10. 悪い状況? | 憂さ憂さうさぎ

憂さ憂さうさぎ

世の中は憂さだらけ!
はき出す場所のない憂さを、ここで晴らしてみましょうか。

もうすっかり日が落ちて、避難所の中では沢山の懐中電灯の光が踊っていた。

そのおかげで真っ暗になることはない。

もう、足の踏み場にもないほどに、体育館の床は人々で埋め尽くされていた。

かなり人が集まってしまってから、通路として青いビニールシートを床に

貼ったために、最低限の通り道が確保しきれなかったのか。


石油ストーブがいくつか配置されたが、まだ強い余震が続いているため危険

ということで、すぐには火が点けられなかった。

体育館の気温が下がるのを少しでも防ぐためにと、全ての窓に暗幕が張られ

ていく。


避難所の手伝いをしていた友人が戻ってきた。教えてもらった状況は

悪いことばかり。


友人: 「若林区役所のところまで津波がきたそうだよ。」


若林区役所といえば、自分の家からたったの 1 kmくらいのはず。

そんな所まで津波がきていたなんて・・・。一気に津波の事が身近になる。

あと少し海側に住んでいたら、自分はどんな事になっていたのだろう。

考えたくもない。


友人: 「本部には、真新しい無線機があるんだけど、使い方がわからなくて

     困ってた。」


 ・・・ コメントする気になれないな。


友人: 「指揮系統がしっかりしていないようで、作業する人達の動きが

     バラバラ。統率とれてない感じ。人は十分いるんだけど、次に

     何をするのかもわからない状態だから、とりあえず戻ってきた。」


 ノーコメント


この先、この避難所はどのようにして運営していくのだろうか。





【補足】

   海岸線  ~  若林区役所  約 8 km

    〃    ~    自宅     約 8.5 km

                ( 1:100,000地図を使用し測定 )


このブログを書くにあたり、自分なりにこの地域の浸水範囲について調べ

ました。

『若林区役所まで津波がきた』 という内容の裏付けとなる資料は見つける

事が出来ず、『若林区役所まで津波がきたというのはデマだ』 という趣旨

のものも見受けられました。

デマだという内容で書かれた方の根拠は、

    昔仙台市に住んでいたが、海岸からの距離的に考えて 云々

    区役所より海に近い学校が避難所になっている  云々

というものでした。


まず、国土地理院のホームページに掲載されている浸水範囲概況図です。

冒頭に以下の文章が記載されています。


概要:この浸水範囲概況図は、平成23年3月12、13、19、4月1、5日に国土

    地理院が撮影した空中写真及び3月19日に観測された衛星画像を

    使用して、津波により浸水した範囲を判読した結果をとりまとめたも

    のです。浸水のあった地域でも把握できていない部分があります。

    また、雲等により浸水範囲が十分に判読できていないところもあり

    ます。今後、引き続き精査していく予定です。

この内容を踏まえたうえで下にリンクしてある図を御覧ください。


http://www.gsi.go.jp/common/000060133.pdf


若林区役所の周辺は赤で着色されていません。

しかし、上記の文章でわかるとおりこの図が100%ということではありません。


地震の次の日に、以前から時々お世話になっている美容院で働いている

女の子二人連れに偶然会いました。

彼女達は、「車で若林区役所のところを見てきたが、水がきたせいで

ぐじゃぐじゃだった。」と話していました。


又、『水は低きに流れる』という言葉もあるように、一概に海岸線からの距離

で浸水地域が決まるわけではありません。標高が低い地域があれば、そちら

に向かって水は流れて行くものではないでしょうか。


現場を見た人間の話を聞くこともなく、裏付けとなる資料を見て検討したわけ

でもない。そのような状態でデマと決めるのは少々軽率ではないでしょうか?


自分自身が、若林区役所の現地をこの目で確認した訳ではないので、

『絶対に若林区役所は浸水した』 という言葉を言う事はできないのですが・・・。