竜王戦 | カタギリノエンレイソウ広報

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みなさん、将棋を指したことはありますか?将棋の対局を観戦することに興味はありますか?一度は指してみたけど相手にボロ負けしたという方も、連戦連勝するほど実力のある方も、このページをお読みください。


竜王戦
竜王戦は、読売新聞が主催している将棋のタイトル棋戦であり、名人戦に次いで2番目に長い歴史を持っているといわれています。というのは、昭和23年(1948)創設の全日本選手権戦 (名人九段戦と九段戦からなり、名人九段戦は昭和30年まで行われていた)が起源であり、昭和37年に十段戦に改称された後、昭和62年に十段戦が発展解消される形で竜王戦が成立した経緯があるからです。竜王戦の七番勝負の勝者が得る竜王の称号は、名人とともに将棋界の頂点とされています。名称の由来は、駒の「竜王」(飛車の成駒)。

竜王戦になってからはタイトル戦の中で最も高い賞金を誇るようになり、優勝賞金は4400万円、敗者賞金でさえ1650万円と、普通のサラリーマンがどんなに懸命に働いても1年では稼ぎきれない金額になっています (令和2年現在。賞金や対局料は何度も変更されている)。
1組から6組に分かれたトーナメント (竜王ランキング戦)、本戦トーナメント、および、竜王戦七番勝負で構成されています。毎年11月末頃から竜王ランキング戦が始まり、翌年夏に本戦トーナメントが行われて8~9月頃に挑戦者が決まり、竜王戦七番勝負が10月から12月頃にかけて行われる流れとなっています。

初代竜王は島朗、令和6年5月現在の竜王は藤井聡太


竜王と名人の序列関係
竜王戦は、棋戦としては名人戦よりも上位に位置し、優勝賞金が全タイトル棋戦中最高額となっていますが、名人位は他のタイトルと比べ圧倒的に歴史が長く権威があり、竜王位との序列をつけにくいと考えられるため、将棋界における「竜王」及び「名人」の称号は同格とされ、竜王在位者と名人在位者はタイトル保持数を第一優先、棋士番号を第二優先として序列付けされます (第一優先では多くのタイトルを保持する棋士が上位、第二優先では早くに棋士入り(四段昇段)をした棋士が上位)。そのため、一人が竜王と名人のタイトルを保持しているとき (その場合の称号は「竜王・名人」となる)以外には、名人が上位となるケースと、竜王が上位となるケースがあります。
なお、竜王および名人は将棋界の代表として、アマチュア段位の免状への署名等、対局以外の多くの業務を課せられるそうです。

かつては竜王が七番勝負において負けて失冠し、かつ他のタイトルに在位していない場合において、「前竜王」の称号を1年間称することができる制度が存在していました。「前竜王」呼称者は、次期竜王戦の七番勝負が終了するまで、タイトル保持者に次ぐ序列の地位におかれました (ただし、前竜王の称号を辞退して段位で呼称されることも可能)。しかし、称号として「前竜王」を名乗る者が20年以上現れない状態が続いたため、名人戦で敗れて名人を失冠した場合に称する「前名人」ともども、令和2年(2020)に「前竜王」の称号は廃止となりました。


永世竜王
竜王位を5期連続で獲得し、又は通算7期獲得を達成した棋士には、永世竜王の称号が授与されます (就位は原則引退後)。平成20年12月に渡辺明が、平成29年12月に羽生善治が永世竜王の資格を獲得しました。

方式
独自のランキング戦と本戦 (挑戦者決定トーナメント)によって挑戦者 (本戦優勝者)を決定し、そこで決定された挑戦者は竜王と七番勝負を行うことになります。ランキング戦に関しては、6つのクラスがあり、各々トーナメント戦によって本戦出場者を決定します。1組と2組では決勝進出者の2名が本戦に出場し (勝者が1位、敗者が2位)、3組~6組ではランキング戦優勝者が本戦に出場します。また、2組~6組では決勝進出者が1つ上のクラスに昇級します。
さらに、準決勝までに敗れた者は、1組では追加の本戦出場者3名を決める出場者決定戦に、2組~6組では追加の昇級者2名を決める昇級者決定戦に出場し、そこで勝ち抜いた1組の棋士 (3位、4位、5位)は本戦に出場し、2組~6組の棋士 (各組2名)は1つ上のクラスに昇級します。また、1組~3組では、1つ下のクラスに降級する降級者もそこで決まります。4組と5組では、1つ下のクラスに降級する降級者を決める残留決定戦も行われます。




1組~5組の各クラスは定員制となっており、竜王1名を除いて、1組~3組では原則16名、4組と5組は原則32名となっています。新棋士は原則6組からの出場となっている他、6組のランキング戦には女流棋士やアマチュア、奨励会員も参加します。各クラスの内訳は以下のとおりとなっています。

1組
原則として16人によるトーナメント戦です。竜王戦七番勝負の敗者・1組残留者・2組からの昇級者によって行われます。
1組決勝進出者2名は挑戦者決定トーナメントの出場権を得ます。
準決勝までに敗れた棋士は出場者決定戦にまわります。出場者決定戦を勝ち抜いた3名 (3位・4位・5位)は決勝トーナメントの出場権を得ます。
出場者決定戦は、準決勝の敗者の2名が対決する3位決定戦、二回戦の敗者4名のトーナメントである4位決定戦、一回戦の敗者8名 (原則)のトーナメントである5位決定戦があり、5位決定戦の一回戦で敗れた者は2組に降級します。


2組
原則として16人によるトーナメント戦です。1組からの降級者・2組残留者・3組からの昇級者によって行われます。
2組決勝進出者2名は挑戦者決定トーナメントの出場権を得ます。
準決勝までに敗れた棋士は昇級者決定戦にまわります。決勝進出者2名と、昇級者決定戦の優勝者2名の計4名が1組に昇級できます。
2組ランキング戦の一回戦で敗れ、昇級者決定戦の一回戦で敗れた者は3組に降級します。


3組
原則として16人によるトーナメント戦です。2組からの降級者・3組残留者・4組からの昇級者によって行われます。
3組の優勝者は挑戦者決定トーナメントの出場権を得ます。
準決勝までに敗れた棋士は昇級者決定戦にまわります。決勝進出者2名と、昇級者決定戦の優勝者2名の計4名が2組に昇級できます。
3組ランキング戦の一回戦で敗れ、昇級者決定戦の一回戦で敗れた者は4組に降級します。


4組
原則として32人によるトーナメント戦です。3組からの降級者・4組残留者・5組からの昇級者によって行われます。
4組の優勝者は挑戦者決定トーナメントの出場権を得ます。
準決勝までに敗れた棋士は昇級者決定戦にまわります。決勝進出者2名と、昇級者決定戦の優勝者2名の計4名が3組に昇級できます。
4組ランキング戦の一回戦で敗れ、昇級者決定戦の一回戦で敗れた者は残留決定戦にまわり、そこで敗れた場合は5組に降級します。


5組
原則として32人によるトーナメント戦です。4組からの降級者・5組残留者・6組からの昇級者によって行われます。
5組の優勝者は挑戦者決定トーナメントの出場権を得ます。
準決勝までに敗れた棋士は昇級者決定戦にまわります。決勝進出者2名と、昇級者決定戦の優勝者2名の計4名が4組に昇級できます。
5組ランキング戦の一回戦で敗れ、昇級者決定戦の一回戦で敗れた者は残留決定戦にまわり、そこで敗れた場合は6組に降級します。


6組
1組~5組のいずれにも該当しない棋士はすべてここに所属します。5組からの降級者・6組残留者・新棋士の他、女流棋士4名・奨励会員1名・アマチュア選手4名もこのトーナメントに参加します。
6組の優勝者は挑戦者決定トーナメントの出場権を得ます。
準決勝までに敗れた棋士は昇級者決定戦にまわります。決勝進出者2名と、昇級者決定戦の優勝者2名の計4名が5組に昇級できます。

女流棋士・奨励会員・アマチュア選手は原則6組での出場となりますが、そこで昇級に該当する成績を修めれば次は5組での出場となります。ただし、女流棋士・奨励会員・アマチュア選手の場合、
昇級者決定戦には出場できませんので、昇級条件はランキング戦決勝進出のみとなっています。竜王戦に出場するアマチュア選手は、アマチュア竜王戦の本戦ベスト4以上の4名 (第33期までは全国支部将棋対抗戦・個人戦からも1名が出場していた)で、竜王戦に出場する奨励会員は三段リーグ在籍者からの1名 (年度前半の三段リーグ出場者のうち、四段昇段に至らなかった成績上位者が出場)となっています。また、竜王戦に出場する女流棋士は主催者推薦により決定されます。

挑戦者決定トーナメントには、1組から5名、2組から2名、3組~6組からは各1名が出場し、ランキング戦の組と順位により、位置があらかじめ定められたトーナメントを行います。同じ組でも順位が高いほど、また、同じ順位でも上の組ほど有利なトーナメント戦となっています。挑戦者決定戦 (本戦決勝)は三番勝負で、そこで2勝すれば竜王に挑戦となります。また、2組以下の棋士が竜王挑戦となった場合、その棋士は1組に昇級となります。
挑戦手合いは七番勝負で、本戦トーナメントを勝ち抜いた1名が竜王と対局します。そこで4勝した棋士は竜王の称号を獲得します。敗者は次期竜王戦の1組在籍となります。

ランキング戦及び挑戦者決定トーナメントでの持ち時間は各5時間、残留決定戦では各3時間。七番勝負は1局2日制で、持ち時間は各8時間となっています。


ランキング戦に関する補足

竜王戦の在籍クラスの昇級・降級は1段階ずつが原則であるところ、竜王挑戦となった場合には、たとえ3組以下のクラスに在籍していたとしても、次期の在籍クラスは1組となります。その場合、次期の竜王戦では、竜王挑戦者が在籍していた組の1つ上の組で欠員が発生し、七番勝負の敗者が在籍する1組で(棋士の引退などがない限り)定員超過が発生することになります。竜王戦1組在籍者が17名となった場合、2組への降級者は5名に増え、順次必要な組まで降級者を増やして対処することとなります (その場合、2組や3組でも残留決定戦が行われる)。また、棋士の引退などで5組以上のクラスに欠員が発生した場合にあっては、6組から順次必要な組まで昇級枠を増やし、5人目の昇級者は原則として昇級者決定戦決勝の敗者同士の対局によって決定することとなっています (ただし、欠員が2名以上発生しても昇級枠は1年につき各組1名ずつしか増えないため、2期以上連続して欠員が残る場合がある)。

竜王戦の歴史
昭和62年(1987)に、それまでの十段戦を発展解消する形で、竜王戦が発足しました。前身の十段戦では勝ち残りトーナメント形式の予選と挑戦者決定のためのリーグ戦 (十段戦リーグ)が行われていましたが、竜王戦では予選 (ランキング戦)も本戦 (挑戦者決定トーナメント)もトーナメント形式で行われます。

第1期竜王戦は昭和62年12月~昭和63年11月の期間に行われ、最後の十段である高橋道雄 (十段・棋王)が本戦準決勝に、永世十段の資格者2名 (中原誠、大山康晴)が準々決勝にシードされ、他の棋士は以下の順序に従って在籍クラスが振り分けられました。
  1. 最後から二番目・三番目の十段獲得者 (福崎文吾、米長邦雄)
  2. その他のタイトル保持者
  3. その他の順位戦在籍棋士 (第46期順位戦における在籍クラスと順位に従う)
  4. 順位戦に在籍しない棋士
  5. 新棋士

このとき、1組棋士は14名、2組と3組は各16名、4組と5組は各32名とされ、残りは全員6組に入り、1組からは4名、2組と3組からは各2名、4組~6組からは各1名が本戦トーナメントに進出しました。2つの準決勝は三番勝負、決勝戦は七番勝負で行われ、優勝者が初代竜王となりました。

第2期(平成元年)からは、1組の定員は原則16名とされ、挑戦者決定トーナメントには1組から4名、2組と3組から各2名、4組~6組から各1名が出場し、その優勝者が竜王に挑戦する挑戦手合制となりました。挑戦手合いは七番勝負、挑戦者決定戦は三番勝負で行われます。
挑戦者トーナメント進出枠は、第18期(平成17年)までは1組から4名 (決勝進出者2名及び出場者決定戦を勝ち抜いた2名)、3組から2名 (決勝進出者)となっていましたが、第19期(平成18年)からは現行の方式 (3組からはランキング戦優勝者のみが出場、1組からは決勝進出者を含む5名が出場)に改められました。
挑戦者決定トーナメントは、第18期(平成17年)までは組ごとに挑戦者決定戦進出までに必要な勝数が定められ、1組と2組は順位に関係なく2勝、3組と4組は同じく3勝、5組と6組の各優勝者は4勝となっていましたが、第19期(平成18年)からは現行の方式 (1組優勝者は1勝だけで挑戦者決定戦に進出となるが、1組の5位出場者及び2組の準優勝者は3勝、4組優勝者は4勝、5組と6組の各優勝者は5勝しなければ挑戦者決定戦に進出できない)に改められました。
昇級枠と降級枠は、第18期(平成17年)までは2組~4組の各3名と5組・6組の各4名が昇級、1組~3組の各3名と4組・5組の各4名が降級 (欠員が生じた場合は降級者を減らして対応)となっていましたが、第19期(平成18年)からは2組以下各4名昇級・5組以上各4名降級 (1組~5組の在籍人数に過不足が生じた場合は昇級者又は降級者を増やして対応)の方式に改められました。なお、2組以下のクラスからの竜王挑戦者が1組に昇級する規定は第1期当初から存在していました。


竜王戦に関する昇段規定
竜王戦の成績に関する昇段規定は以下のようになっています。いずれも、条件を満たした日付での昇段となります。
・六段以下の棋士が、竜王戦の在籍クラスに関して2期連続で昇級となった場合は、1つ昇段する。ただし、過去に在籍歴がない組への初昇級に限る。
・六段以下の棋士が、竜王ランキング戦優勝を3回達成したときは、1つ昇段する。
・五段以下の棋士が、竜王戦3組から竜王戦2組に昇級となった場合には、六段に昇段する。
・六段以下の棋士が竜王挑戦となった場合や、六段の棋士が竜王戦2組から竜王戦1組に昇級となった場合には、七段に昇段する。
・七段の棋士が、竜王を獲得したときは、八段に昇段する。
・八段の棋士が、竜王獲得を通算2期達成したときは、九段に昇段する。
・名人戦以外のタイトル棋戦において、タイトル獲得を合計3回達成した八段の棋士は、九段に昇段する。 [2回目のタイトル獲得で八段に昇段する規定がなかった平成30年5月以前においては、七段のまま3回目のタイトル獲得を達成しても、八段への昇段の要件を満たすまでの間は昇段せず、九段昇段はおあずけであった]

竜王戦に関する昇段の中でも、竜王戦2組昇級に伴う六段への昇段や、竜王挑戦に伴う七段への昇段については、
途中の段位を飛ばして昇段することが可能となっています。すなわち、竜王戦3組在籍の四段の棋士が3組ランキング戦を勝ち抜いて決勝進出を決め、又は3組の昇級者決定戦を勝ち抜いて昇級となった場合には、2組昇級を決めた当該の時点で六段となり、竜王戦4組以下在籍の棋士が竜王挑戦を決めた場合には、たとえその棋士の段位が四段や五段であったとしても、その時点で七段に昇段となります。
竜王戦の2組昇級や1組昇級の他、2期連続の昇級や竜王ランキング戦3回優勝によっても昇段することができます (ただし、降級直後の連続昇級は除く)。このとき、四段の棋士は五段に、五段の棋士は六段に、六段の棋士は七段に、それぞれ昇段します。前回昇段後1年以内でも条件を満たした時点で昇段となるので、勝数で五段又は六段に昇段して間もないうちに竜王戦連続昇級を達成して1年で2回昇段となった実例も多いようです。


(最終更新日:2024年5月17日)