34. 電気の行方 | 憂さ憂さうさぎ

憂さ憂さうさぎ

世の中は憂さだらけ!
はき出す場所のない憂さを、ここで晴らしてみましょうか。

家に戻る道すがら、周りの家に電気がついている事に気づく。

今日から電気が使えるのかと、少々期待しながらマンションに到着。

一階の管理人室前には10人近い住人が集まっていた。

その理由を聞いてみると、この地域の電気は復旧したらしく、周りの

建物は全て電気がついているのに、このマンションだけまだなのだ

そうで。その訳は “管理人の不在”

このマンションの管理人は青葉区の市街地に住んでいるらしい。

今日は日曜で休日。

そのため、このマンションの現状況は管理人にはわからないのだ。

集まった住人達は何とか電気を復旧させようと、操作盤の扉を開けて

いる。今にもいじりそうな勢いだ。

正直、素人が操作盤をいじるのも怖いと思うが。

管理人や管理会社へ電話をかけている人達もいるが、つかまらない。

『ああ、今日は電気を諦めた方がいいな。』

部屋へ戻った。目下の課題は今日の寝場所。

この二日間で、車で寝るのは厳しいという事を思い知った。

ならば、ここで寝るしかない。

そうと決まれば、まずは明かりを用意しよう。

蝋燭はたくさんある。ここで誤解のないように、一応言っておく。

キャンプ用や、有事の時用にと買っておいたものだ。

家にあるステンレスボールの中で一番おおきなものに2cm程水を

張り、蝋燭立ごと中央へ置く。

これなら倒れても大丈夫だろう。

温かな色合いの明かりがほんのりと部屋を染める。

「たった一本の蝋燭でも、こんなに明るいんだな。」

今更ながらに蝋燭の明るさを感じた。

窓に目を向けると、周囲の家々の窓は電気の明かりで満ちている。

通りには街灯の光が連なる。

電気が復旧した街の中にあって、唯一電気のないこのマンション。

その一室に住む自分は、普段なら感じられない事を感じる事が

出来た。

今電気の明かりの下にいる人達は、はたしてこの数日の間に、同じ

事を感じた事があっただろうか。

その一方で思う事。

いくら休日だからといって、こんな状況の時に管理人にも管理会社

にも連絡すらとれないというのは、如何なものか。

マンションの管理人は、そのマンションの住人が適任だと思うので

あった。