夜は冷える。こんな日の夜は尚更だ。
少し前、町会長の挨拶があった。それによると、この避難所には現在
1,000人程の地域の住民が避難しているそうだ。ぎゅうぎゅう詰めなのも
うなづける。
この避難所へ来た始めの頃、すぐ横で男性がペット用のキャリーバッグ
に手を入れて、中にいる猫をなでていた。
あの時は、狭いキャリーバッグの中でじっとなでられている猫を見て
少しばかり顔がほころんだ。
どこかで、かすかに犬の鳴く声がする。
人々のざわめきの中で、超音波のような子供の叫び声が聞こえる。
混雑する避難所の中で、人々の間を縫うように駆け回る子供達がいる。
母親の膝に頭を預け、毛布にくるまって横たわる子供がいる。
何時間も、車椅子に座ったままじっと目をとじている人がいる。
家族と思われる人に手をひかれ、ゆっくりとした足取りでトイレへ向かう
人がいる。
体調の悪そうな家族を気遣い奔走する男性がいる。
少しして、拡声器から聞こえてきたのは、ペットを避難所へ連れてきて
いる人達へのお願いだった。
「犬や猫などペットを連れてきている方は、申し訳ありませんが外に
ペットを置いて下さい。かなり込み合っているのに加え、衛生的な問題
もありますので。」という内容。
確かにこれほど長時間ともなると、ペットも ”うんち” や ”おしっこ”
はするだろう。
普段一緒に暮らしている人達はにとっては、ペットの匂いもペットの排泄
物の匂いも、気にならないものなのかもしれないが、その周囲にいる
人達にとっては、はたしてどうだろうか?
勿論、ペットの排泄物処理用のシート等対策はしていると思うが。
全ての人間が動物好きとは限らない。
全ての人間が子供好きとは限らない。
全ての人間が親切とは限らない。
長時間ぎゅうぎゅう詰めの避難所で辛い状態のまま過ごし、心身ともに
疲れがたまってきている人間の目に、平常時は可愛いと思えるはずの
存在がどのように映るのだろうか。
避難所という所は、様々な人々が集まる場所なのである。