13. 十人十色 | 憂さ憂さうさぎ

憂さ憂さうさぎ

世の中は憂さだらけ!
はき出す場所のない憂さを、ここで晴らしてみましょうか。

夜は冷える。こんな日の夜は尚更だ。

少し前、町会長の挨拶があった。それによると、この避難所には現在

1,000人程の地域の住民が避難しているそうだ。ぎゅうぎゅう詰めなのも

うなづける。


この避難所へ来た始めの頃、すぐ横で男性がペット用のキャリーバッグ

に手を入れて、中にいる猫をなでていた。

あの時は、狭いキャリーバッグの中でじっとなでられている猫を見て

少しばかり顔がほころんだ。


どこかで、かすかに犬の鳴く声がする。

人々のざわめきの中で、超音波のような子供の叫び声が聞こえる。

混雑する避難所の中で、人々の間を縫うように駆け回る子供達がいる。

母親の膝に頭を預け、毛布にくるまって横たわる子供がいる。

何時間も、車椅子に座ったままじっと目をとじている人がいる。

家族と思われる人に手をひかれ、ゆっくりとした足取りでトイレへ向かう

人がいる。

体調の悪そうな家族を気遣い奔走する男性がいる。


少しして、拡声器から聞こえてきたのは、ペットを避難所へ連れてきて

いる人達へのお願いだった。

「犬や猫などペットを連れてきている方は、申し訳ありませんが外に

ペットを置いて下さい。かなり込み合っているのに加え、衛生的な問題

もありますので。」という内容。

確かにこれほど長時間ともなると、ペットも ”うんち” や ”おしっこ”

はするだろう。

普段一緒に暮らしている人達はにとっては、ペットの匂いもペットの排泄

物の匂いも、気にならないものなのかもしれないが、その周囲にいる

人達にとっては、はたしてどうだろうか?

勿論、ペットの排泄物処理用のシート等対策はしていると思うが。


全ての人間が動物好きとは限らない。

全ての人間が子供好きとは限らない。

全ての人間が親切とは限らない。

長時間ぎゅうぎゅう詰めの避難所で辛い状態のまま過ごし、心身ともに

疲れがたまってきている人間の目に、平常時は可愛いと思えるはずの

存在がどのように映るのだろうか。


避難所という所は、様々な人々が集まる場所なのである。