果てしなき迷宮(ダンジョン)13 | 向日葵の宝箱

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まじっく快斗・名探偵コナンの小説を中心に公開しています。
快青大好きですが腐ではないコナンと快斗の組み合わせも大好きです!
よろしくお願いします。

工藤邸を出た後、すぐにコナンは蘭の一番の親友である園子に電話を掛けた。
それから、博士の家や念の為学校にも電話を掛けてみたが、依然蘭は見つからず、手がかりもまったく掴めないままだった。
蘭が良く行くスーパーやお気に入りの雑貨店なども回ってみたが、やはり蘭は見つからず、コナンは一度探偵事務所に戻ろうと思い喫茶ポアロの手前まで歩いてきた。

その時だった。

「そのあたりだぜ。蘭ちゃんがお前に電話を掛けたのは。」
その声にコナンは大きく目を見開き振り返る。
「お前・・・。なんでここに!?しかもその恰好・・・。」
その言葉に、コナンにとってはここにいるはずのない人物。
親友である快斗が、コナンの本来の自分である、工藤新一の姿でポケットに指先を入れたまま口許を上げる。

「携帯会社の通信網にハッキング掛けて調べた。」
快斗はそう言うと、目許を細め表情を険しくする。

「お前に電話を掛けた後、蘭ちゃんの携帯の電波が途切れてる。あのしっかり者の蘭ちゃんが、スマホよりもバッテリーの待機時間が長い携帯の電池切れ起こすような使い方するはずねぇし、電源を自分で切ったとは考えにくい。だとすると、誰かに携帯の電源を切られたか。たまたまそのタイミングで携帯が壊れたか・・・のどちらかだ。」
「ああ。」
応えたコナンが、厳しい顔で眉根を寄せて快斗を見つめる。

「それで、なんでお前がここに?説明してもらおうか。」
そう口にするコナンに快斗はフッと息を吐いて微笑を浮かべる。
その笑みが、良く見慣れた白い影と重なる。

「察しが悪いな。悪いけど、今日は名探偵と呼べないぜ。」
「何!?」
視線を鋭くしたコナンに快斗は息を吐いて応える。

「仕方ねぇから説明してやるよ。まず、どうしてオレが蘭ちゃんの失踪を知ることになったか。それは、新一、お前から連絡を受けた園子ちゃんが青子に電話を掛けてきたからだよ。」
「そっか。園子が彼女に電話を。それでお前が・・・。」
「ああ。」
応えた快斗にコナンが苦笑する。

「本当に、いつも一緒にいるんだな、お前ら。」
少し揶揄するような響きのあるコナンの言葉に快斗が唇を強く引いた。
「ああ。だが、今日は・・・、特別だよ。」
快斗はそう言うと、射る様な鋭い視線でコナンを見据えた。

「お前、オレが送ったやつ、ちゃんと見てないだろう?」
「ああ、修学旅行のあれは・・・。」
言いかけたコナンが懐からスマートフォンを取り出す。
そして片手で持ち画面をスライドさせながら、快斗から送られたメッセージを開いた。
その瞬間、コナンはその写真に目を瞠った。

「なんだ??これ・・・。」
「やっぱり・・・。」
目許を細めると、快斗はコナンに歩み寄りながら言った。

「今海外で話題になっているらしいぜ。ほっぺにキスでテレまくりの女子高生がめちゃめちゃ可愛すぎる・・・って。」
少しだけ笑いながら言った快斗だが、すぐに表情を厳しくする。
「コメント欄、見てみろよ。『Vermouth』ってやつ。『Take care!!』って。お前ならこの意味がわかるんだろ?」

『Vermouth 』
そう快斗が口にした瞬間、コナンの表情が青ざめたのを、快斗は見逃さなかった。
だが、それに関しては何も言わずに、快斗は続ける。

「蘭ちゃんがお前に電話した用件もそれだよ。」
「蘭が・・・必ず連絡しろって言ってたのがこれだってのか?」
「ああ、お前よりよっぽど注意深くて危機管理が出来てる。それをどっかの誰かさんは、人が送った警告をろくに見てねぇし、蘭ちゃんの電話にもその場ででてやりゃいいのに・・・。」
唇を噛みしめる快斗にコナンが顔を伏せる。
そんなコナンの前に、快斗が自分のスマートフォンを差し出した。

「あと、これが最後だ。蘭ちゃんの電波が途切れた時刻、この周辺で撮影されていた防犯カメラの画像を確認した。」
「だからお前なぁ!!!」
「いいから!!黙って聞けよ!!」
出会ってから初めてではないだろうか。
声を大きく荒げた快斗にコナンが目を見開く。

「これ・・・蘭ちゃんが真っ黒い服着た男達に無理やり車に乗せられてる。」
「これは・・・ウォッカ・・・。」
思わず呟いたコナンに快斗が大きく息を吐いた。

「やっぱりそうか。Vermouth 、シェリー、ウォッカ。おまえを狙う組織はみんな酒の名前でコードネームがつけられてるんだな。」
「ああ。」
その言葉にコナンが俯いたまま頷く。

「『Vermouth」は組織の中での名前はベルモット。」
「なるほど。イタリア語の『Vermouth』はお前だけに気づかせるためにわざとハンドルネームをそう名付けたんだ。」
「おそらく。」
応えるとコナンは拳を強く握った。

「死亡説まで流れていた工藤新一をおびき出すための餌として、蘭ちゃんは連れ去られたわけだ。」
「それでお前がオレの姿で現れた理由も合点がいったぜ。」
「やっとかよ。」
快斗はそう言うとフッと息を吐いて微笑を浮かべる。

「なあ・・・、あの時とは逆だな。」
張りつめていた空気を緩めると、コナンに視線を合わせる為、腰を下ろし片膝をついた快斗にコナンは顔を上げた。

「あの時は、青子が攫われて、お前が助けてくれた。」
その言葉にコナンが切なげに目許を細める。
「そんな事もあったな。」
「ああ。」
快斗は応えると、目許を細め視線を鋭くする。

「だとしたら、奴らは必ずお前に接触をはかってくる。たぶんそろそろ・・・。」
スマホの画面を見ながら言いかけた快斗にコナンが横目で視線を向ける。
「お前、何見てるんだよ。」
「これ。ちょっと通信会社のプログラムいじって、蘭ちゃんの携帯の電波が復活したら通知が届くようにしといたんだ。」
「お前って本当に・・・。」
あきれた様に溜息を吐いたコナンがハッと顔を上げる。

「もしかして、お前がこの場所にドンピシャで現れたのも。俺の携帯の電波を通信会社でハッキングして・・・!?」
「そう、だから今日はホント気づくの遅いぜ。探偵。」
そういうと、快斗はコナンの頭に手を置いて立ち上がった。

「たくっ・・・。」
コナンが呟いた。
その時。

コナンの携帯が着信音を鳴らした。

「ビンゴ。」
コナンのスマホのディスプレイにははっきりと『毛利蘭』の文字があった。
それを見て快斗は軽く口許を上げると笑みを浮かべていた。