それから快斗は30分ほどパソコンで作業をすると、フッと息を吐いてディスプレイを見つめたまま目を光らせた。
「見つけた。」
呟いた快斗は立ち上がると、青子に行った。

「青子、そろそろ警部帰ってきたろ?家に送っていくから。」
「うん。でも、快斗は?」
たずねた青子に快斗は目許を細め応える。

「オレは行かなきゃいけないとこがあるから。」
その言葉に青子は唇を強く引いて頷く。

「ちょっと待ってて。」
快斗はそう言うと、クローゼットの扉を開けて着替えを始めた。
青子はソファーに座ったまま着替えをしている快斗をじっと見つめていた。

そして、マントにシルクハット、モノクルを装着して姿見の前に立ち、目の前を見据える様に鏡を見つめた快斗がサッとマントを引くと、再びいつも通りの快斗に早変わりする。
「改めてみると、やっぱり凄いね。一瞬でキッドが快斗になっちゃうんだもん。」
それを聞いて快斗が苦笑を浮かべる。
「まあ、見た目はな。」
応えると、快斗は右手を青子に差し出した。

「『快斗は快斗だよ。』って言われた、あの青子の言葉がいつもオレの中にある。だから最近思うんだ。今のオレはキッドの姿をしていても、やっぱりオレ自身なんだって。」
「快斗・・・。」
呼びかけた青子に快斗は微笑をを返すと、青子の指先を握った。

「青子がオレに大事なコトを教えてくれた。」
そう言うと、快斗は手を引いて、青子に唇を重ねる。

数瞬ののち顔を上げた快斗は、青子をまっすぐ見つめる。
「好きだよ、だから。何があっても。必ず守るから。」
強い決意のこもる言葉に青子は目を見開くと唇を強く引いて深く頷く。

それから、快斗の首の後ろに腕を回し、顔を寄せた。
そして、快斗の唇に口づけをする。

(青・・子・・・。)
声にならない声に、快斗は目を閉じると、青子の腰に腕を回し口づけを深くする。

そうして、わずかながらも、静寂に包まれるふたりだけの時間が過ぎていった。