もうすっかり日が落ちて、避難所の中では沢山の懐中電灯の光が踊っていた。
そのおかげで真っ暗になることはない。
もう、足の踏み場にもないほどに、体育館の床は人々で埋め尽くされていた。
かなり人が集まってしまってから、通路として青いビニールシートを床に
貼ったために、最低限の通り道が確保しきれなかったのか。
石油ストーブがいくつか配置されたが、まだ強い余震が続いているため危険
ということで、すぐには火が点けられなかった。
体育館の気温が下がるのを少しでも防ぐためにと、全ての窓に暗幕が張られ
ていく。
避難所の手伝いをしていた友人が戻ってきた。教えてもらった状況は
悪いことばかり。
友人: 「若林区役所のところまで津波がきたそうだよ。」
若林区役所といえば、自分の家からたったの 1 kmくらいのはず。
そんな所まで津波がきていたなんて・・・。一気に津波の事が身近になる。
あと少し海側に住んでいたら、自分はどんな事になっていたのだろう。
考えたくもない。
友人: 「本部には、真新しい無線機があるんだけど、使い方がわからなくて
困ってた。」
・・・ コメントする気になれないな。
友人: 「指揮系統がしっかりしていないようで、作業する人達の動きが
バラバラ。統率とれてない感じ。人は十分いるんだけど、次に
何をするのかもわからない状態だから、とりあえず戻ってきた。」
ノーコメント
この先、この避難所はどのようにして運営していくのだろうか。
【補足】
海岸線 ~ 若林区役所 約 8 km
〃 ~ 自宅 約 8.5 km
( 1:100,000地図を使用し測定 )
このブログを書くにあたり、自分なりにこの地域の浸水範囲について調べ
ました。
『若林区役所まで津波がきた』 という内容の裏付けとなる資料は見つける
事が出来ず、『若林区役所まで津波がきたというのはデマだ』 という趣旨
のものも見受けられました。
デマだという内容で書かれた方の根拠は、
昔仙台市に住んでいたが、海岸からの距離的に考えて 云々
区役所より海に近い学校が避難所になっている 云々
というものでした。
まず、国土地理院のホームページに掲載されている浸水範囲概況図です。
冒頭に以下の文章が記載されています。
概要:この浸水範囲概況図は、平成23年3月12、13、19、4月1、5日に国土
地理院が撮影した空中写真及び3月19日に観測された衛星画像を
使用して、津波により浸水した範囲を判読した結果をとりまとめたも
のです。浸水のあった地域でも把握できていない部分があります。
また、雲等により浸水範囲が十分に判読できていないところもあり
ます。今後、引き続き精査していく予定です。
この内容を踏まえたうえで下にリンクしてある図を御覧ください。
http://www.gsi.go.jp/common/000060133.pdf
若林区役所の周辺は赤で着色されていません。
しかし、上記の文章でわかるとおりこの図が100%ということではありません。
地震の次の日に、以前から時々お世話になっている美容院で働いている
女の子二人連れに偶然会いました。
彼女達は、「車で若林区役所のところを見てきたが、水がきたせいで
ぐじゃぐじゃだった。」と話していました。
又、『水は低きに流れる』という言葉もあるように、一概に海岸線からの距離
で浸水地域が決まるわけではありません。標高が低い地域があれば、そちら
に向かって水は流れて行くものではないでしょうか。
現場を見た人間の話を聞くこともなく、裏付けとなる資料を見て検討したわけ
でもない。そのような状態でデマと決めるのは少々軽率ではないでしょうか?
自分自身が、若林区役所の現地をこの目で確認した訳ではないので、
『絶対に若林区役所は浸水した』 という言葉を言う事はできないのですが・・・。