24. 温かいうちに | 憂さ憂さうさぎ

憂さ憂さうさぎ

世の中は憂さだらけ!
はき出す場所のない憂さを、ここで晴らしてみましょうか。

車へ戻って、早速昼食。

温かいうちに食べようという事で意見が一致し、一パックづつ手にとる。

何とも言えない温かな重み。

蓋を開けると、思い切り吸い込みたくなるデミグラスソースの香り。

目を釘付けにする、色と照り。やばい、やられそうだ。

今の状況で目の前の御馳走をオアズケされたら、転げまわってしまう。

間髪いれずに 『いただきます!』

口に入れると、何とも言えないデミグラスソースの味と香りに全身染まる。

『ああ、こんな時にこんなに美味い物を食べているなんて、どれだけ

贅沢なんだ!自分!』


一気に食べ終わりソースまで飲み干す。至福の時間は終わりだ。

名残惜しいが、もうない物はない。


ふと思う。『あそこのお弁当屋さん、まだガスコンロ使えるんだよな。』

自分の家の冷蔵庫には、買ったばかりで手つかずの食材があった。

このまま、ガスも電気も水道も使えない状態で、それらを腐らせる

くらいなら、ガスコンロのある人に提供した方がいい。

そう思い立ち、再度お弁当屋へ。


お弁当屋さんのおくさんに訳を話すと、自分達と同じような事を考えて

いたようで。

お弁当屋さんには業務用冷蔵庫が何台かあり、その中は食材で

いっぱいなのだそうだ。電気の来ない冷蔵庫で腐らせるくらいならと、

炊き出しに使ってほしい旨を避難所へ伝えに行ったそうだ。

しかし、断られたのだという。

そこでおくさんも含め、いろいろ話した結果、自分達が避難所へ話を

しに行く事となった。


これからしばらくの間は、自分達も避難所の炊き出しを利用する事に

なりそうだし。協力出来る事があるのなら協力したい。


避難所へ行く途中、お弁当屋さんのすぐ近くで行列を見た。

行列の先には焼き鳥屋さん。

『ああそうか、焼き鳥は炭火で焼くからな。』

もしこの人達が、お弁当屋さんが開いていた事に気付いていたなら、

自分達はあんな時間を過ごせなかったかも知れない。


この状況下にあって、自分達は何と幸運なのだろう。

心の中で様々なものに感謝する。