<海外遠征> →
サービスタスク
宿の“オッちゃん”が前夜に
「これから最低でも三日間は天気が良いぞ!」
と言っていた事を真に受けて、
ワクワクしながら寝た川地と上山選手だが、
蓋を開けてみると、何だか雲行きが怪しい。
朝から高層雲が空を覆い、
8時になろうというのに何だか薄暗い。
大会本部の有るコバリドのある谷に降りて行くと
霧が谷底に溜まって雲海になっていた。
「わっ! これは酷い・・・」
これは、とても飛べるようなコンディションではなさそうだ。
テイクオフ(離陸)場に上がれと指示が出るまで、
大会本部でインターネットに接続して、
Blogやメールチェックをしていた。
お昼過ぎ頃から晴れ間が来て、
競技が出来るかもしれないという情報が入ってきた。
俄かに大会本部が慌しくなり、
それに釣られるように選手達も準備を始めた。
テイクオフに上がると以外に良い風が入っている。
ダミーも楽勝でソアリングを始めた。
トルステンに昨日の調整の結果を説明し、意見を求めてみると、
「それでパーフェクトだ!」という答えが返ってきた。
何だか試されたみたい?
準備が終わった頃にブリーフィング(競技説明)が始まった。
今活躍中のValic(ヴァリック)兄弟も参戦している。
その他にも若手ホープの姿も多数居る。
日本国内の競技が今一つの盛り上がりに対して、
ここヨーロッパでは若手の台頭が著しく
世代交代を感じさせる。
しかし、ここに来て古株が待ったをかけてきた。
川地が初めて海外遠征を始めた頃に、第一線で活躍していた
往年の名パイロット達が参加して上位に入賞してきたのだ。
新旧混ざった大混戦状態である。
川地も「久しぶり!!」と声を掛けた。
そうか川地も古株なんだな・・・、と感じてしまった。
競技の方は、
約50kmのメインのリッジを使った『ゴール・レース』だ。
途中に何度かの谷渡りが有るので上げ直しが必要だ。
今日のレースは天気予報が悪くて見た目にもとても渋く、
50kmを飛ぶのは困難と思われたが、
レースが始まると天気が好転して、
119人中116人がゴールするという
サービスタスクになってしまった。
レースの殆どが
「アクセルを踏んで、何ぼのもんじゃ!」といった感じだった。
現にトップは1時間18分というタイムを叩き出した。
川地は約2分遅れの1時間20分で18位(942点)だった。
P.S.
珍事発生!
このタスクで上位25位以内にスイス・パイロットが
誰も入賞しなかったのだ。
これはワールドカップや世界選手権などの
大きな国際大会史上初めてのことだと思う、
クリスミューラー(スイス若手ホープ)にいたっては、
レース中にアクロをしていた。(川地も目撃した)