5.自民党の改正草案

 

まずは、改正草案の策定のスタートを考えてみたいと思います。

 

 

自民党の改正草案は、どんな趣旨で作られたのでしょうか。

少なくとも、日本国憲法の真の欠陥を、真剣に考えているようには思えません。

 

真面目に日本国憲法の欠陥を見直すなら、1条毎に欠陥有無と欠陥内容を洗い出し、それを野党と詰めていくはずです。

現行法で違憲の疑いを持たれる法律があるのか、あるいは、憲法が理由で立法が難しい具体的な案件があるのか、過去を含めた憲法解釈と矛盾しないのか、等々の検証をするのです。

そうすれば、改正すべき内容が見えてくるはずです。

もちろん、与党と野党では、改正の方向は異なるでしょうが、議論は深まるはずです。

 

そのような手続きを取ったなら、違憲審査について、第81条を話題にしないはずがありません。

70年間も、自衛隊法に違憲の疑いが持たれたままであり、かつ、自民党の改正草案には自衛隊(国防軍)を盛り込んでいる点からも、違憲審査の弱点を認識していることは明らかです。

それでも、改正草案には、第81条の改正が含まれていないことから、憲法の欠陥の改正ではなく、自民党の都合による改正であると、見えてきます。

 

 

憲法審査会は、まず変えたい条文があり、そこから審議を始めているように見えます。

 

最初から、変えたい条文があるから、その口実として、「時代にそぐわない」とか、「変えていかなければならない」とか、改正ありきのスタンスになるのでしょう。

実際、自民党の改正草案には、為政者の権利、国民の義務の拡大が見られます。

日本国憲法の欠陥ではなく、為政者に不都合な条項を改正したいと考えているようです。

 

 

 

 

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