ガソリンを入れて時間を見ると、もう炊き出しの時間だった。
車で避難所へ行き自分だけ降りる。手には二人分の器と乾燥わかめが
入ったコンビニ袋。
友人は駐車場に車を止めてから避難所へ来る事にする。
一人で炊き出しのコーナーへ行くと、昨日の食材調達係の男性が声を
かけてきた。「きのうは、ありがとうね。」
自分は 「いえいえ。」 と言いながら会釈をし、食糧をもらいに行く。
目の前には、バナナと1/4くらいの大きさに切られたリンゴ。
汁物しか頭になかった自分は、両手に器を一つずつ持っていてそれを
つかめない状態。あせる。
すると後ろから、先ほどの男性と思われる人物が来て、腕にかけていた
コンビニ袋にバナナとリンゴを入れてくれた。助かった。
汁物が入った器を両手に友人を待つ。
友人は飲み水用のペットボトルを手にやってきた。
今日も人気の少ない場所に腰かけ、器に乾燥わかめを追加する。
器の中には野菜の他、キノコや白滝それに肉の姿も見える。
『昨日より具の種類が増えたな』
と喜びつつ、『昨日、肉はダメとか言ってなかったか?』
とも思ってみたり。
食べ終えて、避難所横の水飲み場へ飲み水をもらいに行く。
友人が飲み水を汲んでいる間に、自分は発見してしまった。
美味しそうな饅頭を。
さっき炊き出しをもらいに来た時には、無かったはずの饅頭。
饅頭でいっぱいのばんじゅうが沢山積まれている。
よくみると、近所の和菓子屋のものだ。
・・・食べたい ・・・ 我慢するべきか ・・・ でもやっぱり食べたい。
一時は諦めてその場を去ろうとした。しかし・・・。
やっぱり食べたい!どうしても食べたい!
饅頭がとんでもない御馳走に思える。これを逃したら、いつまた饅頭に
ありつけるというのか!?
結局自分は貰いに行った。二人分。こっそりと、饅頭のコーナーにだけ。
係の人に、「バナナもらいましたか?」 と尋ねられたが、今の自分には
饅頭さえあればいい。バナナはさっきもらったのだ。
向こうから、水を汲み終えた友人が歩いてくる。
饅頭片手に満面の笑みで歩み寄る自分を見て、友人は大受けだ。
笑われたっていい。自分には饅頭がある。
賞味期限は今日。それを言い訳に、すぐに頬張る。
久しぶりの美味い和菓子。なんか幸せだ。