40. わからない事の恐怖 | 憂さ憂さうさぎ

憂さ憂さうさぎ

世の中は憂さだらけ!
はき出す場所のない憂さを、ここで晴らしてみましょうか。

昼近くになったら、きょうもまたお弁当屋へ行ってみようか。

まだほとんど片付いていない家の中、椅子に腰かけ二人でぽつりぽつり

と雑談をしている最中だった。

通りで男性が何か叫んでいる。大声で何か叫びながら走っている感じだ。

何事かと、友人が窓を開けてみると、

「みんな建物の中に入って!今すぐ建物に入って!」

と叫んでいるのだ。

友人は急ぎ窓を閉めて、こちらへ来る。

「一体何事だ?」 「何があったんだ?」

何故建物に入らなければいけないのか理由がわからず、不安だけが

膨らんでいく。

“地震の後、一番最初に降る雨にはあたらないように”

というのは聞いた事がある。

それは、化学薬品を扱っている工場等で火災が発生していた場合、有害

物質が空気中に混ざって、雨とともに地上に落ちてくるからだという。

確かに今日は、夕方頃から雨が降る可能性があるようだが、それにしては

緊迫感が大きすぎるのではないか?

とにかく、今何が起きているのか。

この地区では、このマンション以外は電気が復旧しているから、テレビ等

で情報を得る事が出来るだろう。

しかし自分達には今、ラジオすら無い。

頼む、誰か教えてくれ。今何がおきているのか。

不安は恐怖へと変貌していく。

こんな時人間は、とにかく悪い事ばかり想像してしまう生き物らしい。

友人が家族へ電話して、何が起きているのか聞いていた。

それでも詳しい事はわからないが、とにかく原発がどうとか言っている。

自分も携帯でインターネットに接続してみる。繋がった。

目を通して行くと、福島の原発で問題が起きたらしいのだ。

詳しい状況は解らない。自分がどうするべきなのかもわからない。

どこでどうしていればいいのか。不安と恐怖が心を乱し気が立っていく。

携帯の情報や友人の家族からの情報によると、福島の原発で水素爆発

があったようで。しかも、今に始まった事ではないようだ。

『なぁんだ、今更焦ってみたって、もう遅いんじゃないか。』

ほんの少しの絶望感と共に脱力する。

あとはただ座ったまま、窓の外の景色を眺めていた。