23. ゆるーい弱肉強食 | 憂さ憂さうさぎ

憂さ憂さうさぎ

世の中は憂さだらけ!
はき出す場所のない憂さを、ここで晴らしてみましょうか。

三人の目はベンチの上の煮込みハンバーグへ移る。

煮込みハンバーグは一つ。一瞬の沈黙。

たまらず、お弁当屋のおくさんに声をかける。

「すみません。煮込みハンバーグってこれだけですか?」

すると店の奥から「もっとできるよ。今作ってるから。」 と先ほどのおじさんが

顔を出した。

「いくつくらい出来ますか?」と訊く。とりあえず七つ出来るそうで、ほっとする。

とりあえずベンチの上の一つをもらおうとすると、

「今温かいの出してあげるから、ちょっと待ってて。」 と声をかけられた。


おくさんが、「煮込みハンバーグいくつ?」 と尋ねる。

こちらは二つ欲しいのだが、後ろに並ぶ女の子はいくつ必要なのだろうか。

振り返って尋ねると、彼女は

「私の事は気にせずに、必要なだけどうぞどうぞ。」 と言いながら、手で

”どうぞ” という動きをしてみせる。

「でも、それでは・・・。」とこちらが迷っていると、「弱肉強食ですから。」 と

彼女は笑って言った。

『なんとも、ゆるーい感じの ”弱肉強食” だな』 と心の中で笑ってしまう。

それではと、ハンバーグ二つ注文する。


煮込みハンバーグが出来るのを待ちながら、少しだけ雑談。

彼女の口調や雰囲気から、しっかりした印象を受ける。

顔の中で、見えるのは目だけ。

そこから想像すると、結構美人さんのようだ。


煮込みハンバーグが袋に入れられて出てきた。

良心的な金額の代金を払って袋を受け取ると、袋の中にはお惣菜のパックも

一つサービスされていた。かなり嬉しい。


自分と友人は、温かい ” 煮込みハンバーグ ” を手に、この弱肉強食と

いう言葉とはかけ離れた空間から離れて行った。