実家に到着したのは、午後7時少し前。
辺りはもう、ほとんど暗くなってしまっている。
家の前に駐車スペースに車を入れていると、玄関のドアが開き父が
笑顔で出迎える。
父 : 「おかえりー。」
自分 : 「うん。ただいま。」
すぐに母も出てきた。
両親は、満面の笑みで自分を迎えてくれる。
母は、夕食の準備中だったようだ。
自分は取り敢えず、持ってきた荷物を整理する。
一息してから、ダイニングのテーブルについて、慣れないテレビのリモコン
をいじりながら、皆で雑談する。
実は、実家の方で放送されているテレビの内容が仙台とは少々異なって
いたり、チャンネルの設定も知らないため、とにかくチャンネルのボタン
を順番に全て押していた。
しかも、自分の家ではまだアナログ放送を見ているのだが、実家ではもう
『地デジ化終わってます。』 という状態。
で、リモコンには 地上A・地上D・BS・CS 等と、アナログ人間の自分が
普段見慣れない表示が並んでおり、どれが何だかさっぱりわからない
のだ。
傍で様子を窺っていた母が、そんな自分に呆れたのか、何処を押せば
いいのか、結構大雑把に説明する。
正直、自分はどんなものに対しても “いじって覚える” 主義なので、
このリモコンもしばらくいじっているうちに慣れるだろう、とお気楽だ。
新しい電化製品を購入した時は、説明書にほとんど目を通す事なく
いじりはじめ、「ああ、できたできた。」 といった調子の自分。
周りの人間にとっては、ひやひやものなのだそうだ。
自慢じゃないが、それで何か壊した事はないし、大抵それでどうにかなった。
そうこうしているうちに、姉登場。
姉は自分の姿を見つけると、「大変だったね。」 と声をかけながら、
椅子に座っている自分の肩をもんでいる。
『あれ?姉ちゃんに肩もまれるなんて、生まれて初めてじゃないかな。』
自分 : 「そういえばさ、地震当日無事を知らせるメール、したよね。」
姉 : 「ああ~うんうん。」
自分 : 「帰ってきた返事がさ、『わかった、携帯の電池ないからね~』
って一言でさ、つめたいなって思っちゃったよ。」
姉 : 「あー、あれねー。気づいて携帯見たら、もう電池がなくってさ。
こっちも停電だったでしょー。ソーラー発電で携帯充電出来るの
は持ってたから、次の日には充電出来たんだけどねー。」
自分 : 「最近さ、東日本大震災の経験をブログで書いててさ、そこに
『つめたいな』 って書いちゃったよ。」
姉 : 「だからさ、本当に携帯の電池なかったんだって。」
あとは、みんなで笑い飛ばすのみ。
姉は仙台の状況を心配して、原発の事も含めていろいろと落ち着くまでは、
暫くこっちにいたらいいと言ってくれた。
両親も、今回は自分が長期間滞在する事を期待していたようである。
正直、自分もそうしたいのは、やまやまなのだが。