私の好きな小説の中に、少し古い作品ですが、夏目漱石の「こころ」があります。


 高校の教科書などに載っているので、誰もが一度は触れたことがあるものかもしれませんが、

学生時代などを経て、社会に出た後、改めて手にとって読むという機会は少ないかと思われます。


 すべての小説には、登場人物が必ずいます。

その各々に感情があり意思があるため、ぶつかりあったり、とけあったりします。そのような、プロセスが物語を深め、おもしろくさせているんだと思います。

 だから、突き詰めれば、すべての小説が人の心をテーマにしていることになります。


 逆に言えば、小説というからには、人の心をテーマにしているのはむしろ当たり前なのかもしれません。


 では、それにもかかわらず、漱石があえてこの作品に「こころ」というタイトルをつけたのは、なぜなのでしょうか。

 私は、国文学を専攻していたわけではないので、本当のことはわかりません。

 でも、一読者として、感じたのは、漱石は自分の思い通りになかなか行かない自分の心との格闘とその苦しみを、この作品を通じて見せてくれているのかなと思いました。

 

 漱石自身も、ひどい神経衰弱に悩まされて、胃の状態がかなり悪かったようです。


 私は、心が苦しかったとき、この本を読みました。

 何もしたくない状態だったので、少しずつ少しずつ読みました。一日一ページどころか、一日4行くらいの日もありました。

 そして、この本を読み切った後も、少しも元気になりませんでした。


 ただ、読まないよりは、読んでよかったなあとは思いました。


 やらないよりは、やってよかったなあ、という経験。

この積み重ねが、自分の心を立て直し始めくれたのかなあと、最近少し思います。