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シンガポール駐妻図鑑②

3.5年暮らして見えてきた、愛すべき妻たちの生態


3. インターナショナルスクール妻


子どもの教育に熱心。

いや、熱心という言葉では足りない。

子どもの英語習得に、ほぼ人生を賭けている。


インターに入れた瞬間から、母の頭の中には壮大な教育ロードマップが広がる。英語。
探究学習。
多様性。
グローバルマインド。
将来は海外大学も視野。


子どもが外国人のお友達と遊ぶと、心の中で小さくガッツポーズ。

「今日、クラスの子と英語で遊んでたの!」
「発音がもう私よりいいの!」
「プレイデートのお誘いが来たの!」


このあたりの報告には、母の誇りがにじみ出る。


ただし、プレイデートの調整、学校からの英語メール、先生との面談、謎のイベント、謎の持ち物、謎の寄付、謎のドレスコードに日々翻弄される。


“子どもをグローバルに”と思っていたはずが、気づけば母自身が一番グローバル対応を求められている。


そして夜な夜なGoogle翻訳やChatGPTを片手に、学校アプリと格闘する。


子どもの英語力は伸びる。
母の検索力も伸びる。
ついでに胆力も伸びる。


インター妻は、教育熱心であると同時に、システム対応能力の鬼でもある。


苦手なのは保護者会と子供のお友達のお誕生日会。英語でフランクに話すなんて出来ないし、次の休暇にスイスにスキー旅行に行く計画もない。いったい何話せば良いの?


4. 商社駐妻


華がある。なんか綺麗にしている人が多い。

住まいはシンガポールの一等地の高級コンド。

プールはリゾートホテル級。
ジムも充実。
ロビーには謎に良い香りが漂っている。


休みのたびに、モルディブ、バリ、プーケット、ダナン、オーストラリア。

時にはアメリカや欧州まで足を伸ばす。


「せっかくシンガポールにいるから、近場のリゾートに行きやすいよね」

と言うが、その“近場”の感覚がすでにおかしい。


アメリカや欧州は近場ではない。


学校の休み、三連休、夫の出張の合間、飛行機代が高騰する前。

あらゆるタイミングを見逃さず、家族旅行を入れてくる。マイルも十分。

金回りが良く、生活に余裕があるため、全体的に雰囲気もゆったりしている。


ただし、夫はだいたい忙しい。

妻は優雅に見えて、実際にはワンオペ耐性が異常に高い。


高級コンドのプールサイドで涼しげに子どもを見守っているが、その裏では、学校行事、習い事、宿題、旅行手配、家計管理、夫の予定変更対応、日本にいる実家・義実家対応を一人で回している。


見た目はリゾート。
中身は総合商社の海外拠点バックオフィス。

それが商社駐妻である。綺麗なお顔立ちの仮面の中には気の強さが見え隠れ。


実は日本に帰ればバリキャリだったりする。


5. 外資系移住妻


夫は駐在員ではなく、シンガポール現地採用の外資系金融勤務。

駐在家族のような手厚い住宅手当や学費補助がないことに、たびたび不満を漏らす。

「うちは駐在じゃないから、本当に大変で」
「全部自腹だからね」
「駐在の人たちが羨ましい」

と言う。


しかし、雰囲気から推察すると夫の年収は数千万円から一億円超え。

全然大変ではない。

いや、大変なのかもしれないが、こちらが想像していた“大変”とは種類が違う。


外国人の同僚家族たちと川沿いのコンドでBBQ。
週末はワインやシャンパン片手にプールサイド。
子どもはインター。
アクセサリーはブランドもの。
サンダルもエルメス。

「駐在じゃないから守られてないの」

と言いながら、だいぶ強そうである。

むしろ自力で外資系シンガポール生活を成立させているので、たくましさは相当なもの。


駐在妻とはまた違う種類のサバイバル能力を持っている。

そして、ときどき放つ一言が強い。

「日本に戻る予定は、今のところないかな」

この一言に、完全移住組の覚悟がにじむ。


(つづく)