰も上がって来ず、

仕方なく、XCに出た塾生を追ったが、

もうサーマルはどこにも残されていなかった。

そのまま西側の麓にランディング(着陸)した。


前回の様に、大勢がまとまってXCに出れる時は良いが、

今回の様にバラバラで、全員が二の足を踏んでしまった場合、

川地一人で、全員をカバーすることができない。

もっと、強い意志で全員を引っ張る必要があると痛感した。




さて、最初にXCに出た数名の内、一人が生き残り、

距離を伸ばし、なんと66kmも飛んだ。天晴れである。


彼は国道50号を一度も越えたことが無いXC初心者である。

今日の最高高度が1500mで、

その殆どが単独フライトということ考えると、

100kmを飛んだに値するだろう。


しかし、勘違いしてはいけない。

決してビギナーズ・ラックなどではない。

そんな事を言っている人は、きっと彼の記録を抜けないだろう。

彼がこれまで地道な努力をされてきたことを川地は知っている。

それがあったからこそ、今日の大記録が生まれたのだ。


そう、出るべくして出た記録なのである。

逆に言えば、他の塾生も彼を真似れば、

記録を出すことが可能だろう。




神様は努力をされた人にだけご褒美をくれるのである。

是非、これからのシーズン、

そして、来シーズンに向けて腕を磨いてほしい。