「これから、どうなるのかな。」 隣で友人がつぶやく。
「どうにかなるよ。」友人の膝を叩きながら言ってみた。実は何も考えていない。
「その、根拠のない自信はどこからくるんだい?」友人は苦笑している。
「だって、絶対どうにかなるもん。」
「さすが、O型だな。」友人は笑いながら言うと、力強く続けた。
「どうにか”する”だろ。」
さしあたり、今の自分にとって一番の問題は、固い床のせいでじっと座っていら
れない程痛む尻。何度も微妙に体制を変えてはみるものの、そろそろ限界だ。
そんな自分に気付いた友人が 「少し散歩でもしてきたら?」 と言った。
名案だ。
「じゃあ、ちょっと外の空気でも吸ってくる。」と言って立ち上がると、軽く自分の
尻を叩き、周囲にいる人達の懐中電灯の薄明かりをたよりに足の踏み場を探し
ながら、やっとのことで体育館の出入り口へ辿り着く。
外へ出ると、数人の男性が発電機を準備している最中だった。
自分はゆっくり歩きながら、避難所から離れていく。
真っ暗な建造物の群れ。勿論街頭も含めて、明かりは何もない・・・と思ったら
一つだけ明るい建物があった。
消防署だ。
今頃きっと、そこの消防署の人を含め、沢山の人達が自分の想像も出来ない
ような厳しい現場で、休む間もなく大変な作業をしているのだろう。
感心と感謝が含まれた何とも表現出来ない気分だ。
そういえばさっき友人が、「星がすごくはっきり見えるよ。」って言っていたっけ。
上に視線を移すと、漆黒の生地に大小の星々がくっきりと浮かび上がり、探さ
なくてもオリオン座が目に入る。
正直、”どうにかする” を言える友人がうらやましいと思う。
自分の場合、”どうにかする” 自信はまだない。
今までいろいろと辛いことも逃げたくなる事もあったが、今自分がこうしている
ということは、全てがとりあえずはどうにかなったからなのだ。
数年後の自分はきっと、こんな空の下のどこかで
『ほら、やっぱりどうにかなったっじゃん。』
などと考えているのだろうな。