97. 家族の思い | 憂さ憂さうさぎ

憂さ憂さうさぎ

世の中は憂さだらけ!
はき出す場所のない憂さを、ここで晴らしてみましょうか。

実家に到着したのは、午後7時少し前。

辺りはもう、ほとんど暗くなってしまっている。

家の前に駐車スペースに車を入れていると、玄関のドアが開き父が

笑顔で出迎える。

父 : 「おかえりー。」

自分 : 「うん。ただいま。」

すぐに母も出てきた。

両親は、満面の笑みで自分を迎えてくれる。

母は、夕食の準備中だったようだ。

自分は取り敢えず、持ってきた荷物を整理する。

一息してから、ダイニングのテーブルについて、慣れないテレビのリモコン

をいじりながら、皆で雑談する。

実は、実家の方で放送されているテレビの内容が仙台とは少々異なって

いたり、チャンネルの設定も知らないため、とにかくチャンネルのボタン

を順番に全て押していた。

しかも、自分の家ではまだアナログ放送を見ているのだが、実家ではもう

『地デジ化終わってます。』 という状態。

で、リモコンには 地上A・地上DBSCS 等と、アナログ人間の自分が

普段見慣れない表示が並んでおり、どれが何だかさっぱりわからない

のだ。

傍で様子を窺っていた母が、そんな自分に呆れたのか、何処を押せば

いいのか、結構大雑把に説明する。

正直、自分はどんなものに対しても “いじって覚える” 主義なので、

このリモコンもしばらくいじっているうちに慣れるだろう、とお気楽だ。

新しい電化製品を購入した時は、説明書にほとんど目を通す事なく

いじりはじめ、「ああ、できたできた。」 といった調子の自分。

周りの人間にとっては、ひやひやものなのだそうだ。

自慢じゃないが、それで何か壊した事はないし、大抵それでどうにかなった。

そうこうしているうちに、姉登場。

姉は自分の姿を見つけると、「大変だったね。」 と声をかけながら、

椅子に座っている自分の肩をもんでいる。

『あれ?姉ちゃんに肩もまれるなんて、生まれて初めてじゃないかな。』

自分 : 「そういえばさ、地震当日無事を知らせるメール、したよね。」

姉 : 「ああ~うんうん。」

自分 : 「帰ってきた返事がさ、『わかった、携帯の電池ないからね~』

って一言でさ、つめたいなって思っちゃったよ。」

姉 : 「あー、あれねー。気づいて携帯見たら、もう電池がなくってさ。

こっちも停電だったでしょー。ソーラー発電で携帯充電出来るの

は持ってたから、次の日には充電出来たんだけどねー。」

自分 : 「最近さ、東日本大震災の経験をブログで書いててさ、そこに

『つめたいな』 って書いちゃったよ。」

姉 : 「だからさ、本当に携帯の電池なかったんだって。」

あとは、みんなで笑い飛ばすのみ。

姉は仙台の状況を心配して、原発の事も含めていろいろと落ち着くまでは、

暫くこっちにいたらいいと言ってくれた。

両親も、今回は自分が長期間滞在する事を期待していたようである。

正直、自分もそうしたいのは、やまやまなのだが。