スーパーの隣の八百屋も店の前に商品を出していたので、友人と
交互に偵察に行く。
八百屋では抱き合わせ販売をしていた。
数種類の野菜や果物を白い袋につめて、“一袋〇〇円” という
形式で売っているのである。
しかし、ライフラインが何一つ復旧していない自分のマンションに
おいて、そんな危険な冒険をするわけにはいかない。
「リンゴとバナナだけ売ってもらえないだろうか?」
と聞いてみたが、もう袋につめてあるので無理だと言われた。
仕方なく友人の所へ戻る。
さてスーパーでは買い物の説明が始まった。内容は昨日とほぼ同じ。
今日も一人10品まで。商品の並べ方も昨日と同様で、スーパーの前に
商品の入った買い物かごや段ボールが並んでいた。
しかし、昨日より種類は多い気がする。
まず豆乳を手に取った。豆乳は賞味期限も長く、常温で保存出来るので、
この場合便利なのだ。手書きのシールで200円。
今日スーパーが始まった時には、18ロール入りのトイレットペーパーが
いくつかあったはずなのだが、自分が商品を選ぶ順番になった時には
すでに見当たらなかった。
店の人に聞くと、「すみません、もうないんです。」と言われる。
『確かにここにはないけどな。』
店の出入り口からは、時々発掘されたと思われる商品が運びだされてくる。
今運び出されているのは、ちょっと上質そうな箱ティッシュ。
という事は、今発掘をしている場所が紙類の辺りということだ。
ならばそのうち、トイレットペーパーも姿を現す可能性がある。
そう考えて、少しばかりその場をうろうろしていたら、・・・当りだ。
18ロール入りのトイレットペーパーがいくつか出てきた。
手書きのシールで500円と表示されたそれを受け取る。
店員の言葉で諦めなくてよかった。
その後、“シーチキン” や “リッツのような菓子数個” “2リットルのお茶”
等を選び会計を済ませた。
購入出来たものは昨日より良い気がする。
既にスーパー前の通りは長蛇の列で、最後尾が見えない。
知らないうちにこんなに並んでいたのか。
行列の横を、それに逆行しながら帰る途中の事。
列の中から一人の女性が駆け寄ってきた。
「すみません、そのトイレットペーパー何処で売っていたんですか?」
「これは、そこのスーパーで売っていました。」
と答えながら、ふと考える。
先ほどのスーパーの状況と女性が今並んでいる位置。
『トイレットペーパー、この人までまわらなそうだな。』
そして言った。
自分:「もう無いかもしれません。少しくらいなら分けられますよ。」
女性:「でも、そちらも必要でしょう?」
自分:「2,3個くらい大丈夫です。」
女性:「小銭、130円くらいならあるんですけど。」
トイレットペーパーのビニールを破り、女性が手にしていた買い物袋に
3ロール入れながら、自分は少し考えた。
・・・ 18ロールで500円 ・・・。
そして考えるのが、ふとめんどくさくなった。
自分:「お金はいいです。」
女性:「じゃあせめて100円だけでも。」
自分:「それじゃあ、4つあげますよ。」
そんなやり取りの最中に、横を通りかかった老婦人が話しかける。
「そのトイレットペーパー何処で売ってたの?」
何故か自分はその老婦人に好感が持てなくて、
「ああ、そこのスーパーですよ。」と答えて終わりにしてしまった。
老婦人の聞き方が、“トイレットペーパーをもらえるかも” という期待
を含んでいるような気がしてしまったのだ。
老婦人は 「あ、そう。」 と言い去って行った。
トイレットペーパーを4つ受け取り、自分に100円を渡した女性は、礼を
言って頭を下げると、もとの列に戻って行った。
ちょっとひどい奴かな自分・・・。