トニー・レオン&ワン・イーボーのスパイ映画『無名』(ネタバレあり) | インド・アラビア雑貨と民族衣装店ジジ!(へナ&ジャグアARTスクール主催)

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こんにちは。

 

今日は、この映画。1940年の上海を舞台にした、スパイ達が主役の映画なんですが、、、

 

正直、物語そのものがよくわからなかった。。。

歴史的な背景(これは自分の不勉強?)と、スパイの構成と、両方共にわかりにくい。

 

主演2人は、アクションもそうでないときも、雰囲気があって凄く良かったんですが。

フィルムノワールといいたくなる気持ちがわかる位、どっちも絵になるんだけど、肝心な、
言葉がとにかく聞き取れない。しかも、日本語の言葉がね。

 

どういうわけか、日本人俳優?の言葉も、中国人俳優の言葉も、全体的にききとりずらくて、

「これって肝心なところなのでは?」ってとこの台詞も、よくわからなくて困ったぞ。

 

あと、場面の説明も、もうちょい最初に欲しい。

何年、っていう表示が大きく出るのはわかりやすくて良いけど、日本て、戦争に入る前の、
日本が中国に進出した時の上海や満州国のこととか、そんなに学校で習ってない気がする。

加害者側だからか、敗戦前後のその辺りの話って、ちょっとタブー視されてたんじゃないの?

 

“関東軍”として?中国の地図を出してるシーンとかあるけど、正直、意味がさっぱり?で。

 

中国人の村人みたいな集団が殺されるシーンの理由も、日本人の若い軍人6人位が殺される

シーンも、場所と意味がよくわからない。中に旧華族が混じってたらしい、その意味は??

何か、政治の部分がよくわからないんですよー。

 

とにかくいろんなシーンの複線の回収みたいなのが、後から後からやってくるんだけど、

そもそも誰が何でその場所でこんな事してるのか?が、さっぱりわからない、というシーンの連続でした。

これ、中国の共産党と台湾の国民党と日本の関東軍のスパイ三つ巴、の話?なの?

日本の傀儡政権=台湾の国民党、ってわけでも無さそうだしな。。

にしても、最初から最後まで日本はずーっと残虐な悪者として描かれて続けており、ひとつも

いいところがなく、まあそれが中国にとって事実でしょうが、トニー・レオンが料亭みたいな席で、

 

「東條派だろうと石原派だろうと、かわらない。日本はみな戦争犯罪人だ。」

 

って、言い捨ててました。

最後に彼は共産党側のスパイだとわかるんだけど、敵として殺し合ったワン・イーボーも、

 

「俺も共産党だ」

 

と言って、反共産党の同僚を殺すので、彼も共産党側のスパイだったというのが最後にわかる。

同僚の中国人は、傀儡日本人のスパイなのか、台湾側のスパイなのかよくわからない。

最後に殺される日本側の軍人のトップが一番ダサくて、「近衛が悪い、近衛が悪い」って。

近衛文麿のことだろうけど、正直、その名が名門で皇族と親戚って事位しか知らん。

ー私が馬鹿なのか?? まあ多分そうなんだろうけど。

 

その後、1945年頃の香港で、それぞれが生活しているような場面に最後うつるんですが、

結局、本土からは逃げてきたってことみたいですね。

(まあ今香港も中国に返還されてからは、めちゃくちゃになってますけど。)

 

歴史を調べたら、1940年~1945年まで、日本軍の占領地に、日本の傀儡政権(汪兆銘政権)
による、中華民国の国民政府が樹立(首都は南京)されてました。

今の台湾の前身といっていいかと思いますが、孫文の思想的な後継者といわれた汪兆銘は、

蒋介石と共に、反共の立場である国民党に当時所属していました。

 

映画の中では、日本軍側と、蒋介石率いる国民党政府との会談の様子が描かれてます。

「一旦、中国から出て行ってくんない?蒋介石の顔をたててさあ。」

みたいな会話が出てきますが、正直、その意味は全然わかんなかったです。

どーもこの辺が私の歴史の弱いとこなんですが、、、

 

このあとの歴史を整理すると、1946年に日本が敗戦、中国からも撤退。

中国は、内戦(国民党VS共産党)に突入。

1949年、蒋介石が台湾に逃亡、『中華民国(台湾)』を樹立。

中国は毛沢東の手で『中華人民共和国』樹立。

 

蒋介石って、中国から台湾に逃げて、国民党の国を作ったのは良く知られていますが、

その後、中国本土は毛沢東による文化大革命でさんざんな有様になって、50年分位衰退。

その一方で台湾は繁栄していったので、1990年代までは本土の方がよほど遅れてましたね。

(文化大革命についての詳細は、ユンチアン著の「ワイルドスワン」がお勧めです。)

 

で、日本は、共産党に賞金をかけられて日本に度々亡命してきていた、孫文びいきだったから、

孫文の弟子だった汪兆銘、蒋介石の流れは、日本からすると理想的な後継者だったのでは?
孫文の奥さんと、蒋介石の奥さんは、姉妹ですしね。

歳は孫文の方が一世代上なので、1925年には亡くなってますけどね。

(この辺は、「宋家の三姉妹」がおすすめ。映画にもなってるけど、原作本が良い。)

(写真の真ん中が長女、向かって右が三女で蒋介石の妻。左が次女で孫文の妻。)
 

孫文と日本のつながりについては、日比谷公園にある炊き出しカレーで有名な『松本楼』

いくと、面白いんですよ。 当時、使ってたものとか展示されています。

孫文は同じく日比谷公園内にあった「中山邸」に滞在していたので、彼は日本では「孫中山」と

名乗りましたが、当時この松本楼にも来ていた関係で、ゆかりの家具が運ばれたそうです。

ここは、現在、創業122年(明治36年日比谷公園と共に創業)です。

 

余談ですが、20年前、私の中国人の友人が日本に帰化する際に、「中山」と姓を定めました。

 

「なんでこの苗字にしたかわかる?」って聞かれて、

「わかってるよ、孫文でしょう?」ってこたえたら、

「さすが!」って言われたのを覚えてます。笑

 

孫文の奥さんと、蒋介石の奥さんは、姉妹で、これは「宋家の3姉妹」という本を読むと

すごく面白いんですが、姉妹は聖書の印刷で巨万の富を築いた父・チャーリー宋氏のお陰で、
中国の子女として始めてのアメリカ留学を果たし、姉妹は皆英語が堪能になりました。

その結果、孫文の通訳の仕事をした次女の慶齢は、後に妻に。

蒋介石は、末子の美齢を妻に。長女の愛齢は、孔子の末裔に嫁ぎました。

 

妻が英語が堪能であることは、政治的にもおおいに役に立ったということでしょうね。

 

というわけで、宋家と孫文、蒋介石までならある程度わかるんですが、国共戦争とか、
その前の日本軍による占領時代となると、歴史の勉強が足らずで、映画みてても背景がねー。

 

しかしそもそも映画って、歴史知らなくてもわかるように伝えなくちゃだと思うのです。

なので、やっぱりこの映画、いまいちだと思いました。脚本が悪いのかな??

 

もう一回みたら、もう少しわかるかもだけど、余り楽しい映画とはいえないので、ネトフリに

おちてきてからもう一回みることにしてみます。

 

でもトニー・レオンとワン・イーボーは、やっぱり良かったです!

つまりファンは必見ですわ。笑