最近は、読書記録を読書メーターで付けております。先月、そちらに感想を投稿した中から、一部、こちらのブログでもご紹介します。

 

 

細かな事実や近年の学説を丹念に追いながらも、読み物として面白いという奇跡のバランスの本。和歌に目覚めた後鳥羽院の熱、正治初度百首で一晩にして院の評価を得た定家の興奮、和歌所の活気。それらの空気が伝わる文章だ。ところで、遠島に流された上皇といえば、日本三大怨霊の崇徳院のイメージがあるけれど、後鳥羽院の隠岐での暮らしはそれと大きく違ったようだ。寂しいなかにあって矜持や文化を失わず、京とのやり取りもあり、遠島御歌合なる誌上歌合も企画されていた。新古今和歌集の再編を始めたのが、帰京が絶望視された頃なのだなぁ。

 

 


「敗者の日本史」の名の通り、承久の乱に関し、敗者の後鳥羽院の側を中心に描く。一年単位で双方の動向や駆け引きを描く部分がおもしろい。どうしても政子が高らかに演説した印象が強いが、そこには巧妙なすり替えがあったのだ。実朝没後、専横を極める北条氏、その義時を討つというのが後鳥羽院の院宣であったのに対し、鎌倉方は、鎌倉幕府全体への挑戦状だと捉え直すことで、御家人をまとめたのであった。

 

 

 

定常経済や脱成長、ウェルビーイングといったキーワードをちょくちょく見るようになり、長年このスタンスで研究を続けてきたという氏の本を。ロングインタビューをまとめた岩波ブックレット。定常といっても単純な停滞、衰退とは違う。GDPの増大といった「量的な成長」ではなく、資源などの限界を弁えた上で、「質的な発展」のほうに舵を切ることを提言しているのである。考えるべきは、労働生産性よりも資源生産性。こうした面に関しては、日本がパイオニアになれる可能性もある。壁となるのは、再分配や人口抑制、消費抑制への抵抗感である。
 

 

 

前半では、著者のスローライフぶりとその暮らしに至る経緯が語られる。バーの名「たまにはTSUKIでも眺めましょ」の由来となった話は感動的であった。考え方では「ライフスタイル基準金額」「ロングタイム」という話が好きだ。後半はオーガニック志向や政治色が強く、語り口も先鋭化する。文庫版あとがきの「革命の先を生きるダウンシフターは、カネに縛られて足るを知らないヤカラを下から目線でばかにしつつ、彼らが落ちて来た時は、イヤミのひとつでも喰らわしてから、優しく手を差し伸べてあげましょう」に至って、すっと冷めてしまった。

 

 

 

新居に巣箱型の本本交換の場を設置したく、その参考に。◆19-20頁「地域のコミュニティ」の中に「小さなソサエティ(趣味や興味が共有できる仲間)」をたくさん作る◆23頁「本を通じた人の出会い」により、地域社会が無味乾燥なものから、「生きている人の集まり」に見えた時に「コミュニティ」は立ち上がってくる◆179頁 公園や通りなど所有者がいないところにリトル・フリー・ライブラリーを置いて失敗する例も少なくありません。情熱を持った「スチュワード(管理人)」が重要な存在で、その人が毎日世話をすることで成功します。

 

 

 

高野山大学の修士課程で、密教学を学んだ著者による、空海名文集。空海の残した文章の書き下し文と、著者による「超訳」が掲載されているが、超訳ということで、原文と多少、距離があるように思うので、他の解釈にも当たってみる必要がありそうだ。なお、解釈や補足の入った超訳を載せている分、各名言の解説文はないため、なかなかピンと来ないものもある。とはいえ、たくさんの名文に付箋を貼ったので、これをさらに消化、深化するのが楽しみだ。

 

 

 

サイン本を予約していたので、発売日よりも一足お先に。映画にもなった『えんとつ町のプペル』では、ラストで、町を覆っていた煙が消える。空の星が見えるようになる。このことで失業する羽目になった炭坑夫 マルコが主人公である。マルコは醜い手長モンスター。見世物小屋「天才万博」にしか再就職できない。そこでのララとの出会いが、善良だが自信のなかったマルコと、美しく聡明だが父に流されていたララを変えて行くことになる。1度信じた人を信じぬくこと。伝え続けること。それは、遠く離れても。愛を伝える2つの花が美しい。

 

 

 

「失恋して自殺」と言われることもあるが、私は、「覚悟、ーー覚悟ならないこともない」と言った時点で、Kは自殺を決断したのだと考えている。先生達の結婚を知らされた際、しばらく間があるが、あれは本当に「寝耳に水」の驚きだったのではないか。哲学や倫理学を探究してきた割に、唯一の友の恋心にさえ微塵も気付かず、己の想いを相談していた事。その視野の狭さが結果として、「友を裏切り、出し抜く」という行為を親友にさせてしまった事。Kはその点にも絶望したのではないか。今回初めてそう思った。

 

 

 

最後の『こころ』は、主宰しているZOOM読書会「憧れ本読書会」に向けて読み直した本です。

 

この読書会、来週、6月12日(水)10:00~には、田山花袋『蒲団』の回が開催予定です。速い人なら1時間前後で読みきることができる作品だと思いますので、初めての方もご参加お待ちしております!

 

 

 

吉田裕子の読書系の本

 

 

 

 

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