22. 新聞の中の現実 | 憂さ憂さうさぎ

憂さ憂さうさぎ

世の中は憂さだらけ!
はき出す場所のない憂さを、ここで晴らしてみましょうか。

お弁当屋の入口にはベンチが置いてあり、その上には即席味噌汁とお惣菜、

それにソースのたっぷりかかった煮込みハンバーグが1つ。

カセットコンロを使って、とにかく作る事が可能な分だけ作る事にしたのだ

そうだ。

その食欲をそそる姿に目をくぎ付けにされる。ちょうど昼時。食べたい。

買う気満々の二人。


まずは新聞を見せてもらおうと友人が言い、店の奥へ声をかける。

顔をのぞかせたおじさんに、

「すみません、新聞見せて頂きたいんですけど。」

と友人が言うと、おじさんは快く新聞を持ってきてくれた。


折りたたまれた新聞を広げ、目に飛び込んできた写真に言葉が出ない。

地震の前までは、人間の生活を守るために存在していたはずのものが、

様々な状態で水面を埋め尽くしていた。

その印象が強すぎて、他に視線が移らない。

目は写真を映したままで、頭の中では昨夜携帯で見た、

”宮城県仙台市若林区荒浜の海岸で200~300人の多数の水死体発見”

という内容が姿を現す。

一応、写真の周囲を埋める文字に目を通し、他の面も見ようとするものの、

その内容は、自分の脳には残れなかった。

新聞を一緒に見ていた友人も、怖い顔をしながら新聞上で視線を走らせ

ている。

一通り新聞を見終わって、元通り折りたたんだ。

言葉も少なく会話の形式にはならない。

今この時も、悪い状況が次々と人間達の前に姿を晒していることだろう。

そこへ、若い女の子が一人やってくる。手には折りたたまれた段ボール。

マスクをしているため、顔は目の部分しかわからない。

避難所でボランティアをしているそうで、腕には腕章代わりのガムテープが

貼られていた。たまたま通りかかったようだ。


自分の手にある新聞を見つけると、「新聞見せてもらえますか?」という。

どうぞと言い、お弁当屋のおじさんから借りた新聞を差し出した。

しかし、大きめの段ボールで片手がふさがっていては、新聞が見づらい

だろうと思いなおし、新聞紙を彼女の前に広げて見せた。


彼女は食い入るように紙面を見つめ、気になる地域の情報を探していた。

一通り見終わった表情は硬い。


その新聞の中に、心が救われるような内容は何一つ見い出せなかった。