とうとう自分達が入店する番。一人一つの買い物かごが手渡される。
この店内に、何が残っているのか。
沢山の人に商品が行き渡るようにとの配慮で、一人10品までということ
にはなっているが、時間も時間だしあまり期待できないかも知れないと、
不安を抱えながら店内を物色する。
米とパンは無いと言っていた。棚の間を巡ると、干麵の類は皆無・・・いや
日本そばが一袋ぽつんと棚に。あとは、うどんもそうめんも無い。
勿論スパゲティーもない。
粉類のコーナーからは、小麦粉もホットケーキミックスも姿を消していた。
即席の袋ラーメンも無い。牛乳もない。冷蔵コーナーはガラ空き。
棚という棚から物が消えていた。
何故か、カップラーメンが山積みのコーナー。
見るとそれは、 “ぺヤングソース焼そば” と “一平ちゃん”
一平ちゃんは、醤油・味噌・とんこつ 三種類もある。しかも大量に。
一人10品という決まりがあるため、本当は5食入りの即席袋ラーメンが
欲しかったのだが、無い物は無いのだ。贅沢は言っていられない。
今はカップラーメンに縋ろう。
幸い、卵が沢山積んであった。3パック入手。
豆乳とコーンフレークがあれば、コマーシャルのようなおしゃれな朝食
を再現出来るだろう。まあ、腹が満たされるか否かは別の話だが。
菓子類はかなり残っていた。
ファミリーサイズの大きな袋は消えていたが。
友人の提案で、“腹にたまるお菓子” という名のバームクーヘンを
購入する。
『そうだ!米がもらえるのだから、炊きこみご飯の素があれば、食事の
バリエーションが増えるぞ。』
見に行くと、“松茸ご飯の素” 以外はもうほとんど残っていない。
値段を見て納得。松茸風味は他の約1.5倍だ。
とにかく残り少ない炊き込みご飯の素は、2つ手に入った。
会計。ああ、予定外の出費。お金に羽根が生えて飛んでいく。
『さようならぁ。また会いたいねぇー。』
こんな時だからこそ、商品の値段など気にしている余裕はないのだ。
多少高くても、これを買わなければ食べ物が無いのだから。
しかしこんな状況下でも、“ お金 ” がものをいうなんて。
全く悲しい世の中になり下がったものだな。
被災し食糧に困っても、お金が無ければ物が手に入らない。
お金が無かったら、避難所へ行って
“ 自宅難民なのに避難所に頼るなんて ”
という目を向けられながら、炊き出しを頂くしかないわけだ。
実際、避難所の炊き出しをもらいに行った自宅難民が、
「お宅は電気が復旧しているでしょ。炊飯器使えるんでしょ。」
と窘められたという話があるくらいである。
財布から離れて行く紙幣を見ながら思う事。
ああ、こんな世の中に誰がした?????