先日、夜、テレビでスタジオジブリのアニメ映画「ハウルの動く城」がやっていました。
ハウルという心の不安定な青年の魔法使いと、魔女から魔法をかけられたために老婆となってしまったソフィーという普通の若い娘さんが、共に力をあわせて困難に立ち向かっていくことで、それぞれのもつ心の問題を少しずつ解消していく物語です。
その中で、こんなエピソードがあります。
ソフィーがハウルの城に入ったとき、中は掃除などが全くなされておらず荒れ放題でした。
だから、ハウルのことが好きなソフィーは、老婆心と若い娘としての愛情などから、城の中を徹底的に掃除します。
その結果、ハウルのバスルームの用具の配置がソフィーによって勝手に変えられてしまいます。、
そしてそのために、元々そこにかけられていた魔法の内容が変わってしまい、シャンプーをしたハウルの髪の毛が、これまでとは全く違う赤茶けた色に変色してしまいます。
これに驚いたハウルは、半べそをかき悲鳴を上げながら、バスルームから飛び出してきて、ソフィーのことを目いっぱい責め立てます。そして今度はひどく沈み込んだかと思うと少しも動かなくなり、あげく、体から緑色のゼリー状の物質を大量に放出します。
一見するだけでも、ハウルという青年の極端な性格が存分に出ていて、おもしろいシーンだし、目立つシーンです。
髪の毛の色が、変わったくらいで何もそんなに怒ったり落ち込んだりしなくても、そりゃ、年頃だし多少は腹が立つかもしれないけれど、また染め直せばいいのだから、と普通は思うから、おもしろいのかなあとおもいます。
でも、もしこの時、ハウルが本当は、正確には髪の毛の色が変わってしまったことに対して怒っていたわけではないとしたら、どうでしょうか。
ハウルには、解決しなければならないもっと別の大きな心の問題があり、それがこの作品を貫く一つのテーマでもありました。
でも、それに対して、恐怖から、正面きってなかなか立ち向かえない心もまたハウルにはありました。
ハウルが本当に怒りたかったかったものは、きっとこの辺りに潜んでいたはずです。
ハウルは、アニメの主人公であり、彼の心と行動は私たちに公開され続けているから、私たちは彼の心を一つの流れの中で追うことが出来ます。
だから注意深く見れば、髪の毛のことでひどく怒ったことは、彼が普段、外に出すことが出来ない大きな怒りがこういう形で噴き出してしまったのかもしれないと気づくことができます。
でも、現実の生活の中では、相手がなぜそれに怒っているのか、本当は何に対して悲しんでいるのか、判断するのはものすごく難しいです。相手の心を一つの流れの中で追うことが通常不可能だからです。
物語の中にいるソフィーも、ハウルがなぜそんなに怒るかについては、理解ができずとまどっていました。
誰の心も追い続けることが出来ない。誰にも心を追い続けてもらえない。
だからこそ、私たちは、時に心がさびしい思いをするのではないのかな、と思いました。