ガスの復旧作業が終わって、かなり久しぶりの買い出しへ出る。
最後に買い出しに行ったのはもう2週間以上も昔の事か。
友人と共に車で出発。
まずはガソリンの調達だ。
すっからかんのタンクに2000円分のガソリンを補充したのが、もう
3週間も昔の事。
そろそろ一般車両にも満足にガソリンを入れられるだろう。
思った通り、大通りに面したガソリンスタンドはみな開店していた。
自分が見た4、5か所のガソリンスタンドのうち、1箇所は緊急車両のみ
となっていたが。
その他のガソリンスタンドでは、行列をつくることも無く普通にガソリンを
入れられるのだ。
勿論、自分の車もガソリン満タンにする。
これでしばらくは安心だ。
しかしタンクにガソリンを入れて安心を得る代わりに、財布の中からは
現金が流出し心細くなる。しかもこの時期ガソリンは高い。
『複雑だな。』
次の目的地、イオンスーパーセンターへ到着。
今日は並ぶ必要がない。
店を出入りしている客達はみな、震災前と同じような一般的な服装。
表情にも余裕が感じられる。
自分はまだ、震災仕様の格好のままで、少々恥ずかしくなる。
自分が数週間、家の中にほぼ閉じこもりっぱなしだった間に、世の中は
こんなにも変化していたのか。
店内に入ると地震前の風景と大差ない。入口付近にあるパン屋も今日は
やっていた。
野菜、肉、加工食品、要冷蔵の物もある。
“選ぶ” には十分ではないのかもしれないが、物はあるのだ。
“棚に物がある” という光景に、涙が出そうだった。
“いつ物が手に入るのかわからない” という不安な状況から解放された
という安心感。
選択肢が少々少ないとはいえ、とにかく物はそこにある。
以前は当たり前とばかりに目の前に広がっていたこんな光景が、こんなに
も恵まれた事だったのだ。
自分は、はしゃぐ子供のように、欲しかった物を物色して歩く。
いつも、“当たり前” と気にも留めずにいた事が本当はとても恵まれた
幸せな事だったのだと、改めて考えるのだった。