28. 眠れない夜は明けて | 憂さ憂さうさぎ

憂さ憂さうさぎ

世の中は憂さだらけ!
はき出す場所のない憂さを、ここで晴らしてみましょうか。

とうとう朝になった。

結局今日も眠れずに朝を迎えてしまった。片頭痛でイラつく。

早朝なら電話も繋がるかもしれないと、気を取り直し実家に電話を

かけてみる。数回の呼び出し音の後、この電話で起こされた母の声。

自分の声を聞くとほっとしたのか、母の声が明るくなったように感じた。

一応メールで無事は知らせていたけれど、やっぱり心配していたのだろう。

元気な声でここ数日の愚痴をこぼす自分に、母は笑いながら返事をする。

たった一本の電話でも、それで互いに安心出来る。

電話をして良かったと、つくづく思うのだった。

家に戻る途中避難所へよって、朝の炊き出しの有無を確認。

今朝は無いとの事だった。お菓子でも食べてしのぐしかないだろう。

地震後の決まり ”車から部屋へ行く時は、必ず水を運ぶ”

二人は、重いバケツやポリタンクを手に階段を上る。

到底慣れることなど出来そうにはないが、少しはダイエットにでもなる

だろうか。身体は鍛えられるのか。一応前向きに考えたふり。

たまに、マンションの住人とすれ違う。脇へよけて道を譲るが、

その度に下に置いたバケツを再度持つのが嫌になる。

あと何日これが続くのか。

やっと部屋へ到着。

昼近くになったら、またお弁当屋さんに行ってみよう。また何か美味しい物

が手に入るかも知れない。

それまでかなり時間があったため、睡眠のとれていない自分は、ベッドで

横になる事にした。

普段使っていた毛布関係は、車の中にまるめて放置していた。

そのため、押入れから別の毛布を出してきて、ベッドの上に丸まった。

『夜と違って明るいから、地震が起きても逃げやすいだろう』

というささやかな安心感に包まれながら、久しぶりにベッドの感触を堪能。

自分でも気付かないうちに、意識はどこかへいっていた。

意識が浮上し、ぼんやりと目を開ける。目の前には友人の後頭部。

自分が眠った後、結局友人も寝る事にしたようだ。

『車じゃ、やっぱり熟睡は無理だからな。』

起きてがさごそやり始めた自分に気づき、友人が目をさます。

「結局あんたも寝てたのか。」

という自分に

「寝ちゃいけなかったのか?」 と友人がふざけながら嘆いてみせる。

「いや、別にいいけどな。」

低血圧の二人は、寝起きでぬぼーっとしたままだ。

さて今から何をしようか・・・そうそう、お弁当屋さんだ。

ぼけぼけの二人は、自分の頭と同様な空のバケツとポリタンクを手に、

階段を下りて行った。