36. 炊き出し待ち | 憂さ憂さうさぎ

憂さ憂さうさぎ

世の中は憂さだらけ!
はき出す場所のない憂さを、ここで晴らしてみましょうか。

朝早いうちに目が覚めた。友人は眠っている。

思いの他床の固さが身体に伝わったらしく、腰や肩の骨が少々痛い。

ここ数日いつも着ている上着を今日もまた着る。友人はまだ寝ている。

『おーい。そろそろおきろー。』

昨日から常連となったヒップバッグを装着。

さっきまでくるまっていた布団の上にボスッと座り、友人を起こす。

友人が着替えている間、ボーっと座って待っていた。

着替え終わると、適当に布団を片付け、炊き出しへ出発。


避難所へ到着すると、炊き出しはまだ始まっていなかったが、人は

並んでいた。自分達もそろって並ぶ。

自分達の前に並んでいたご老人が話しかけてきた。

“ご老人”と言ってもまだしゃきっとした感じで、ここで “老人” という言葉

を使うのを迷うほどである。その方は80歳を過ぎているそうだが、とても

そんな感じには見えなかった。


そのご老人は、昔病院に勤めていた頃の事、その頃大きな地震にあった

時の事、この地域が昔はどんな感じだったのか等、いろいろな話をして

くれた。その目は昔を懐かしむようで。

途中、そのご老人の知り合いらしい男性が声をかけた。

その男性は、「大きな余震がくる可能性が高いから、まだまだ気をつけた

方がいいよ。」等といった話をしている。

自分達も一緒になって話を聞いていた。

話をしながら待っていると、炊き出しが始まった。

その日は、会釈をしてご老人とわかれた。


その日の炊き出しにも、豆腐が沢山入っていた。始めておにぎりももらう。

いつものように乾燥わかめを多めに入れて、少しでも腹を膨らませる。

全体的に量は少ないが、それでもないよりはずっと良い。

水飲み場で軽く器を洗い、まだ満たされない腹を抱えて、家へ戻る事に

する。